「初代」ことウルトラマンが、地球から持ち帰った文化風習概念その他は色々あるが、
	その中でも光の国の人々に際立って感激され浸透したのは、おそらく「兄弟」という
	概念とカレーライスだと思われる。
	とかいうと、「その2つを同列に並べんのかよ」なんてツッコミが入りそうな気が
	しなくもないが、事実なのだから仕方ない。

	そんなわけで、まるで初めからそうであったかの様に、他の者とは一線を画して親しい
	「ウルトラ兄弟」の面々が、ことあるごとに「今日の夕食何にしようか」「カレー!」
	なんてやり取りを交わしている。なんてことは、珍しくない。
	そしてこの日も、いつの間にかおさんどん担当になっていた次男四男の献立を訊ねる問いに、
	下の3人+αが声を揃えてカレーを所望したのまでは良いが、

	「それじゃ、何カレーにする?」
	「僕は何でも良いです!」
	「俺シーフードカレーが良い」
	「えー。僕はビーフカレーが良いな」
	「ゴモラは、カツカレーが良いと言っている」
	「私は、具は何でも構わないけど、たまには辛口が良いなぁ」
	「それだと、レイが食えねぇだろ!」
	「レイと、お前と、メビウスもな。でも、お前らの口に合わせると、俺らには物足りないのも事実なんだよ」

	等々、皆が皆好き勝手な要望を挙げ始めた。

	「……鍋を2つに分けましょうか」
	「そうだね。甘口と辛口と、両方作ろうか。人数も多いし」
	「何カレーにするかは、じゃんけんか何かで決めてください」
	「カツとかエビフライは、オプションで付けても良いから」

	基本的に弟や子供達には甘い2人の提案に、珍しく自分達の意見も通った長男と三男も喜んだが、

	「その代わり、みんな手伝ってね」
	「任せとけ」
	「てか、たまには俺とブン兄とかで作っても良いんじゃね?」
	「あっ! そうですよね。じゃあ、辛口は兄さん達の担当ってことで」

	エースはパラレルワールドでコックしてたし、セブンも洋食屋さんやってるもんね。なんて
	メタ発言も飛び出たが、和気あいあいと7兄弟+子供達でカレーを作ることとなった。

					☆

	「レイとゴモラは、野菜の皮剥き終わったら、呼ぶまで遊んでて良いよ」
	「出来上がる頃になったら呼ぶから、食卓の片付けと運ぶの頼むな」
	「わかった」

	「メビウスも、お米研ぎ終わったらレイ達の子守お願い」
	「わかりました!」

	「えーと、ゼロは包丁使えるか?」
	「舐めんな」
	「んじゃ、レイの剥いた玉ねぎ薄切りにして、炒めるの任せた」
	「焦がさないように注意して、30分炒め続けろよ」

	タロウがじゃんけんに勝ってビーフカレーに決まった辛口鍋も、「ブタコマ残ってたから、
	これで良いか」な甘口鍋も、材料はまとめて切ることにしたが、ちびっこなレイと何か
	危なっかしいメビウスに刃物は危険。ということで、2人にはピーラーでの野菜の皮剥きや
	米研ぎを頼み、ゼロには、本人の言葉を信じ、単純だが面倒臭い作業を任せることにした。

	「は? え。30分??」
	「ああ。普段は面倒だからやらないけど、飴色玉ねぎ入れるとオイシイよね」
	「てことで、頑張ってね」

	もし万一疲れたら、エース代わってあげてね。と言われたが、きっちり30分炒め終えたゼロは、
	後の作業をセブン達に任せると、メビウスやレイと一緒に出来上がりを待つことにしたが、

	「……。何か、どっかでこんな感じのCM見たような気ぃすんだけど」
	「えっと、『母の日には家族みんなでカレーを作ろう』みたいなやつ?」
	「それだ!」
	「『それだ』じゃない! いい加減、私を君らのお母さんポジションに持ってくの止めてくれないかな、ゼロ」

	市販のルーにスパイスを足しながら味を見ているセブンとエースや、サラダ作りをしている
	ゾフィーに、ジャガイモの溶け具合の話などをしながら鍋を見ているマンとジャックを
	眺めていたゼロの呟きに、メビウスが思ったままを答えると、マン本人からはやめろと言われたが、
	他の兄弟達も、口には出さないが同感で、レイにも
	「マンがお母さんはダメなのか?」
	と首を傾げられてしまったら、それ以上はマンも強くは否定出来なかった。

	そんなこんなで完成したカレーは、甘口は食べる人数が少ない筈なのに、やけに大量にねぇか? 
	と思いつつゼロが食べ始めると、

	「何でオクラやカボチャが入ってんだよ!」
	「あ、これ魚肉ソーセージだ。ホウレン草も溶けていて、オイシイです兄さん!」
	「ああ。久しぶりに、残り物カレーなんだ。そっち」

	だってそろそろ食べきらないとまずい茹でたオクラとホウレン草が残っていて、カボチャも
	中途半端な量だったから。と答えるマンに、そういう所がお母さんなんだよなぁ。と思いつつ
	ゾフィーが相づちを打つと、

	「俺、やっぱそっちもちょっと食いてぇ」
	「僕もです!」

	と五男六男が食い付き、辛口を希望した2人も、
	「兄さんとセブンも居る?」
	との問いに「少しもらう」と答えていたので、だから量が多かったのか。とゼロは納得したのだった。




	オマケ
	メビ「コレは何ですか?」
	Z「ナンだよ」
	0「は? だから何なんだよ」
	T「だから、ナンだってば」
	M「……『ナン』っていう、パンの一種だよ」
	A「折角なんで、俺が焼いてみた」



5周年記念品 黄3「カレーづくり」 このお題を選んだ理由の1つな位、しっくり来すぎたので(笑)