忍術学園の保健委員会が不運委員会と認識されるようになったのは、10数年前の某生徒がきっかけで、その
	生徒以降、何故か妙に運が悪い生徒ばかりが集まるようになり、とりわけ運の無い「不運小僧」も、現在では
	四代目を数える。その中でも特に運に見放されていたのは初代と二代目で、1年当初からそう認識されていた
	のは、この2人しかいないと言われている。

	しかし今年入学してきた2人の生徒を目にした数人の教職員は、
	「絶対こいつらのどっちかが保健委員で、五代目だな」
	と確信した。

	その生徒達の名は、樹衣森蔵と平生人吉という。


	2人は、入学初日というか手続きの直後に、揃って在校生が埋め戻し忘れてた穴に落ち、翌日もその次の日も、
	穴には落ちる。罠には引っ掛かる。無関係なケンカには巻き込まれる。と、見事な不運を発揮しまくった。
	そんな2人の、どちらが保健委員になるかの賭けを、他の卒業生な教職員達―校医の川西左近と事務員の
	今福彦四郎―に持ち掛けたのは、二代目不運委員長猪名寺乱太郎の同期で、初代の善法寺伊作も知る、教科
	担当の笹山兵太夫だった。
	そして更に、その話を聞き付けた、兵太夫の同期の友人だった黒木庄左ヱ門の実弟の庄二郎とその友人の
	九里十三。人吉の姉の葵とその同期の万鬼桜丸、九原菊之助、五百蔵景清、六東俊徳丸、二合半又平、百舌鳥
	公平と、兵太夫の先輩であり伊作の友人だった立花仙蔵の息子の泉なども、賭けに乗ってきた。


	そんなわけで、総勢13人で行われた賭けの、内訳と理由は以下の通りになる。

	まず、森蔵に賭けたのは、庄二郎、兵太夫、泉、彦四郎、葵、桜丸、公平、菊之助の計8人。
	人吉側は、左近、十三、景清、俊徳丸、又平の5人で、やや人吉に賭ける者の方が少なめではあった。

	けれども、

	「基本的に、樹衣が先に穴に落ちたり罠に引っ掛かったりしてて、平生はそれに巻き込まれてるだけだろ」

	という正統派な理由で森蔵を選んだのは、彦四郎と公平位で、「ん〜、何となくですかね」の庄二郎を除く
	残りの面子は、

	「本人が不運というよりは、巻き込まれ不運の方な気がする」
	「俺もそう思います〜」

	だの

	「姉の葵ちゃんも、あんな運ないのに保健やないんやから」

	だの

	「何と言うか、『不運小僧にすらなれない位、影が薄くて不運』という感じがします」

	だの

	「ウチの弟ナメんな」

	だのという理由から、消去法で森蔵に賭けたようだった。



	対する人吉側の理由は、「じゃあ、庄二郎の逆で」の十三以外は

	「葵さんの場合は、運もですが注意力が足りないようにも感じられますので、樹衣くんもそういった類で、
	 巻き込まれる弟くんこそが不運なのだと思います」
	「あそこまで毎回見事に巻き込まれるのは、不運以外の何物でもないでしょ」

	という、何となく正論っぽいものと、

	「確かに食満先輩とか富松先輩みたいな、巻き込まれ型の人も居ましたけど、僕は自分自身が不運という
	 よりは、巻き込まれる方でしたから」
	「同類の匂いがするんだよね」

	などと、元保健委員かつ現校医の左近と現役保健委員の又平が言うのにはかなりの説得力があった。



	結果的に、保健委員となり予想通り「五代目不運小僧」と呼ばれるようになったのは森蔵で、

	「……鶴町の同類だったか」

	という左近の呟きが、何となく全てを物語っていたという。




最早いつ書いたか忘れた木綿リク 更新用の餌だったか、お使いのお駄賃だったか。それすら忘れました