デーボス軍は倒したが、取り残されたゾーリ魔や残党が、いつ又出てくるともしれないからか、キョウリュウジャーへの 変身能力も、獣電池も獣電竜もスピリットベースも残ったままのある日のこと。 以前程頻繁に会うことは無くなっているが、アミィは相変わらずTIGER BOYでバイトをしているし、キングことダイゴや 空蝉丸が何でも屋まるふくの手伝いをしていたり、ソウジが空蝉丸に稽古の相手を頼んだり、イアンが「ここが一番 はかどるんだよな」といってスピリットベースで論文を書いていることなどもあり、何だかんだ顔を合わせたり、 定期的に連絡を取り合っていたが、その日は珍しくソウジから他の5人に 「時間があったらで構わないから、スピリットベースに来て欲しい」 との招集メールが届いた。 そんな訳で、「何でも屋の依頼が入っているので遅れる」との返信があったノブハル以外の4人が、何事かと急いで 集結すると、 「カバンを開けたら、ザクトルが入ってたんだ」 と、困り顔でカバンを拡げて見せたソウジと、カバンの中で「なぁに? なにかあったの?」と言いた気に見上げている ザクトルは、まるで 「捨て猫拾っちゃったんだけどどうしよう」 と訴えてくる子供と、拾われた仔猫のようだった。 △▼△ 「WAO! ザクトルも小さくなったのね。ドリケラもなのよ」 「プテラゴードンも、この通りに小さくなっていたでござる」 「Oh my パラサガン以外もだったか。となると、全員か?」 「ブレイブだな!」 口々に感想を漏らす仲間達をよく見れば、ダイゴのフードの中のミニティラはいつものことだが、アミィの足元には ドリケラが、空蝉丸の肩口にはプテラゴードンが、イアンが珍しく携えていた紙袋からはパラサガンが顔を出しており、 それぞれ仔犬〜オウムサイズになって居た。 「え。つまり、みんな獣電竜が小さくなったけど、慌てて騒いだのは俺だけってこと?」 一人だけパニックに陥ったとか、恥ずかしいんだけど。と憮然するソウジに、 「いや。俺は今日は部屋で資料をまとめてたんだが、息抜きにコーヒーを淹れに行って戻って来たら、小さくなった パラサガンがラップトップを覗き込んでいて、驚いた所にメールが来たんで、ひとまずその辺にあった袋に入れて 連れて来たんだ」 「拙者も、ソウジ殿からめぇるが届いたので見ようとしたら、プテラゴードンが、モバックルを持って来てくれたでござる」 「あたしは、ちょうどバイト終わりで着替えようとしたら、更衣室でドリケラが待ってたの」 と、口々にタイミングの問題だと説明している所に、依頼を終えたらしいノブハルが、仔犬程のサイズのステゴッチを 小脇に抱えて現れた。 「遅れてご明太子ー。なんちゃって。……あー、やっぱりみんな小さくなってて、ソウジくんの用件も、コレかな?」 「ようノッサン!」 「Hi ノッサン、ステゴッチ」 「お勤めご苦労でござった、ノッサン殿」 「お疲れ様、ノッサン。俺の用件の、予想ついてたの?」 「やっぱり。って、何か知ってたのかよノッサン」 「うーん。まぁね。ここに来るまでの間に、車でステゴッチから聞いただけだけど」 曰く、一旦軽トラと工具を置きに帰宅したら、居間で姪の理香とステゴッチ(小)が戯れていたのだという。 「ステゴッチから聞いた。って、言葉が解るのか? キングじゃあるまいし」 「うん。キングがミニティラの言ってることが解るのは、何となく納得がいくけど……」 「キングはともかく、ノッサンばっかりずるーい」 規格外のブレイブな王様は置いといて。と口を揃えて抗議してくる仲間達に、 「違うわ。わたしが訳したのよ」 と答えたのは、 「キャンデリラ!?」 「というか、喜美子さん!?」 「ハァイ、キョウリュウジャー達。