ある日。忍術学園の一年生全員に、同じ課題が課された。
それは、
”くじで引き当てた先輩に、丸1日ついてまわりその生徒の意外な一面を探し出し、報告書にまとめて
提出すること”
というもので、一年生は先輩の邪魔にならないように観察し、先輩は授業も委員会も鍛錬も普段通りで
構わないが、一年生について来られないような事は極力しないこと。
との条件で、学園長の突然の思い付きではなく正規の課題な為、先輩生徒達もかつて己の先輩達について
まわった経験があり、3年生以上はついてまわられた経験もあるものらしかった。
#○#○
先輩観察報告
一年は組 笹山兵太夫
対象:綾部喜八郎先輩
ぼくの担当は、作法委員会の先輩なので、ふだんから関わり合いの多い、綾部先輩でした。
先輩の一日
朝:朝っぱらから寝間着姿のままタコ壺(たこ夜叉丸13号だそうです)を掘っていて、朝食を食べに誘いに
来た滝夜叉丸先輩にこっぴどく叱られた後、井戸に連れて行かれました。着替えて朝食を食べている時、
タカ丸さんのお茶を勝手に飲んでいましたが、タカ丸さんは気にしていませんでした。
授業が始まってからは、それなりに真面目に授業を受けているように見えました。
昼:滝夜叉丸先輩の定食から、好きなおかずを勝手に取って、代わりに嫌いなものを押し付けたので、文句を
言われたけど、気にしていませんでした。
食後は、会計室前に狼穽を掘っていました。
夕方:午後の授業は実技で、滝夜叉丸先輩の自慢話をどうでも良さそうに流していましたが、こっそり
「ウザいけど、とりあえずぼくより上手いのは本当だから、見といて損は無いよ」
と僕に言ってきたので、ついでに見てたら、確かにちょっとすごかったです。
夜:夕飯は、田村先輩のお皿からおかずを取っていました。
寝る前に、またタコ壺を掘りに行こうとしていましたが、滝夜叉丸先輩に「予復習をしろ!」と
連れ戻されていました。
観察結果
同じ4年生相手だと、いつもよりちょっと子供っぽい事をしていて、あと、滝夜叉丸先輩のことが意外と
好きなんだな。と思いました。
#○
先輩観察
1‐は きり丸
おれの引いた先ぱいは、6年の食満留三郎先ぱいだったんで、朝一の新聞と牛乳の配達のあと部屋に行ったら、
自主練に出てていませんでした。けど、俺らが来るのはわかってるから学園の外には出てないはずだって、
同室の善法寺先ぱいに教えてもらったんで、探したらグラウンドで走り込みしてました。
飯は、朝も昼も他の6年生と一緒に食べてて、ケンカも特にしてませんでした。
しかも、どうも実習や委員会の当番とか用事がないかぎり、なるべく一緒に食べるようにしてるんだそうです。
授業は、実技は見ててすごかったですけど、教科はちんぷんかんぷんでした。
夕飯は最初バラバラだったけど、先に食べてた6年い組の2人を見つけて、同じ机に行き、食べてる途中で他の
先輩達も合流してきた。って感じだったので、「意外と仲良いんすね」と聞いてみたら、
「卒業が近いからな」
って、食満先ぱいだけでなく、他の先ぱい達からも返ってきました。
あと、授業と夕飯の合間の委員会の時は、しんべヱ達がいない代わりに、おれに修理の仕方を教えてくれて、
「筋が良いな」
ってほめられました。それから、富松先ぱいと一緒に、委員会の時間中に造花作りも手伝ってくれて、すごく
うまくて早かったんで、めちゃくちゃ助かりました。
寝る前の自主練は、今日はおれがいるから行かないことにしたとかで、代わりにバイトにいかせそうなことを
色々教えてくれた上、「また遊びに来いよ」と言ってくれました。
まとめ
食満先ぱいと潮江先ぱいは、顔を合わせるとかならずケンカしてるわけではないみたいです。
それから、先ぱいたちの仲が良いのはまちがってないだろうし、面倒見が良いのも元々だと思うけど、
