その日、6年い組の潮江文次郎はついていた。

	まず、前日までに死に物狂いで計算その他諸々をした甲斐があり、―数日後に阿鼻叫喚の予算会議が控えて
	いるとはいえ―ひとまず決算が終了したので、とりあえず今日は委員会を休みにすると決めたので、団蔵の
	悪筆にも、何かと小競り合いを繰り返す三木ヱ門と左門のケンカにも悩まされることがなく、放課後は自主
	鍛錬に専念出来ることが判っていた。

	次いで、教科の抜き打ちテストで満点を取り、実技でも仙蔵に勝てた上に、八つ当たりもされなかった。
	更には、昼休みに食堂のおばちゃんのゴミ捨てを手伝ったら、夕食時に小鉢をオマケしてもらえ、自主練中も
	ろ組の2人と合同の夜練中も何の騒動にも巻き込まれず、留三郎とはいつも通りに小競り合いにはなったが、
	お互い医務室に行くほどの怪我を作る程の大喧嘩にはならなかった。
	おまけに、鍛錬中に怪我をして医務室に出頭した際、手当てをしてくれた伊作は

	「もう。程々にしときなよ」

	程度の苦言しか言わず、長々と説教はされなかった。



	そんな、何事もない平和な日は滅多にあるものではない。故に文次郎は、細やかに幸せだった。
	しかしそれは、嵐の前の静けさに過ぎなかったりする。




	……かもしれない。







ハニカに「何か書こうか?」と言ったら 「たまには幸せな潮江さんが読んでみたい」 と返ってきたんで、バイトの休憩中に約30分で書いたブツ。 突貫ですが、マトモに文次郎を書く気力が湧かなかったもんで…… 2010.1.22