地球時間で、5月の第二日曜日。M78星雲光の国の宇宙警備隊の客員隊員であるガイアの元に、一通の封書が届いた。
その封書を開けてみると、中からは更に、色とりどりの10通の封筒が出て来て、その差し出し相手を確認した
ガイアが、それはもう楽しそうに笑ったのを目にしたUFZの面々が、誰からの手紙なのかと尋ねると、
「可愛い我が子達から。……あ、これだけは、僕宛てじゃなくてアグルにだね」
との答えが返ってきた。

「ガイアさんにも、お子さんが居るんですか?」
「しかも、『達』ってことは、複数か!?」
「いくつ位のが、何人居んだ?」
『離れて暮らしているのには、どのような理由があるのだ』

そう口々に尋ねてくる若手達に、ガイアは説明するより楽だからか、読み終わった手紙を
「読んで良いよ」
と差し出してきた。

他人の手紙を読むのはちょっと……。
けどよ、受け取り手が読んで良いって言ってんだし。
俺は気になっから、読むけどな。

等々のやり取りをUFZがしている間も、ガイアは楽しそうに次々と手紙に目を通しては、UFZの前に積んでいった。
その態度に、説明する気は無いんだな。と理解したUFZが―ジャンとナイトは多少まだ他人の手紙を読むことに
抵抗を覚えつつも―、各自1通ずつ手に取って目を通すと、ほとんどが「おふくろへ」とか「TO ガイアママ」、
「ガイアお母さんへ」などの文言で始まっており、中には

「どこの字だ、コレ」
「んー。どれ?   日本語だよ。達筆すぎるし、言い回しもだいぶ違ってて、君は縦書きに馴染みが薄いだろうから、
 一瞬戸惑うかもしれないけど」

なんて手紙も混じっていた。
そして、読み始めて解ったのは、

「……前に来た、ゴモラのダチの、獣電竜とかいう奴らからか?」
「そうだよ。僕は地球の大地の化身だから、地球の大地に息衝く生命は、須らく僕の子。ってことで」

だから、紫の子からだけはアグル宛て。あの子は海の子だからね。
ということで、ついこの間までアナザースペースの地球を守っていた戦隊の、相棒達からの手紙で、ゼロの
義弟のレイの相棒のゴモラ(とリトラ)と獣電竜達が古い知り合いらしく、先日向こうに遊びに行ったり、
こちらに招待して、その時何かそんな感じの話をしてた……かも?  と納得はしたが、

「アイツら、字ぃ書けたのか」
「いえ。どうも、代筆のようですね。ほら、ここに相棒の少年の挨拶があります」
『こちらも、代筆との旨が添えられている』

グレーとシアンの分は元密偵の子が代筆してて、銀がピンクの歌姫訳だから、違和感すごいね。と笑う
ガイアから見せられた、獣電竜達のまとめ役というかお父さんポジションの銀ことブラギガスからの
手紙によると、ことの起こりは一週間程前。
連休中の旅行の間のペットの世話やらイベントのスタッフやら草むしりやら鯉のぼりの設置及び片付けやらで
忙しいノブハルと優子が、ダイゴと空蝉丸に助っ人を頼み、飲食店勤務のアミィも連日バイトで、ソウジは
剣道部の遠征でイアンも用事がある。ということで、ラッキューロに子守りを頼んで、優子の娘の理香と、先日
ひょんなことから小型化した獣電竜達とで留守番をしていた際。

『りかちゃん、なにかいてるの?』
「もうじき母の日だから、ママの似顔絵と、お手紙書いてるんだよ」
『母の日ってなぁに?』
「あのねー」

という会話が、ラッキューロを介して行われた結果。帰宅や迎えに来たそれぞれの相棒に、「自分達も
お母さんにお手紙書く!」とねだったらしく、小型化しなかった4体も、他の6体―主に精神年齢低め組―に
誘われ、まぁ別に断る理由は無いし。ということで、ピンクのお嬢様が用意した各色の封筒で手紙を送ろう!
との流れになったのだという。

そんな経緯で送られてきた、ミニ化ついでに何故か精神年齢まで幼くなった獣電竜達からの手紙は、
本人(本竜?)達が話した通りに書いてあるものもあれば、書いた相棒の口調になっているものもあり、
おそらくは「おかあさんへ  ガブティラです」が「おふくろへ   ガブティラだぜ!」になっているものや、
古めかしい口調なのは書き手の口調なのか獣電竜自体がそんなしゃべり方なのか判別し辛いものなどもあった。
そんな中、金色の代わりに黄色い封筒に入っていた、毛筆縦書きの手紙以上に、ゼロには読めなかったのは……

「コレは、どう見ても日本語じゃねぇよな」
「どれどれ?   あー、うん。スルーして読んじゃったけど、そういえば英語だね。口述筆記したのを
 うっかりそのまま清書しちゃったのかな」

僕というか我夢や藤宮もだけど、別言語で会話しながら、メモだけ母国語でとったりしてると、たまに
こういうこと起きるんだよね。論文はともかく、伝言や指示のメモを日本語で書いて渡したら文句
言われたこともあったっけ。