久しぶりね」 ノブハルの背後から顔を出し、いつもの笑顔でヒラヒラと手を振るピンクのツナギ姿の美女は、現在は「桃園喜美子」の 名で人間に擬態し、日々ボランティアや何でも屋まるふくの手伝いをしている元喜びの戦騎キャンデリラで、確かに 彼女なら獣電竜の言葉が解っても不思議は無かった。 そして、キャンデリラこと喜美子の解説に依ると、ことの発端はダイゴがまるふくの手伝い中に、スピリットベースで 留守番をしていたミニティラが、 「昨日はダイゴと何をした」 「今日はこの後ダイゴと何をする」 「こないだはダイゴと」 などと、他の獣電竜達に話した所 「……パラサガンも、イアンと一緒に居たい!」 「ザクトルもー。ちっちゃくなって、ソウジくんのおカバン入って、一緒に学校に行ったり、クリームソーダ飲むのー」 「ドリケラも小さくなって、アミィちゃんとパフェ食べに行きたーい」 「ステゴッチ、小さくなってもきっと力持ちだから、ノブハルくんのお手伝い出来るよね」 「プテラゴードンも、小さくなれば、空蝉丸の側で何某かの助けになれるであろうか」 等々、「ガブティラばっかりズルい!」との声が上がり、各々努力したのに加え、紫の祖父孫に相談した結果が、 今回のこの状況なのだという。 「ああ、ドクターと弥生さんの協力があったんだ」 「ならば納得でござるな」 「でも、何でドクター達は獣電竜達の言葉が解ったのかしら?」 「そこもだけど、獣電竜達の口調が幼すぎるのが気になるのは、俺だけか?」 アノ、キング並みにブレイブな祖父さんなら、言葉が解っても不思議は無い。と付け加えたイアンに、 「お祖父ちゃんは何となく解っていたみたいですけど、私は無理なので、試作品の翻訳機を使いました」 遅くなってすみません。と頭を下げながら輪に加わり説明を始めた弥生によると、無事小型化が成功したので、 全員招集して説明するつもりが、半数以上が「相棒の所に今すぐ行きたい」と駄々をこね、祖父の方があっさり それに許可を出してしまったので、こんな事態になってしまったとのことだった。 「おー、流石だなドクター。ブレイブだぜ」 「で、そのドクターは?」 「通院の日だったので、接骨院に行きました。私も、本当は先にこちらに来て説明しようと思っていたんですが、 お祖父ちゃんが出しっ放しにした工具とかを片付けていたら、遅くなってしまって……」 申し訳なさげに頭を下げる弥生に、 「ああ、腰痛の。それはそっち優先でも仕方ないよね。僕も最近、腰痛ベルトが手放せなくなってきてて」 「驚きはしたけど、別に弥生さんは悪く無いから」 「そうよ。あたしだったら、急いでたら『帰ってから片付けるから』って後回しにしちゃうのに、弥生ちゃんえらーい」 等々、弥生の所為じゃないというか誰も悪くないから気にするな。と慰めた。 「さて。それじゃ話を戻して良いか? ドクターと弥生ちゃんが、獣電竜達の言葉が解った経緯は把握した。けど、 この幼い口調は何なんだ」 「えっと、私が使った翻訳機は、そこまで詳細には訳せないので、私にはわからないです」 曲がりなりにも学者の端くれのイアンの追求に、弥生はまたも申し訳なさげに頭を下げたが、 「だって、みんなこんな風にしゃべっているんだもの」 わたし、脚色してないわよぉ。と主張する喜美子ことキャンデリラに 「何でかはわからないけど、どうもそれぞれの相棒の10〜15歳位下の精神年齢みたいだって、ステゴッチは言ってるんだよね」 とノブハルが補足を入れた。 尚、一番幼いのは3歳程度のザクトルで、ガブティラが5歳児。パラサガンとドリケラが小学生程度で、プテラゴードンが 中学生前後で最年長はやっぱりステゴッチだが、精々高校生位とのことのようだった。 「所で、小さくなったのはミニティラ含め六体だけなの?」 「あ、はい。