卒業した後の別れが見えているから、なるべく食事くらいは一緒にとったり、後輩に自分の技術や
知識を受け継がせようとしてるのかもな。と思いました。
#○
観察報告
一年ろ組 下坂部平太
僕の担当は、3年ろ組の神崎左門先輩で、同じ3年ろ組の先輩が担当なのが喜三太と伏木蔵なので、一緒に
お部屋に向かっていたら、富松先輩の怒鳴り声が聞こえました。
どうも、ぼく達が来るのが分かっているのにどこかへ行こうとしたので、それを注意していたそうです。
あさごはんの時もお昼も、富松先輩に言われて迷子を予防するために、ぼく達と手をつないでいきましたが、
普段は富松先輩や他の先輩達が捕まえていくか、食堂にたどりつけなくて食いっぱぐれて、食堂のおばちゃんに
おにぎりを作ってもらったりしているそうです。
授業は、目を開けたまま居眠りをしていたり、順番待ちの時に次屋先輩なんかとおしゃべりをしていて、
先生に怒られたりしていたのは、先輩でもぼくらとあんまり変わらないんだな。と思いました。
委員会の時は、計算を間違えたり字がちょっと汚くて読めなくてしかられたりもしていましたが、
10キロそろばんは、そんなに難なく使えるみたいでした。
夜は、他の先輩達と遊んだり、富松先輩に怒られながら、明日の準備はしていましたが、復習はして
いませんでした。
感想
3年生だと、まだまだぼくらみたいな子供っぽい所があるみたいです。
#○
先輩と1日を共にして
1年い組 上ノ島一平
僕の担当は、2年生の川西左近先輩だったので、せっかくならもっと上級生がいいな、と思いました。
だけど、授業がそんなに僕らの習っている内容とかけ離れていなかったので、逆に良い予習になったと
思えなくもなかったし、自分のお部屋で予復習をしている時に、今日の2年生の授業内容や、普段から
ちょっと気になったことについて、ためしに聞いてみたら、説明してくれてけっこう分かり易かったです。
それから、川西先輩は手当てがとても上手で、お説教をしながら手早く薬を塗ったり、包帯が巻けるみたいでした。
結論
2年生でも、やっぱり先輩なので、ぼく達より全然すごかったです。
#○
せんぱいかんさつ
1は 加藤団蔵
おれのたんとうは不破雷蔵せんぱいなんで、部屋にいったら、鉢屋三郎先輩が不破先輩のふりをして
だまそうとしてきました。
だけど、とおりすがりの他の5年生のせんぱいたちに
「何やってんだ三郎」
といわれてバレて、かわやから帰ってきたほんものの不破せんぱいにも、おこられてました。
あさめしもひるめしも、さんざんなやむんだろうなと思っていたら、鉢屋せんぱいとかが勝手に決めたやつを、
もんくを言わずにたべてました。
教科でさされた時は、色んな答えをしってるから、逆にどれを答えるべきかなやんでたけど、実技の組手の時は
ムダのない動きで、他の先輩よりも強かったけど、鉢屋せんぱいにはかなわないみたいでした。
図書委員の当番のてつだいをしながら、
「おれでもわかる、じゅぎょうに役に立ちそうな本ありますか」
ときいてみたら、すごくなやんで貸出しの人が来てるのに気付かなくて、委員長の中在家せんぱいに注意
された上、けっきょく
「おすすめはいくつもあるけど、多すぎて決められないや」
と言われたけど、代わりに中在家せんぱいと2年の能勢せんぱいが、おすすめや習字の本をえらんで
くれたんで、それをかりました。
夜は、予習と復習と自主錬のどれをやるかなやんでいる内に、だいぶおそい時間になったんで、何もしないで
ねることになりました。
まとめ
なやみぐせがあって大ざっぱだけど、それでも何とかなる実力はあるみたいでした。
#○#○
先輩観察
1年は組 猪名寺乱太郎
私が今日ごいっしょさせてもらったのは、6年ろ組の、七松小平太先輩でした。
