※中の子繋がりで、「ベリ銀のナオくんの成長後が海賊戦隊の船長だったら」というif話です 捏造・キャラ崩壊等激しいのでご注意ください
地球を離れ、ザンギャック本星に殴り込みを掛けに行く直前。 「ザンギャック本星に向かう前に、ガレオンをオーバーホールしたいんだけど」 と、ハカセが提案した。 「一応、定期的にメンテナンスはしてるし、壊れた所は逐一直してはいるけど、いい加減あちこちガタが出始めても  おかしくないから、この機会に、何か起こる前に一度キチンと整備しておいた方が良いと思うんだよね」 少なくとも、僕が仲間になって以降、一度も総点検してないでしょ? とのハカセの指摘に、ジョーとルカも自分達の知る限りでも整備に出したことは無い筈だと証言した。 「それは確かにドンさんの言う通り、何かある前にいっぺん車検みたいのに出した方が良さそうっすねぇ」 「そうですわね。何かあってからでは遅いですし」 「流石に、赤き海賊団時代から整備してない。なんてことはないわよね?」 「いくらなんでも、それは無いだろう。むしろ、アカレッドなら懇意にしていた整備工か何かが、複数居ても  不思議は無いんじゃないか」 「うん。居たよー。居たけど、どこの星だったか、オイラ忘れちゃった」 「信用が置けて腕の立つ整備工とか居るなら、その人の所に持ち込めば話は早いよね。マーべラスは、  その整備工がどこの星の人か覚えてる?」 等々、全員一致で「整備すべきだ」と言ってくる仲間達に、マーべラスは面倒臭そうに 「オーバーホールに出すのは構わねぇが、アカレッドと付き合いのあった整備屋が、どこの星の奴だったかは覚えてねぇ」 と答えてから、ボソリと付け加えた。 「……腕の立つ整備士なら、1人知ってっけどな。ただし、ザンギャック本星に向かうには遠回りになるし、俺らの  依頼を請けるかどうかの保証は出来ねぇけどな」 「請けてもらえないかもしんない。って、どういう意味っすか、マーべラスさん? 頑固で気難しい、職人肌の爺ちゃんとか??」 「……海賊になる前の、知り合いか?」 「そうだとしますと、確かに請けていただけない可能性はありますわね」 「知り合いじゃなくても、『海賊』ってだけで引くよね」 「ああ。最初のハカセみたいに」 海賊になって日の浅い鎧の的外れなコメント以外の推測に、マーべラスは「まぁそんなとこだ」と返したが、 他に当ても伝手も無いので、ひとまずその整備士を頼ることに決めた。 目的の人物の住む星―惑星アヌー―は、かなりの辺境にあり、近隣星域を航行中なのならともかくわざわざ寄るには 若干遠過ぎ、元同業者のハカセが噂を聞いたことがないのはともかく、ナビィもその星のことを知らなかった。 そのため、何故マーべラスがその整備士のことを知っていたのか。との疑問が皆の頭に浮かんだが、いくら問い詰めても マーべラスは理由を明かさなかった。 そんなこんなで辿り着いた惑星アヌーは、小さく雑多な印象は受けるが、活気にあふれた下町的雰囲気の星で、 街から少し離れた場所に経つ、簡素な作りの作業場の近くの空き地にガレオンを着陸させると、マーべラスは 躊躇なく作業場に入って行ったので、やはり元々知り合いだったのかと他の5人は思ったが、お決まりの 「邪魔するぜ」の後に「船の整備を頼みたい」と言い放ったマーべラスへの、相手―ラン―の第一声は 「何者だ、アンタ。名乗りもせずに用件だけとは、随分だな」 というもので、「知り合いじゃなかったの!?」「初対面でアノ態度って、人に物を頼む姿勢じゃないわよね」等々、 仲間達にも大いに面食らわれたが、結果としては 「まぁ、良い。これだけでかくて複雑そうな船だと、数日は掛かるが、それで構わないか?」 