僕の一番古い記憶は、雨の中の『太陽』の姿。
うずくまる僕を覗き込んだ大きくて丸い目と、
目が合うとニッと笑いかけてくれた笑顔。
それから軽々と抱き上げてくれた、力強い腕。

あの日から、若は僕にとっての『太陽』そのもの。


次に覚えているのは、『お月様』の子守唄。
ずっと抱きしめたまま、優しく語り掛け、「嫌なもの」や
「怖いもの」総てから遠ざけようとしてくれた滝さんは、
邪気を祓う、綺麗なお月様。


それから、おじさん達や兄ちゃん達は『お星様』。
そう言ったら、「まるで死んだみたいだな」って
金吾兄ちゃんには苦笑されてしまったけど。


滝さん以外も、組中―もしかしたら町中かも
しれない―の人達が、僕に汚い所や怖いものを
見せないようにしてくれていたのは、解っている。

でも、覚醒剤だけは厳しく禁止していても、
七松組がちゃんと(?)他の「ヤクザ」な
ことをしている。ってことも、知っている。


だからこそ、拾った僕をそのまま
「七松」の子にしなかった。のだと
知ったのは、中学校に上がる少し前。

どんな手を使ったのかまではわからないけど、
書類上は僕も滝さんも、七松組とは無関係。
ということになっていた。

若とでもお祖父ちゃんとでも、養子縁組を
して「息子」ということになったら、いつか
組と関わらなきゃいけなくなる。だから、
何も解らない内にではなく、自分の意思で
選ばせたかった。と言っていた。


2年前の、15歳の誕生日に、
「どうする?」
若からと訊かれた。

その日から、僕は「若の息子」になった。

今はまだ、色んなことから遠ざけられて
いるけど、覚悟はキチンと出来ている。


たとえ世間に胸は張れなくても、
僕の『光』は、闇にも負けぬ
強くて眩しい憧れのまま。

今もそう思えているから、
僕はここにいる。




「四郎兵衛視点の七松組」とは少し違うかもしれませんが、
七松家と四郎兵衛の関係説明も兼ねて、こんなのもいかがでしょう?

なお、滝夜叉丸は書類上「七松家の家政夫」です(笑)

2008.8.21