食満家
「仙蔵。今度の土曜日に、買い物に付き合ってもらいたいんだけど良いかな?」
「もちろんだとも。何を買うんだ? 軍資金が足らんようなら、出してやるぞ」
「ううん。それは平気。……父の日のプレゼント選びを手伝ってほしいんだ」
「そうか。構わんが、何故私なんだ」
「えっと、留さんと一番背格好も趣味も近いかな、って思って」
「ふむ。しかし、背格好はともかくとして、趣味嗜好はさほど似ていないと思うが?」
「そうなんだけど、長次はしばらく居ないし、他の2人は論外だから……」
「アイツらと比べるな。……長次は、旅行にでも出掛けているかの?」
「うん。挿絵画家さんと一緒に、取材旅行と原作者さんとの対談することになったんだって」
@食満千幸ちゃん(13)と立花仙蔵様(30)
平野家
「金吾、これあげる」
「どうも……似顔絵?」
「今の担任、時代錯誤で暑苦しいって話、前にしたでしょ」
「ええ、まぁ。でも何で……って、ああ、そうか」
「そう『もうじき父の日だから』で描かされた」
「ご苦労様です。けど、担任なんだから、姉さんが一人親だって知ってますよね」
「うん。だから描かなくて良いでしょ。って言ったのに、『それじゃお世話になった人を描こう!』だって」
「それで、俺を選んでくれたんですか。ありがとうございます(照)」
「別に。……誰かって訊かれたんで、『うちに転がり込んでるシスコンな叔父』って言っといたから」
「……。良いですけどね、事実だし」
@綾ちゃん(7)と金吾叔父さん(19)
伊賀崎家
「伊賀崎ー。そこに貼ってあんの何だ?」
「ああ。娘が父の日に描いてくれた、僕の似顔絵です」
「え。お前、子供居たのか?」
「今3歳半でしたっけ? 僕会ったことありますけど、先輩そっくりの美少女ですよねぇ」
「ふぅん。……にしても、子供の絵ってのはこんなもんかもしれないけど、似顔絵には見えねぇな。
すげぇ色使い」
「それはそうでしょうね。僕の顔はコレで、一番大きく描かれているのは、娘の一番のお気に入りの
カエルだと、妻が解説してくれました。南米原産の種なので、色鮮やかなんです」
「そうか。……てことは、まさかこのヒモみたいのも」
「うちの飼い蛇のじゅんこですね」
「……。ホントお前似な娘なんだな。あと、蛇だのカエルだの飼ってて、嫁さん嫌がらないのか?
それとも、類友なのか?」
「どちらでもありません。娘が生まれる前に、万が一触れたら危ないからと、毒を持っている子を
少し減らすよう言われたり、最近はエサ代や維持費が嵩むので増やさないように。とは言われて
いますが、基本的には好きでも苦手でもなく『好きにしろ』と」
「……出来た嫁さんだな」
「しまり屋のクールな美人さんなんですよね、伊賀崎先輩の奥さんって。そういえば、娘さんの3歳の
お誕生日にぬいぐるみをおねだりされて、『小学校に上がるまで誕生日もクリスマスもプレゼント
無しで良いなら買ってあげる』って答えたって噂は本当ですか?」
「ああ。欲しがったのが、10mのニシキヘビのぬいぐるみだったから」
「あー、そのサイズだと、かなり高価いですしねぇ」
「そこかよっ。気味悪いからとかじゃないのか?」
「高価い上に、場所を取るからだったようですよ」
@孫兵パパ(33)とモブ同僚&後輩の初島くん
タソガレドキ
『もしもし、尊くん?』
「……何の用すか」
『もうじき父の日だよね。今年はネクタイにしてみたんだけど、喜んでもらえるかなぁ』
「さぁ? 何貰っても、それなりに律儀に使いはしてますし。……毎度こっちの親父にまで
アリガトウゴザイマス(棒読み)」
『ううん。僕、お義父さん好きだし』
「さいですか」
『尊くんは、何プレゼントするの?』
「何も」
『そっかぁ。そうだと思って、プレゼントに添えるメッセージカード、連名にしておいたから』
「余計なことすんなっ。俺はアノ親父が嫌いだって、再三言ってんだろうが!」
『えー、でも、自分からお父さんと暮らすの選んだし、お義父さんのこと、阿吽の呼吸並によく
解ってるよねぇ、尊くん』
「それは、事情があって……」
『あんな秘密いっぱいありそうなミステリアスなお義父さんのことよく知ってて良いなぁ。毎日が、
スリルとサスペンスな感じで楽しくない?』
「いえ全く」
@諸星尊少年(17)と伏木真鶴義兄さん(23)
元拍手御礼
10打目にこっそり置いてあったみこっちゃんvs鶴兄さんが浮かんだので
他も書いてみたけれど、父子揃っているのが1つもないという……
2012.6.17
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