七松先ぱいは、いつも夜や朝にも裏裏山などにたんれん(走り込み?)に行っていると
金吾からきいていたので、いらっしゃらなかったらどうしようと思いましたが、同じ
部屋の中在家長次先ぱいがひきとめていてくださったので、ちゃんとお部屋にいました。
でも、朝ご飯を食べに行く前に、
「やっぱりからだ動かしてないとおちつかない」
といって、私をかかえてひとっ走りしにいきました。
こわきにかかえられて道なき道をすごい速さで走られるのはこわかったですが、多分金吾には
慣れっこの光景なんだろうな。と思いました。
朝ごはんもお昼も他の6年生の先ぱい方と一緒で、すごいはやさでかきこむように食べるのに
あっけにとられていたら、
「いらないんならもらうぞ」
と、楽しみにとっておいたおかずを食べられそうになってしまいましたが、他の先ぱい達が
とめてくださったので、無事たべられました。
授業は、実技だけでなく教科でも、ちゃんと出来ていたのにおどろきました。
委員会は、滝夜叉丸先ぱいのどなり声というか叫び声と、どんどん遠ざかっていく七松先ぱいの
背中しか覚えていませんが、どうも途中で木の根っこか何かにつまづいて転んで、頭を打って
気を失い、それからずっと七松先ぱいは私をせおったまま委員会を続けていたそうです。
なので、今でもたんこぶが出来ていてちょっと頭が痛いですが、心配した伊作先ぱい達が
止めて下さったのか、夜のたんれんにはいかないで、お部屋で中在家先輩担当の虎若と
一緒に、色んなお話を聞かせてもらいえました。
まとめ
だいたい金吾達から聞いていたとおりでしたが、やっぱり6年生だけあって、
意外と教科などの勉強とかもできるみたいでした。
#○
先ぱい観察報告
1年ろ組 初島孫次郎
ぼくが引いた先ぱいは、5年い組の尾浜勘右衛門先ぱいでした。
上級生の先ぱいは、あんまり関わりがないし、特に尾浜先ぱいは
どんな先ぱいなのかよく知らないので、ちょっと不安でしたが、
お部屋に行った時に、まず
「はっちゃんとこの子だよね」
と言われ、食堂で竹谷先ぱいにも
「そっか。孫次郎の担当は勘か。勘ならそんな大変じゃないだろうから、がんばれよ」
と言われたので、何だかちょっと気が楽になりました。
たしかに尾浜先ぱいは、そんなに無茶もしないし、とっつきにくくも無くて、
実技の授業中も教科の授業中も、ぼくに色々教えてくれたり関係の話をしながらも、
自分の番が来たりさされたら、完璧にこたえられていたので、ぼくも上級生に
なったら、あんな感じになりたいと思いました。
委員会の時間は、鉢屋先ぱいと鉢屋先ぱい担当の三治郎もいっしょに、学園長の
おつかいに行って、おだちんでおやつを買ってもらったので、いつもこんな感じ
なのかきいたら、
「そうみたいだねぇ」
とかえってきました。尾浜先ぱいも、まだ学級委員長委員会には慣れていないので、
よくわからないそうですが、鉢屋先ぱいが言うには、
「勘右衛門は順応力がけた外れに高いからな。彦四郎なんかより、よっぽどなじんでいる」
だそうです。
結論
上級生はみんな濃い中で、尾浜先ぱいは髪型以外は地味な感じなのに、それでも全然負けて
いなくて、うまくやっていけてるようなので、ぼくも尾浜先ぱいみたいに、は組ほど濃く
なくてもぼくらしく居場所を見つけられればいいな。と思いました。
#○
せんぱいかんさつほうこく
1年は組 山村喜三太
ぼくのたんとうは、おんなじ用具委員会の、富松作兵衛せんぱいでした。
平太と伏木蔵といっしょにお部屋に行ったら、いつも通りおこってて、
平太たちが神崎せんぱいたちと手をつないで食堂に行く時に、ぼくも
富松せんぱいと手をつないでいいですか。ってきいたら、「しかたないな」
って言いながらもつないでくれて、ほんとはちょっとうれしそうだな。