えっと、プレズオンとブラギガスは、小さくなるわけにはいきませんし、ブンパッキーとアンキドンにも 断られたんです」 「ブンパッキーはねぇ、『そんな軟弱な真似が出来るか!』って言ってて、アンキドンは『小さくなってユウコさんたちの 側にいられるのはステキですネー』ってノリノリだったけど、ブンパッキーに『たるんどる!』って怒られて諦めた らしいわぁ」 一応、ミニ化に当たり十大獣電竜全員に確認を取ったが、スピリット組の相棒達には断られたとのことだった。 「私達とは、桁違いに付き合いが長いからかしら。ブンパッキーとアンキドンが、何て言うか……」 「うん。口調というか性格が、かなり鉄砕とラミレスっぽいみたいだね」 「というか、アイツら実は獣電竜と同化してたりしないか?」 「あー、無くは無いかもね」 「でもぉ、空蝉丸とプテラゴードンも似てるわよぉ」 「そうなのでござるか? しかし、喜美子殿を介さぬと獣電竜の言葉が解らぬのは、いささか不便でござるな」 「そうか? 俺はミニティラの言ってること、何となくだけど解るぜ」 「それは、先程みなさんも言っていましたが、ダイゴさんだからです。……折角小型化しても、今ある翻訳機では細かい ニュアンスが伝わらないのは、確かに不便ですよねぇ」 出来れば、各自言葉が通じると良いんだけどね。と、皆で顔を付き合わせていると、 「獣電竜の言葉が解るようになるアイテムならあるよ」 ノブハルの背後から顔を出し輪に加わって来たのは、袖の余ったダブダブの緑のセーターに、マイクロミニのパンツに ニーハイにお下げという、あざとすぎる格好の、推定女子中学生だった。 「えっと、誰?」 「ノッサン殿が連れて来たでござるか?」 「隠し子かノッサン!?」 「援助交際では無いわよね、ノッサン」 「ご近所さんやお得意様にもその疑惑かけられたけど、そんなお金も甲斐性もないから! 」 自分で言ってて哀しいけど。と否定してから、ノブハルはその女子中学生(仮)を「うちの居候の、楽だよ」と紹介した。 「あっれー、この姿で会ったこと無かったっけ?」 「もしかして、ラッキューロ?」 「あったりー」 言われてみれば、あざとさも込み込みで元楽しみの密偵の人間態としては適切な気がしなくもない楽は、「学校で 浮きまくったので現在はフリースクールに通っている中学生」で、ボクっ娘なのか男の娘なのかは不明だが、喜美子の 弟か妹ということにしてある。とのことだった。 そして、ラッキューロなら便利アイテムを持ってても不思議はないな。と納得した全員が、どんなアイテムなのか 尋ねると、提げていたガマ口形のカバンをゴソゴソと漁り取り出したのは、 「桃太郎印のキ「ストーップ! それはダメ! 」 「えー」 ぱっと見JCの口を、手で覆って黙らせる30男。というのは、だいぶ見た目的にはまずかったが、そんなこと気にする メンツではないし、それよりも効果音付きで言おうとしたセリフの方が問題だった。 「共通項は多いが、アウトだろそれは」 「イアンも、今のだけでわかるんだ」 「世界中で放映されているアニメだしな。……それに、士郎が現地の住人なんかと言葉が通じなくてもどかしい思いを する度に、半ば本気で欲しがっていたんだ。まぁ、正確には、コンニャクの方を欲しがっていたけどな」 苦笑交じりに話すイアンに、悪くない思い出に分類されているんだな。と感じた面々は、 「あー、僕も、昔は憧れたなぁ。どの道具も魅力的だよね」 「あたし、小さい頃にアノポケットが欲しい。ってダダをこねて、ジェントルを困らせたことがあるらしいのよね」 「俺、実は小中学校の遠足や社会科見学とかのバスで流れてた映画しか見たことないんだけど」 等々、ひとしきり某猫型ロボットの話題で盛り上がった後。 