@ 年が明け、冬休みも終わって帰省していた生徒達も全員登校した、3学期初日。 始業式も終わったので、各クラスが退場しようとした矢先。 「学園長から、『新春カラオケ大会を開催じゃ! 委員会もしくは部活対抗で、一番面白かった所に、景品を 出すぞ』との宣言が出ましたんで、各委員会毎に固まって下さいね〜」 と、生徒会長である鉢屋三郎の声が、マイクを通して体育館中に響き、次いで 「景品は、小松田さんが間違って大量購入したジュースだそうです」 「曲は、ここにあるカラオケ機材に入っているやつなら、何でもアリで、順番は曲を入れた順だそうです」 と、書記の黒木庄左ヱ門と今福彦四郎の補足が入った。 そんなわけで、いきなり開催されたカラオケ大会の初めを飾ったのは、 「では、われらが場を温めさせていただくということで☆」 と言って、庄左ヱ門と彦四郎を伴った三郎が入れた『恋をいたしましょう』(by電ボ)だった。 A 若干嫌そうな彦四郎と、「鉢屋先輩らしい選曲、なのかな?」などと何故か他人事のように 考えながらもそつのない庄左ヱ門と、ムダにノリノリな三郎が歌い終えると、次は 「こないだ練習してみた、アレいくか」 と生物部が入れた『アルゴリズム行進』だった。 舞台袖から、5年の竹谷八左ヱ門を筆頭に、じょろじょろと身長順に生物部員が歌いながら出てくると 「わぁー、人数がいると、ああいうの出来て良いねぇ」 「ねぇ、今虎若が『エライ人』を『エロイ人』って間違えた気がするの、気の所為?」 「地味に、1年生に高さ合わすのキツそうだよね、孫兵」 などの反応があり、最後には何と 「え? 木下先生!?」 顧問の木下鉄丸まで参加していて、しかも大真面目にやっているように見えるのが、シュールだった。 B その次は委員長の独断で『ラジオ体操の歌』で本当にラジオ体操をやる羽目になった体育委員会だったが、 4年の平滝夜叉丸だけ、他の4人と向き合い完璧に逆の振りで見本をやっていることと、3年の次屋三之助が 見事に全て逆になって両隣の後輩達にぶつかりまくっているのが、妙に笑えた。 続く用具委員会の『崖の上のポニョ』は、6年の食満留三郎委員長と3年の富松作兵衛がオッサンパートで 残る1年生3人が女の子パートで、かなり似合っていて微笑ましかったが、 「いっそ、食満+吉野&後輩達の方が面白かったのに」 という誰かの呟きに、他の面々も賛成だった。 更にその次の図書委員会の『ぴっとんへべへべ』(日本語であそぼ)は、似合わなくもないし 「中在家先輩の限界が、この辺りなんだろうな」 と皆納得したので、ある意味妥当な感じがした。 曲を自分達ですんなりと決めて歌ったのはそこまでで、残りは本人達以外が勝手に入れた為に、笑えはするが かなり無茶苦茶なことになった。 C 「お前らには、コレが似合う」 と三郎が舞台委員会に歌わせた『愛のうた』(ピクミンの曲)は、何だかあらゆる意味で切なすぎた。 そしてそんな5年生のやり取りを見て、 「ならば、お前達の分は私が選んでやろう」 とあまり乗り気ではなさげだった残りの生徒会メンバーに『走れコータロー』を歌わせた立花仙蔵様率いる 茶道部に 「じゃあ、君達はこれなんかどう?」 と、ニコニコ笑いながら保健委員長の善法寺伊作が示したのは『歌舞伎町の女王』だった。 D 迫力満点に歌いきった茶道部の次は、うっかり入れ損ねていたらトリになってしまっていた保健委員会で、 『明日があるさ』は流石に自虐的すぎるからと『濡れひよこ』(槇原敬之)を歌い、 「可愛い」 「和む」 「でもやっぱり、ちょっと自虐的な選曲じゃね?」 などと概ね好評だった。 そんなこんなで、全委員会+αが歌い終わり、学園長の独断と偏見と趣味で選ばれた優勝は…… 「どこも面白かったので、順位はつけん!」 とのことで、それでも賞品のジュース+お菓子が全員に振る舞われたので、 「結局これって、ただの新年会だろ」 と皆が思ったが、それなりに楽しめたので、誰からも文句が出ることはなかったという。
元拍手お礼。 一応マニアック過ぎるのは避けたんですが、出てきた曲全部わかる方とか、いませんよね。 下に、無駄に長いオマケありますので、よろしければどうぞ 2010.1.20 戻オマケ 始業式の日は授業が無いので、そのまま新年会ノリに突入し、 好き勝手に、飲み食いしたり機材を出しっぱなしのカラオケで 歌ったりしていた時のこと。 「もーんじっ。何か一緒に歌おーvv」 歌ったり騒いだりせずに、生徒会会計の後輩達に指導などを していた文次郎の背に、タックルをかますような勢いで、 妙に上機嫌の伊作がのしかかってきた。 しかもその頬はほんのり赤く、文次郎も周囲の後輩達も 何事かと面食らっていると、 「ズルイぞ文次郎。…そんな付き合いの悪い堅物より、 私と歌おう、伊作」 などと、今度は妙に言動が幼く映る仙蔵が絡んできた。 そんな2人が、先程までいた辺りでは、 「……流石小松田さん。コレ、ジュースっぽいけど酒だ」 一緒に飲み食いしながら話していた留三郎が、飲んでいたジュースの 缶を見分し、呆れるのを通り越して感心したように呟いた。 「んじゃ、あと10人は酒もらっちゃった人がいるってこと?」 「いや。1箱1ダースじゃなくて24本だから、20人以上だな。……とりあえず、 5人は見つけた。5年の連中が、多分コレと同じ缶で、妙にテンションが高い」 箱買いされたジュースが配られた為、1種類につき最低24本はある筈で、 周囲を見回すと『サナダムシ』を歌っている5年い組ペアと、それを 盛り上げている5年ろ組トリオは、基本的に大騒ぎが好きな奴らとはいえ、 盛り上がりすぎている感じがしたという。 「まぁ、アイツらなら別にいっか。あとは…あ。俺らのも同じ缶だ」 ふと自分の手元を見て、それでようやく飲んでいたのが酒だと気付いたのは 小平太で、その隣に居る長次の前に置かれていた缶も、同じものだった。 「お前らも、1本くらいなら大丈夫だよな。そうすると、残りは……」 「ん? 何か3年達の居る辺り、騒がしくない?」 「……伊賀崎と、浦風が倒れたと、三反田達が騒いでいる」 小平太の疑問に答えたのは、静かに周りの様子を確認していた長次だった。 「前にさぁ、何かの打ち上げの時に冗談でお酒飲ませたら、一滴で ぶっ倒れた後輩が居たって、仙ちゃん言ってなかったっけ?」 「てことは、多分あそこに2本以上いってるな。……様子見に行ってくる」 その後。ジュースに混じっていたチューハイの所為で、だいぶ酷い光景が そこかしこで見られたが、2年は組の四郎兵衛と、1年は組の三治郎だけは、 自分が飲んでいたのがお酒だと気付くことなく、平然としていたという。 尚、このチューハイは実は教師陣の忘年会時に購入されたもので、 「ジュースが混じっている」 と逆に間違えた飲兵衛数人が除外したのを、そのまま景品に転用した為、 今回に限ってだけは、小松田に非は無く、濡れ衣だったりするらしい。