って思ってたら、ほかのせんぱいたちにも言われて、キレてました。
でも多分、アレは「逆ギレ」って言うんだと思います。
朝ごはんのあとも、じゅぎょうちゅうも、ずっとおこりっぱなしで、委員会の
時だけは、食満せんぱいのたんとうのきり丸は、器用だし用具のお仕事に
ちょっときょうみがあったみたいなので、おこっていませんでした。
夜は、お手洗いにいったっきり帰ってこない次屋せんぱいと、止めないでそのまま
ついていった伏木蔵を、探しに行ってみつけたあと、ずーっとおせっきょうをして
ましたが、そのあいだに、こんどは神崎せんぱいがどこかに行きそうになったけど、
平太がちゃんと止めたので、ほめられてました。
いつもの委員会の時も、ぼくやしんべヱよりも平太の方がほめてもらえることが
多いので、「ずるいです」って言ったら、「だったらもっと使えるようになれ!」
って言われちゃいました。
まとめ
いつもずーっとおこりっぱなしで、つかれないのかなって思ってましたけど、
きり丸のバイトみたいに、おこってるのが富松せんぱいなのかもな。とも思いました。
#○
先輩観察日誌
一年い組 黒門伝七
担当:三年は組 三反田数馬先輩
朝
先輩方のお部屋に行ったら、同室の浦風先輩に
「顔を洗いに行ったはずだけど」
と言われ、一緒に探したら、井戸のすぐ脇に掘られていた深めの
タコ壺に落ちて出られなくなっていました。
その後、着替えて食堂に向かう時にも、後ろから走って来た3年ろ組の
先輩達にふっ飛ばされたり、朝食の焼き魚に塩がかかっていなかったりと、
散々でしたが、「いつものことだから」と諦めていらっしゃるようでした。
昼
実技の授業中には、すっぽ抜けた他の先輩の手裏剣がかすり、教科では抜き打ちテストの
終了間際に、隣の先輩がすずりをひっくり返して、ほとんど埋まっていた答案が墨で
染まったりと、やっぱり不運まみれでしたが、それも慣れっこのようで、黙って傷の
手当てや追試の申し出をしていました。
夕方
委員会中に、他の保健委員の先輩方もそんなものなのかときいてみたら、不運の
見舞われ方は6年生の善法寺先輩も同じようなものだけど、回避ややり直しの腕も
上がっているので、3〜4年生位が一番酷いんだと聞いて、2年生の川西先輩と
一緒に、何だか愕然としていらっしゃいました。
夜
今日の日替わり定食は好物ばかりだったのに、七松先輩に激突されて落としてしまい、
弁償はしてもらえましたが、定食は売り切れてしまっていたのが、とてもあわれでした。
感想
不運小僧と呼ばれている、乱太郎や善法寺先輩の方が、ひどい不運なのだと
思っていましたが、あんがい中途半端にちょっと不運なのも嫌なんだな。
と思ったので、絶対に保健委員会にだけは入りたくないと思いました。
#○
先輩観察報告
1年は組黒木庄左ヱ門
ぼくの担当は、2年の時友四郎兵衛先輩でした。
時友先輩に関しては、2年生でも体育委員でも一番大人しそうな、
小柄な先輩。程度の認識しかありませんでしたが、よく知らない
からこそ、おもしろそうだとも思いました。
僕がお部屋に行った時は、まだ起きていらっしゃらなかったようで、
起こした方が良いか考えていたら、川西先輩が来て叩き起こされて
いましたが、自力で起きないだけで、いぎたない虎若や団蔵と違って、
起こされればすぐに起きる性質のようでした。
ちなみに、川西先輩の起こし方は、母ちゃんよりは伊助に似ていました。
朝ご飯は、他の2年生のどの先輩よりもたくさん食べていて、食べ終わるのも
2年生で一番早かったです。しかも、お昼や夜はもっとたくさん食べていて、
おやつや夜食もしっかり食べていたので、どこにそんなにいっぱい入るん
だろうな。と、すごく気になりました。
教科の授業中は、良い陽気だったので居眠りしそうになっていましたが、