そのアイテムの効果が、ずっと効くのか一時的なのかを確認したところ、半永久的に続くが、お互いに使った相手にしか わからないので、周囲には聞こえない。という、かなり理想的な効能であるとの説明が帰ってきた。 そんな訳で、意思の疎通の問題は解決し、獣電竜達の一番の希望が「一緒に居たい!」だし、小型化することで省エネに なったので、 「人間の食べ物は、食べられはしますが、あまり与えないで下さい。それと、最低でも3日に1度は充電が必要です。 それから――」 等々、細かい説明を弥生から受け、各自連れ帰ることになったのだが、 「今更なんだけど、うちはエサ代がかからないようなら優子も許してくれると思うし、ウッチーはキングと同じように スピリットベースとかで生活してるから大丈夫だと思うけど、みんなも連れ帰って平気なの? 特にイアン」 「まぁ、基本ペットは連れ込み不可だろうが、抜け毛も無駄吠えもないなら、大丈夫だと思う」 「うちは、裏の竹林で放し飼いかな」 「連れて帰るのはno problemだと思うけど、やっぱりあたしが自分でお世話しないとダメよね」 などと、なんだか犬猫を拾ってしまった時の対応のようなノリに話が転がってしまったが、相棒達に迷惑かけないように するもん! と主張する獣電竜達は、犬猫と違って意思がキチンと通じるから、まぁ大丈夫か。ということで、ミニ化した 獣電竜と相棒達の生活が始まることになったのだった。
本編ほとんど見てないくせに、リアタイ視聴の柳佳姉さんと大いに盛り上がったネタがあるので、 それの全前段階として書き始めたら、無駄に長く…… 獣電竜達の精神年齢が幼いのは、ただの私の趣味ですよ(開き直り) 2014.4.27オマケ&簡易設定 「ところで、呼び名はどうしようかしら」 「うーん。ミニティラみたいに、みんな『ミニ』をつける?」 「そうすると、ミニサガンにミニゴッチにミニトルに ミニケラに、ミニラゴードン、か? 判別し辛いな」 「左様でござるな。それに、拙者には『みに』が小さいとは結び付かぬでござる」 「そうねぇ。だったら……プテラゴードンは『小テラゴードン』なんてどう?」 「おお、良いでごさるな。流石はアミィ殿」 「OK。それじゃ決定ね。他に、小さい系の単語や形容詞は、何があったかしら」 「small 、little、 petit……『プチサガン』はアリか」 「ドリケラは、『チビケラ』とかどうだ?」 「あ、良いの思い付いた。小さいの『ちぃ』で『ステゴッちぃ』。良くない?」 「ノッサンらしいし、意外に悪くない、かも? ……ザクトルはどうしよう」 「いっそのこと、ノッサンに倣って語尾を変えるのもアリかもな」 「例えばどんなだ?」 「優子も理香もそうだったんだけど、小さい子に『う』の音は発音し辛いみたいで、 ザクトルは一番小さい子っぽいから、『ザクトりゅ』とか『ザクトゆ』とか?」 「え。いや、それはちょっと……」 「WAO! 可愛い!!」 「俺も、逆にブレイブな感じがして、良いと思うぜ!」 「拙者も、案外悪くないと思うでごさる」 「アミィさん。キング。ウッチーまで……」 「悪いが、俺も他に良いのが思いつけないんで、ひとまず候補に入れといたらどうだ?」 「イアン……」 ミニティラ 5歳児。ダイゴ大好き。他のみんなも大好き プチサガン こまっしゃくれた小学生(10歳程度)。 基本的にイアンしか眼中に無い ステゴッちぃ 中学〜高校生。気は優しくて力持ちなお兄ちゃん。 のっさんのギャグは割と本気で面白いと思っている ザクトりゅ 3しゃい。甘えん坊の末っ子。ソウジくんべったり チビケラ おしゃまな小学生女子(7〜8歳)。似たもの女子ず 小テラゴードン 時代錯誤気味な中学生。やっぱりどことなく武士。 甘いもの好き