木下家には、高1〜3歳児までの6人の息子がいる。しかし母親の顔を辛うじて覚えているのは、
長男八左ヱ門(高1)と次男孫兵(中2)の2人だけである。
といっても、彼らは母親が違い、尚且つ孫兵は連れ子なので血が繋がっていない。そのことを正確に
理解しているのも、この2人だけだったりする。
木下家の家長である父鉄丸が、最初の妻を事故で亡くしたのは、八左ヱ門が小学校に上がった年の
ことだった。そしてその約1年後。1人の女性が木下家を訪れ、留守番をしていた八左ヱ門と、
遊びに来ていた友達の土井兵助に
「君らのどっちが、鉄さんの息子? どっちでも良いけど、この子預かって」
と生後間もない赤ん坊を託していった。そして、鉄丸が帰宅するまで、ひとまず兵助の母が子守をして
くれたが、その際に赤ん坊と一緒に渡された荷物の中から
「あなたの子です Miharu.Y」
と書かれた紙が見つかり、帰宅した鉄丸に質した所、少なくとも書かれていた女性の名前に関しては、
心当たりがあるようだった。
その後その女性が赤ん坊を迎えに来ることは無く、赤ん坊は木下家で引き取られることとなった。
その赤ん坊が三男三治郎で、その更に1年後に再婚した相手が、籍を入れた時点で既に四男一平を
妊娠していた、孫兵の母親だった。
しかしその2人目の妻とは、一平が1歳になる前に離婚し、次に再婚した相手の連れ子が、一平と
同い年の五男虎若で、3人目の妻は、末っ子の孫次郎を産んですぐに亡くなってしまっている。
その全ての母親と、弟達の関係を把握しているのは、八左ヱ門―と、兵助とその兄半助―だけで、
八左ヱ門の母親意外は覚えていて解っているのは孫兵だけだが、正直な所2人共、
「血縁関係があろうと無かろうと、今は兄弟。それで別に良いじゃないか」
と思っているらしい。
中在家兄妹の妊娠事情を書いた頃に、書いてはみたもののお倉入りしていた代物。
お倉入りした理由は、読んでの通りに色々やり過ぎた感があるからです。
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