先生のチョークが飛んでくるなり、すぐに起きてそれをよけました。
だけど、その後さされた所は答えられなくて、実技も走ったり避けたり
飛んだりする以外は、いまいちだったので、多分、勘と反射神経が
すごく良いんだと思いました。
委員会中も、一番後ろからだけど、顔色一つ変えずに、ぼくらを気づかったりも
しながら走り続けていたので、「すごいですね」と言ったら、
「うん。なれてるから」
と笑いながら答えてくれました。
結論
おっとりしているけど、やっぱり体育委員なんだな。と、実感しました。
#○#○
タカ丸さんかんさつほうこく
福富しんべヱ
ぼくがひいたせんぱいは、4年は組の、斉藤タカ丸さんでした。
タカ丸さんは、忍術学園に入る前に、つじがりをしていたときに
しりあって、4年生にへんにゅうしたけど、ふつうのじゅぎょう
だけだとついていけないので、ときどきぼくらのところにほしゅうに
きたりするので、とってもよくしってるせんぱいです。
でも、きょう1日いっしょにいたら、4年生のじゅぎょうでも、
がんばってきいて、わからなかったりできなかったら、先生や
ほかの人にききながら、がんばっていました。
でもやっぱり、ほかの4年生のせんぱいにくらべるとできていなかった
けど、やすみじかんやほうかごに、なかのいい4年生のせんぱいに
とっくんしてもらったり、いいんかいのじかんには池田せんぱいや
久々知せんぱいにもおそわっていました。
あと、よるにもふくしゅうやじしゅれんをすごくがんばっていました。
#○
先輩との1日
1年ろ組 二ノ坪怪士丸
担当:2年い組 池田三郎次先輩
ぼくの担当の先輩は、図書委員会でいつもお世話になっている能勢先輩の
ご友人の、池田先輩でした。
きり丸などからは、「よく馬鹿にして来る嫌な先輩」と聞いていましたが、
能勢先輩からは「三郎次も左近も、ちょっと口が悪くて不器用なだけ」と
聞いていて、実際1日を共にした感じでは、どちらも合っていなくもない
ような気がしました。つまりは、今の1年い組の子達とよく似た感じの、
えらぶりたい年頃なんだと思います。
具体的には、授業中にぼくや他の先輩方についている子達が「すごいですね」
などと感心したら
「別に、これ位できて当然だ」
と、照れながらぶっきらぼうに返してきた感じや、ぼくらからは特に何も
きいていないけど、色々教えてくれた所から、そう感じました。
でも、実力があったのは本当です。
それから、委員会の時は土井先生や久々知先輩の指示を守り、時には
自分から質問にいったりもして、すごくがんばっていました。
夜は、お部屋で少し予復習をした後は、同室の先輩方と楽しそうに
おしゃべりなどをしていました。
結論
い組の子達よりは、口で言うことに実力が伴っている気がしました。
あとは、何だか厄介事にもなれていなくもなさそうだったのは、
野村先生と大木先生や、タカ丸さんでなれているからでしょうか?
#○
先ぱいかんさつ
1−は 佐武虎若
おれのたんとうは、6年の中在家長次先ぱいでした。
きり丸からは「なれればききとれるようになる」とか「あんがいこわくない」
とかきいてたけど、やっぱり6年生なんで、ちょっときんちょうしてたのに、
うっかりねぼうしてあわてて部屋に行ったら、とくにおこられたりはしなかった
けど、だまって本をよんでるかんじがちょっとこわかったです。
あさめし前に、乱太郎をかかえてひとっぱしりしにいった、同じ部屋の七松先ぱいに
何か言ってたっぽいけど、何を言ってたのかは聞こえなかったです。
教科のじゅぎょうで指された時も、やっぱり聞こえづらかったけど、先生には
ちゃんと聞こえてて、しかもほそくまでかんぺきだったようです。
実技はさすが6年生なんですごくて、しかも火縄銃でした!!
