潮江先輩と組んだ、とある忍務の退却中のこと。
	しつこい追っ手をどう撒くか考えながら走っていると、懐から何かを取り出した先輩が、
	「最低でも30秒は息をせず、絶対に振り返るな」
	と言いながら、振り向きもせずに、火を着けたソレを後ろの追っ手達に投げた。

	次の瞬間。悲鳴と呻き声と、何故か笑い声が背後から響いたが、言われた通りに振り返らず、追っ手の気配が
	完全に感じれなくなった辺りで訊いてみると

	「立花・善法寺共同製作の、死ぬほど目に沁みる焙烙火矢。保健委員会謹製の痺れ薬仕込みの煙幕。鶴町製の
	 笑い薬入りもっぱん。猪名寺・夢前・山村共同開発の、如何わしい幻覚が見える煙玉。それに手を加えた、
	 最も見たくない幻覚が見える煙玉。……の内の幾つかだな」

	との答えが返ってきた。

	「何ですか、その明らかにヤバそうな品揃えは」
	「仕方ねぇだろ。試作品から完成品に改良版まで、作る度に実験台として渡されんだからよ」

	……。ああ、そうか。元忍術学園の保健委員の中でも、特に物騒な輩が、この人の周りに揃っているんだったか。


	「この内半数は、現役時代に作ったやつだが、予算会議で使うと周囲の被害が甚大になるってんで、自粛
	 していたんだとよ」



ひとまず日記もどきに置いていた発掘物 語り手は三郎かきり丸かと 2010.7.8移動