ある日の昼休み。
ゼロが仲間達と昼食を摂っていると、隣のテーブルにやって来たガイアに、
「ねぇねぇ、ゼロ達。メビウスが、実は女の子だって知ってた?」
と問い掛けられた。
「マジかよ!?」
「あー、やっぱそうなのか」
「確かに、可愛らしい顔立ちをされていますものね」
『スキャンした訳ではないが、私達も気付かないとは……』
突拍子も無いし、妙に楽しそうに尋ねてきた態度は気になるが、アノ赤毛ツインテールの天然ちゃんな
末っ子の場合、アレで男というよりは、実は女子だと言われた方が元末っ子な筆頭教官の溺愛っぷりも
併せて納得がいく。
「それからねぇ、僕とティガもホントは女」
「ウソ!?……だな。少なくとも、お前に関してだけは、間違いなく」
「そうですね」
「まぁ、アンタらの場合女でも全然不思議ないけどな」
「えー。何で僕だけウソだと思うわけ?」
更に楽しそうに付け加えたガイアに、ゼロ達は一瞬そちらも納得しかけたが、
『アグルが鼻で笑っているからだ』
実は、若手にちょっかいを出す相方を─全体的に呆れた空気を醸しながら─放っていたが、アグルもガイアと
同じテーブルで昼食を摂っており、ガイアが自身を女だと話した時は特に「馬鹿馬鹿しい」という態度が顕著に
現れているように見えた。と根拠を述べると、ガイアは
「アグルってば、台無しにしないでよね」
とむくれた。しかし、すぐに気を取り直したように
「けど、僕はともかく、メビウスやティガが女の子ってのは信じるんだ」
と、問いを重ねてきた。
「まぁ、それでも違和感はあんま無ぇけど、お前もアイツらも人間態は男だよな」
企んでいる感が拭えないのと、素朴な疑問からゼロがそう問い返すと、
「人間態と本人の性別がイコールだったら、エースさんとかネクサスはどうなる訳? あと、僕もティガも
擬態じゃなくて同化だから別人だし、メビウスは姿借りたヒロトくんが男だっただけだよ」
畳みかけるようにへ理屈とも真理とも取れる返され方をされ、ひとまずガイアには口で勝とうとしても
無駄だと悟り引き下がった。すると、そのタイミングを見計らっていたかのように、
「ところで、マン兄さんもホントは姉さんだって知ってた?」
とタロウが話の輪に加わって来た。
「は!?」
「いやいやいや、それは無いだろ」
いきなりの参入と内容に目を丸くするゼロ達に、
「それがね、事実なんだ。近年は警備隊本部にも女性隊員は珍しくないけど、アイツが新人の当時は、銀十字や
精々科技局位にしか女性隊員は居なかったからね。特別扱いも色モノ扱いもされたくないし、舐められたくも
ないからって、男性隊員として入隊してきたんだ」
実しやかにそう付け加えたのが、仮にも警備隊の隊長であるゾフィーだった為、信じ難いが本当なのか……。
そう自分を納得させようとしたゼロの横で、ジャンが
『確かに、マンは他の男性隊員と比べ、背も低く細身ではあるな』
と呟いた瞬間、ほんの一瞬場の空気が凍りかけたが、
「マン兄……じゃなくて姉貴は、訓練校の出じゃなくて叩き上げなんで、男ってことにして通しててもわざわざ
疑うやつ居なかったし、ハヤタが男だったんでより一層疑われなくなったんでバレてないんだよな」
「ちなみに、ティガはマンさんとおんなじ理屈と、女子である所為で嫌な目に遭いまくって来たから隠してて、
僕はまぁバラしても良かったんだけど、連想でティガまでバレるとマズイかな。ってことで黙ってたんだ」
と、エースとガイアが少し話題を逸らした。
「女性として、嫌な目ですか」
「そうそう。セクハラとか差別とか犯罪とか、美人も大変なんだよ。ティガってただでさえ細いけど、実は
案外胸あるの隠す為に詰め物したり着込んでたりするから、ホントはもっと細身で、腰とか折れそうな位
華奢なんだよねぇ」
「……なぁ、ところで、マンがマジで女だとすると、まさか俺のお袋だったりしないよな」
ノリノリなガイア達に、だいぶ本気で信じかけて来たゼロが恐る恐る訊ねると、「それは無いから安心しろ」と
あっさり否定された。
「確かにセブン兄さんは最初っから知ってたみたいだけど、だからこそ絶対女子扱いされたくないのも解ってる
らしいし、親友として大事でそういうのを越えた家族だと捉えてるみたいだしねぇ」
「あと、姉貴の眼中にはハヤタしか居ないし(笑)」
そんな根拠を説明し、自分達もその説の説得力に納得して笑いあっているタロウ達に、ゼロ達もすっかり信じ
込みかけた矢先。
「それで、私は誰からしばけば良いのかな?」
「ひとまずガイアは、僕が〆ますので」
そんな、話題の当人達の声が聞こえ振り返ると、目が据わり必殺技の構えをとっているマンとティガが居り、
その後ろには
「マンさんもティガも落ち着けって! 一応許可出したの自分達だろ」
と必死でなだめようとするダイナや、
「俺らは止めたけど、連帯責任というかとばっちりが来るのか?」
「そうでしょうね」
などと諦めきった顔で囁き合っているセブンとジャックの姿があった。
「どういう、ことだ?」
「んー。要は、今話したのは多分ぜーんぶウソってこと」
状況についていけないゼロ達に、ガイアはあっさりとネタばらしをしたが、
「はぁ? 何で、んな嘘吐くんだよ。あと、『多分』て何だよ、『多分』て!」
そんな、当然の如きブーイングが起こった。
「地球の風習にね、『エイプリルフール』っていう、ウソついても良い日があるんだ。で、僕自身とマンさんは
ともかく、メビウスに関してはホントのこと知らないし、ティガも実は女の子だったらマジでオイシイから、
『多分』ってことで」
一向に悪びれず説明するガイアは、一応事前にこのウソに関して本人達に許可を取った上で、ウルトラ兄弟にも
話を持ちかけ決行したそうだが、調子に乗り過ぎたらしい。そして、
「あと、何で君達もそんなにあっさりと信じる訳? どう考えても有り得ないでしょう」
「そうだよ。特に私なんて、兄さんの証言はもっともらしく聞こえたかもしれないけど、どこからどう見ても
女性なわけがないだろう」
ゼロ達の反応も業腹だったようだが、ぶっちゃけガイア達のウソの信憑性が、かなり高いように見えたんだから
仕方ない。とは、誰も―珍しくグレンファイヤーですら―内心で思ったが口には出さなかった。
そんな出来事があってから、しばらくの間。この騒動が断片的に拡がり、「W初代は実は女らしい」という
噂で宇宙警備隊中は持ちきりになり、真相を確かめに来た隊員他の誤解を解くことと、本人達を宥めるのが
大変だったことから、「もう二度とこの手のウソを吐くのはやめよう」と、タロウ達は反省したが、ガイアは
ティガに散々キレられ、ティガの分の仕事も代わりに回されて忙殺されようと、
「アリだと思うんだけどなぁ」
と往生際悪く言い続けていたとかいないとか。
4/1中に間に合わなかったけども、趣味全開のエイプリルフール話でした☆
どうもうちのガイアは、調子に乗り過ぎる傾向にあるようで……
2012.4.2
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