しかも、おれはみてるだけしかさせてもらえなかったけど、じゅんばん待ちの間に、
火縄銃にまつわる話をちょっとおしえてくれました。
委員会はちょっとつまんなかったけど、あんま人がいなくてヒマな時間に、おれらの
今やってるはんいとか、火縄銃に関する本をいろいろえらんでくれました。
まとめ
やっぱりまだちょっとこわいけど、きり丸が言うとおり、どっか父ちゃんぽい、
いい先ぱいなのかもな。って思いました。
#○
久々知先輩観察報告
1年い組 今福彦四郎
対象:5年い組 久々知兵助先輩
朝:お部屋に行ったらすでに起きていらしたのですが、よく聞くと読みかけの本を
読んでいたら、夜が明けていたのだそうです。
朝食は冷奴定食でした。
昼:教科の授業中に抜き打ちテストがあり、先生の目をぬすんでカンニングするのも
テストの一環だったようですが、久々知先輩も他の先輩方もどうやってカンニング
しているのか、そばで見ていてもよく分かりませんでした。
昼食は田楽豆腐と豆腐のみそしるでした。
夕方:委員会の間中、タカ丸さんやタカ丸さんについているしんべヱを注意したり、池田先輩に
指示を出したりしながら、ご自分の作業をしていたのがすごかったので、尾浜先輩より
久々知先輩の方が学級委員長に向いているんじゃないかと言ったら、
「勘ちゃんの方が人望あるし、三郎と一緒に仕事したくないからな」
と返って来ました。……多分、鉢屋先輩と一緒が嫌な方が、理由として大きいと思います。
おやつとしておぼろ豆腐を一緒にたべました。
夜:予復習や、明日の用意をしつつ、1年生をつれて遊びにきた他の5年生の相手もしてたのが
すごかったです。
夕食は湯豆腐でした。
結論
噂通り、優秀で豆腐小僧な先輩でしたが、思っていたよりは気さくでした。
あと、まばたきの回数が少なくて怖かったです。
#○
浦風先輩と一日を共にして
一年は組 皆本金吾
まず、お部屋に行ったら
「とちゅうで、数馬か左門か三之助を見なかったか」
ときかれました。
方向オンチのお2人はともかく、何で三反田先輩まで?と思っていたら、
「かわやに行ったっきり帰ってこないから、どこかで穴にでも落ちている可能性がある」
とのことで、本当に穴に落ちていました
その後。食事中も、授業の間も休み時間も、三反田先輩の不運のしりぬぐいをしたり、
時々巻き込まれ、方向オンチのお2人や、伊賀崎先輩の逃げたペット達を探すのを
手伝い、更には暴走した富松先輩にツッコミを入れ、作法委員の先輩方にも振り回され
ながらも、やるべきことだけでなく、授業の予復習までしているのがすごかったです。
まとめ
いつも方向オンチの先輩達の手綱を握って世話をしているのは、富松先輩だと
思っていましたが、他の先輩達もひっくるめて一番大変なのは浦風先輩で、
そういう母上っぽい所も、美人だけどちょっとキツイ感じも、実は気位が
高めなのも、何か滝夜叉丸先輩っぽいな。と思いました。
#○
先輩観察報告
1−は 夢前三治郎
ぼくの担当は、変装名人なことで有名な、5年の鉢屋三郎先輩でした。
鉢屋先輩については、庄左ヱ門やきり丸経由の不破先輩のお話とか、
竹谷先輩のグチなどで色々聞いていましたが、謎の多い先輩なので、
どんな新事実がわかるか楽しみでした。
朝
まず、不破先輩担当の団蔵と一緒にお部屋に行ったら、かわやに行っていた
不破先輩の振りをして僕達をだまそうとしてきましたが、通りすがりの他の
先輩方に指摘され、戻って来た不破先輩からも叱られていました。
朝食(お昼と夕食の時もですが)は、何故か2人分注文したと思ったら、片方は
不破先輩の分で、気になったおかずは他の先輩とも交換したりしていました。
授業
教科の授業中は、何だか退屈そうにあくびをしたり、不破先輩や竹谷先輩を
いじっていることが多かったですが、先生は気にしていなかったので、多分
いつものことなんだと思います。
実技の方は、見本をやるように言われ、面倒臭そうに模範演技を見せていました。
委員会
学園長のおつかいで茶菓子を買いに行き、おだちん代わりにもらったお裾分けで
お茶をしている。という噂は本当でしたが、5年生のお2方は、買い出し中に他の
仕事もしているように見えなくもなかったのですが、多分団蔵は気付いていないと