と、割合あっさり依頼は請けてくれた。 「ああ。構わねぇよ。……お前らも、良いな!」 「出来るだけ隅々まで徹底的にお願いしたいから、時間が掛かるのは仕方ないよ」 「そうね。手抜きや中途半端なことされても迷惑だし」 「マーべラスさんとハカセさんがそう仰るのでしたら、わたくしはそれに従います」 「俺も、異論は無い」 「そっすね。よろしくお願いします!」 ということで、点検及び整備が終わるまでの数日間、一行はアヌーに逗留することになり、1人で整備屋をやっている ランの手伝いにハカセが貸し出された以外は、食料品や消耗品などの買い出しを済ませたら自由行動。ということになった。 しかし、買い出しに行った市場の感じでは、特に見て面白そうな店も、娯楽施設も無さそうだ。と不満げに戻ってきた ルカに、 「あんま量は採れねぇけど、エメラル鉱石の採掘場があるから、見に行ってみたらどうだ。加工品も売ってた筈だぜ」 と教えたのは、現地人であるランでは無く、何故かマーべラスだった。 「えっと、『エメラル鉱石』って何すか?」 「高エネルギー資源で、発光もする、変わった宝石みたいな石よ。あたしも、噂でしか知らなくて、実物は見たこと無いけど」 「わたくしは、加工品はいくつか目にしたことがありますが、原石は見たことがありませんわね」 「俺は、名前すら初めて聞いたな」 「僕は燃料として売っている原石を見たことあるけど、僕が生まれ育った辺りでは、物凄く貴重で高価かった筈」 地球以外の星についてはさっぱりな鎧の質問に答えながら、皆の頭をよぎったのは 「何でマーべラスは、そんな情報を知ってたんだ?」 との疑問で、同時に 「もしかしてこの星が、マーべラスの故郷だったりして」 という推測も浮かんだが、何となく誰もそれをマーべラス本人に質すことはしなかった。 その推測が正解であることが、密かに証明されたのは、ガレオンの整備が始まって少し経った頃。 「あちぃしめんどくせぇ」 と言って、他の4人のように出掛けるでも、ランとハカセを手伝うでもなく、作業場の隅でただただガレオンの 修理を眺めていたマーべラスに向かい、ランが「ナオ!」と声を掛けた。 それは、マーべラスが10年近く前に、この星を飛びだした際に捨てた名で、変わり果て、他人を装った自分に、それでも 気付いてくれたのか。そう思ったマーべラスが、おずおずと「兄貴?」と返そうとすると、背後で「ごめんなしゃい〜」 という、幼児の声が聞こえた。 「こら、ナオ。危ないから、ドッグには入っちゃダメだ。って、言ってあるだろ」 「うぅ〜」 「ヒロ、ミナ! ナオがまた覗きに来てるから、連れてって、こっち来させないようにしてくれ」 マーべラスの横を素通りしたランが抱え上げたのは、入口付近で作業場を覗き込もうとしていた3歳前後の幼児で、 ランに呼ばれてやって来て、その幼児―ナオ―を連れて行ったのは、10歳に満たない程度の男女の子供達だった。 「……今のは、アンタのガキか」 「ああ。どうにも好奇心が旺盛過ぎて、ダメだって言ってるのに、隙あらば作業を覗きに来るんだ」 苦笑するランは、「父親」の顔をしており、考えてみれば10歳近く年上のこの兄は、もう三十路も半ば近いのだから、 嫁を娶り子供の2〜3人居た所で、何らおかしくないのだと、マーべラスは今更ながらに気が付いた。 「さっき覗いてたのは、一番下のナオで、出てった弟の名前を貰ったんだが、あの位の頃の弟は、もう少し聞き分けが  良かったな」 「てことは、もう少し大きくなった弟さんは……」 「いや、別にグレはしなかったんだが、口うるさいしっかり者に育って、正直俺よりもしっかりしてるんじゃないか。  と感じたこともあったな。