思います。
夜
予復習か夜錬もしくは、道具の手入れとかでもするのかと思っていたら、どれを
やるか悩んでいる不破先輩を眺めたり、追試の勉強をしている竹谷先輩の邪魔を
した挙句、予習をしている久々知先輩の所にみんなで遊びに行きました。
まとめ
「能ある鷹は爪を隠す」っていうのを体現しているのか、単に気分屋なのかは
良く解りませんが、実力があるのは事実っぽい気がしました。
#○
せんぱいとの1日
一年ろ組鶴町伏木蔵
担当:次屋三之助せんぱい
まず、平太たちといっしょにおへやに行ったら、富松せんぱいに
おせっきょうをされていたんで、楽しくなりそうだなぁと思いました。
授業中やお昼は、勝手にどこかに行かないように、縄をつけられてたのが
おもしろかったです。
かわやに行こうとして、全然ちがう方にすすんでいくのが、うしろから
ついていってて、とってもスリルとサスペンスな感じで楽しかったです。
でも、何だかんだ言ってもちゃんと3年生なので、じゅぎょうにも
ななまつせんぱいにもついていけてる感じが、ちょっと意外でした。
#○
先輩観察報告
一年は組 二郭伊助
対象:6年い組 潮江文次郎先輩
朝
お部屋に顔を出したらいらっしゃらなかったので、同室の立花先輩に
聞いたら「外」と言われ、井戸の方に行ったら、乾布摩擦をしていました。
いつもなら、朝の鍛錬に行っているのだそうですが、以前当時の1年生が
観察に来るのが判っているのに、鍛錬に行ってしまい待ちぼうけを
食らわせたり、一緒に連れて行って怪我をさせたことがあり、それで
ものすごく怒られたので、妥協案が乾布摩擦とその場で出来る軽い
柔軟などになったんだそうです。
……って、誰との妥協案ですか。とは聞けませんでした。
昼
すごく大真面目に教科の授業を聞いていたのが、意外なような納得
できるような、微妙な感じでした。
でも、やっぱり実技の方が生き生きとしているように見えました。
夕方
委員会の時間は、一応僕も商家の子なんで、ちょっとはお手伝い
出来るかと思い、団蔵の10キロそろばんを貸してもらいましたが、
重くてはじけなかったので、普通のそろばんを借りました。
ちゃんと、普通のもあるんですね。
あと、今日は特別だったのかもしれませんが、計算間違いや字が
汚かったり、口論したりせずに、黙々と作業をこなしてさえいれば、
別にそんなに怒られたり、怖い感じはしなかったです。
ところで「いっそ加藤が居ない方がはかどる」と言っていたのは、
団蔵には黙っているべきでしょうか?
夜
朝と同じくというか、委員会で後輩達に走り込みさせたりするのもうるさく
言われるとかで、渋々僕を重し代わりにして、腕立て伏せや屈伸をしたり
した位で、後は教科の予復習をしたり、僕に色々教えたりしてくれました。
まとめ
確かにちょっとギンギンに忍者していなくも無い感じでしたが、
思いの外マトモでした。
あと、誰に口うるさくお説教されるのが嫌だったんでしょう?
#○
善法寺先輩の観察結果
一年い組 任暁左吉
朝:かなり早めの時間にお部屋にお邪魔したのに、すでに起きて
いらしたので、いつも朝は早いのかとお聞きしたら、
「夜中に、腕を切って来た奴が居て、そういえば部屋用の
傷薬が少なくなってきてたから、何となく作ってたんだ」
とのことで、寝ていらっしゃらなかったようでした。
昼:成績はそんなに良い訳ではないようですが、返って来た数日前の
小テストの結果には採点ミスがいくつもあり、教科書は墨と泥と
その他諸々で読めなくなっているので、他の先輩からその都度
写させてもらっているけど、それも風で飛んだり墨壺をひっくり
返されたりしてめちゃくちゃになることが多いので、最近は諦めて
いるとかで、所々教科書(写し)無しで授業を受けているのに、一応
ついていけていたのは、実は結構すごいんじゃないかと思いました。
夕方:委員会中も、薬草がしけっていたり、落ちてきた箱が直撃したり、
薬鉢が割れたりと、何かと不運に見舞われまくっていました。
けれど、日常茶飯事なので気にしていないとのことで、片付けや
後始末と他の保健委員への指示と怪我をした生徒の手当てなどを、
同時進行でこなしているのがすごかったです。