もう随分と前に家出して、それから一度も戻って来ていないが、あいつならどこでも  上手くやってけてると思う」 「そうなんですか」 子供達が去った後。作業中の雑談として家族について訊ねたハカセへのランの答えに、マーべラスは顔には出さずに ちょっと耳が痛くなってきた。 「死んだばあちゃんが言うには、俺は父さん似で弟は母さん似なんだと。母さんも、おおらかに見えて結構  過激だったらしいからなぁ」 夫婦げんかでバズーカぶっ放したことがあるらしい。とのランの証言に、自分の記憶の中の母ミナはそんな人じゃ 無かったような……ああ、けど、ばあちゃん並に強かったかも。などとマーべラスがつらつら考えている間も、 ランは作業の手は止めずに家族の話を続けていた。 「どうもうちは、女の方がしっかりしてて強い家系みたいでな。ばあちゃんが最強で、母さんも強くて、俺の嫁さんも  気が強い行商人の娘だし、娘のミナも上のヒロよりしっかりしてるんだ」 「どこも、女の人の方が強いのかもしれないですね。うちの乗組員の女子2人も、それぞれタイプは違うけど、僕ら  男なんかよりもよっぽど強くて」 苦笑するハカセのコメントは聞き流し、「上のガキに、親父とお袋の名前付けたのかよ、兄貴」とマーべラスが呆れていると 「一番下のナオくんは家出した弟さんの名前ってことは、上の2人も誰か大事な人の名前なんですか?」 と、ハカセが訊いた。 「ああ。俺達兄弟が、まだガキの頃に死んだ両親の名前なんだ。……ばあちゃんには、散々『馬鹿かお前は』って  言われたけど、嫁さんは『それで気が済むなら良いんじゃないの』って反対しなかったから」 少し淋しげに笑いながら説明するランに、「ナオ」は「ヒロ」や「ミナ」と同じように、死人の名前扱いなんだな。と、 マーべラスは少しだけ胸が痛んだが、それが故郷も名前も捨てた自分への罰なのだと、その痛みを享受することにした。 けれど、整備も点検も全て終え、旅立つ前夜。仲間達の目を盗んで、こっそりと両親の墓参りに行こうとした マーべラスに、いつから居たのか、自宅に戻っていた筈のランが、 「ばあちゃんの墓は、父さん達の墓の隣だ」 と声を掛けた。 「!」 「ばあちゃんが病気で死んだのは、俺の息子のナオが生まれた半年位後で、最期まで『ナオのやつは元気で  やってんのか』って心配してたぞ」 「あに、き……」 面食らうマーべラスに、ランはニッと笑った。 「どれだけふてぶてしく育ったとはいえ、弟の顔も分からないほど、薄情な兄貴じゃないつもりだぜ」 「だったら、何で――」 「お前この星が故郷だって、仲間に話して無いだろ。だとしたら、俺から勝手にバラさない方が良いかと思ったんだが、  言っても構わなかったのか?」 「いや。黙っててくれて助かった」 何年経っても―きっと一生―この兄貴には、敵わないんだろうな。そう痛感しながらも、精一杯ふてぶてしい笑顔を作り、 「……また来る。そんで、そん時には、ここが俺の故郷で、アンタが俺の兄貴だって、他の連中にも話す。だから、  チビガキ共に、『お前らの叔父貴は、炎の海賊よりもすげぇ海賊なんだ』って教えとけよ」 そう宣言すると、ランは「大きく出たな」と笑ったが、実際ゴーカイジャーの方が炎の海賊よりすげぇぜ。と、ランに 後日教えてくれたのは、何故か現在のナオことマーべラスの近況をバッチリ把握してるグレンファイヤーだった(笑)
エメラナちゃんとの続き物に、ラン兄貴との再会ネタを入れ忘れていたので単独で 兄弟+ハカセ以外の出番を殆ど作れなかったのが残念だけど、今はコレが精一杯…… 2014.8.3
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