また、手が少し空いた時に、
「眠り薬と、肉刺に効く塗り薬と、眠気覚まし。どれの作り方が知りたい?」
と、会計委員の活動に役に立ちそうな薬の作り方も教えて下さいました。
夜:僕や、同室の食満先輩や食満先輩担当のきり丸などと話しながら、自前の薬箱の
中を確認して、足りなそうな薬を作っていらっしゃったので、参考までに何の
薬を作っているのか聞いたら、「とりあえず、火傷の薬」とのことでした。
ということは、主に立花先輩用なのかと思ったら、食満先輩が「むしろ実験台の
馬鹿の方に良く使ってるな」と教えて下さいました。……それは、もしやうちの
委員長のことでしょうか。
そう思っていたら、
「ああ、そうだ。打撲用の湿布に使う薬草も、そろそろ足りないから、しばらく
ケンカしないでね」
と食満先輩に告げたので、やっぱり主にそれらが使用されるのは、潮江先輩
なんだろうなと思いました。
結論
善法寺先輩は、潮江先輩が言う程ヘタレでは無いと思いました。
あと、毎日あんなに沢山薬を作ったり使っているんなら、もうちょっと保健委員会の
予算を認めても良いんじゃないかとも、ほんの少しだけ思いました。
オマケ
現在の1年生19人に対し、上級生は25人居る。
ということで、くじ引きであぶれた者も居るわけなのだが、その
あぶれた人数がちょうど偶数の6人なので、更にくじを引き、
出来た組み合わせで(別に一日中行動を共にしなくて構わないが)、
互いの報告をすることになったのは、明らかに学園長の思い付きだった。
「……よりにもよって、先輩とですか」
「何が言いたい、竹谷。私だって、今更お前らなぞの代を観察
せねばならないくらいなら、1年坊主に貼りつかれた方がマシだ」
「1はの用具のどっちかでもすか?」
「……よし。喜べ竹谷。今日は、お前を最新作の被験者にしてやろう」
「ごめん被ります! 宝禄火矢だろうがそれ以外だろうが、同期や俺らに
対しては、容赦する気無いですよね、立花先輩」
「そう遠慮するな。オマケで伊作仕込みの手当ても披露してやるから、
それを書いて提出すればよかろう」
「嫌です! そんなん、どこも意外じゃないですから!!」
@竹谷vs立花
「きり丸が、今度の休みのバイトの時に、大砲で紙吹雪やりたいって言ってたんですけど」
「僕の子達なら、貸さないからな」
「そこは、何か考えがあるみたいだから、大丈夫だと思います。だから、どうやれば
うまくいきそうか聞きたかったんですけど」
「紙ってことは、火薬で燃えるだろ。ってことは……」
「一応、図書の先輩方や土井先生に協力してもらう。って言ってましたけどね」
「ところで、この話と課題は関係あるのか?」
「先輩に策があるんなら、火器絡みなので意外性は低いですけど、『応用も出来るみたいです』
とでも書いて出そうかと思っていました」
「そうか。じゃあ、少し考えてみるから、お前も図書室で使えそうな本を探して来い。
そうしたら、僕は『意外に後輩思い』で出す」
「……自分で振っておいてなんですけど、それは性にあわないんでやめてもらえませんかね?」
@能勢&田村
「……」
「何だ。言いたいことがあるのならば、ハッキリと言え。伊賀崎孫兵」
「いえ、別に。三之助から『案外母ちゃんぽい』と聞いているので、
それは別に意外ではありませんが、かといって、意外な面が見えるまで
行動を共にするのも、面倒だと思っただけです」
「お前は、虫以外に興味が無いことは知っていたが、思いの外無礼なのだな」
「そうですか? 確かに、藤内や作兵衛には『もう少し本音を隠せ』と
時折説教されますが」
「そうなのか」
「はい。『僕らだって、面倒だけど君のじゅんこ達を探したりするの手伝ってるんだから、
嫌そうな顔してないで、左門と三之助探して!』と数馬にキレられることも、良くありますし」
「それは、意外だな。……その説教や文句の内容もだが、むしろお前がそこまでキチンと、
周囲の人間の言動を気に掛けていたことに驚いた」
@伊賀崎&平
5人ずつ4回に分けて拍手お礼だったもの+オマケ
組み合わせはくじ引きでした
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