地球=自分だから、全ての言語が解るよ。なガイアレベルになると、多重言語でのやり取りに違和感を
感じないそうで、そこまでのレベルには達していなくても、思考と口に出したり書き出す言語が違うことは、
バイリンガル以上では珍しくないとのことだった。
そして、その推測を証明したのは、文字通り十人十色の手紙にあらかた目を通し終わりそうな頃に、
青い封筒から便箋と共に出てきた、記録媒体だった。


				☆★☆

「この辺りで良いカナダドライジンジャーエール」

再生した映像にまず映っていたのは、いつもの親父ギャグを口にしつつカメラの前で手を振る、青いツナギ姿の
モジャモジャのおっさんことノッサンもとい、鎧の勇者である有働ノブハルだった。


「ビデオカメラか、ノッサン」
「うん。この間押し入れを掃除したら、出てきたんだ。多分、賢一くんが理香が生まれた頃に買った奴だと
 思うんだけど、折角だったら手紙を書いてる風景も撮って送ろうかな、って」

三脚もあったから、固定で設置して全体の雰囲気を撮る感じで。あと、その『お母さん』って、君達の言葉も
通訳無しで解るんだよね、ステゴッちぃ?  うん。解るよ。地球の化身だから。と、相棒に確認を取りつつ
説明するノブハルに、

「WAO!  Nice ideaねノッサン」
「ああ。良いあ……名案だな」

と、口々に賛同したが、

「今、明らかに言い直したよね、イアン」
「言い直したでござるな」
「間違いなく、『良い案』って言いかけたわよね、イアン」
「……っShut up!  黙れ。黙ってくれ。口が滑りかけたんだ。くれぐれも、ノッサンと一緒にするな」
「そこまで本気で嫌がらなくても良くなイアン?」

ついうっかり親父ギャグじみたことを口にしかけた黒いガンマンことイアンを、皆でいじり始めたが

「ま、良いじゃねぇか!  それより、手紙書くんだろ」
「ああ、うん。そうだね。珍しいから、ついイジっちゃった」
「キングが一番真っ当なツッコミを入れるのも、珍しいけどな」

ということで、ようやく本題の手紙を書き始めることとなった。



「便箋もペンも、色々用意したから好きなの使ってね。あ、でも、赤いティラノサウルスと
 青いステゴサウルスのイラストの便箋を見つけたから、キングとノッサンはそれね」

そう言ってアミィがテーブルの上に広げたのは、色取り取りのレターセットと、各種ペンだった。

「うわぁ、たくさんありますね。どれも可愛い。紫ベースだと、このレース柄とか良いですね。
 あ、でも、こっちの水玉模様も捨てがたいかも。ああ、けど、この和柄のも……」
「じっくり好きなのを選んでね、弥生ちゃん。あたしは……桜とウサギとマカロンなら、チビケラはどれが良い?」
『えっとねー、まかろん、ってなぁにアミィちゃん』
「マカロンは、こういう可愛いお菓子よ。今度ウッチーに作ってもらいましょうね!」
『うん!   じゃあ、チビケラはまかろんのにするー』

なんて、チビケラ(精神年齢小学生女子)を含む女の子がキャッキャしている様は、とても可愛らしかったが、

「Lady達や、恐竜柄の2人はともかく、俺達もこのファンシーなレターセットの中から選ばなきゃいけないのか」
「それに、こんなに沢山、使わなかった分はどうするのアミィさん」
「No problem!  ちゃんと使うわ、ソウジくん。それと、黒ベースはcoolな感じのを選んだつもりなんだけど、イアン」

そうは言っても、アミィがソウジに勧めたのは、クリームソーダやパフェやコーヒーなどをちりばめたドリンク柄や
メロン柄などで、イアンがいくつか手に取ってみたモノトーンの便箋は、大抵が動物の足跡や音符などが踊っている
ものだった。

「確かに、可愛らしい意匠のものが多いでござるな。拙者は、金色のあしらわれたものは、この一点のようでござるが……」
「そうなの。金と銀は、中々見つからなくて、箔押しのを一つずつ買ってみて、他は黄色と白で誤魔化しちゃったの」
「いやいや。のーぷろぶれむにござるぞ、アミィ殿。黄色のもので構わぬのなら、拙者はこの、卵色に氷菓子の絵のものが
 気になっていた故」
「へぇ。クリームイエローって、卵色とも言うんだ。で、柄はアイスのか。ウッチーらしいね。ちなみに、俺は
 コレにした。折角だし、アミィさんのマカロンのや、ウッチーのアイスのとも同じシリーズみたいだから」

「Oh my,結局クリームソーダか、ボーイ。俺は……プチサガン。任せるから、お前が選びな」
『良いの?  えっと、じゃあ、コレが、イアンぽくて良いかな。って、プチサガンは思ったの』
「どんなやつ?   へぇ、黒猫のシルエット。シンプルだし、良いんじゃないの?」
「そうだな。まぁ、悪くないか」

ということで、イアンもプチサガン(精神年齢小学校中学年)が選んだものに決め、

「ウッチーは筆の方が書きやすいかも。って思って、筆ペンも用意してみたのよ。最近の筆ペンって、色んな色があるのね」
「ヘェ〜、ペンタイプの万年筆なんだ、コレ。でも、やっぱり定番のボールペンかな」
「ノッサンは、いつも粗品のボールペンばっか使ってるもんな!」
「それじゃ、万年筆は俺が使わせてもらうかな」

などと筆記用具も各自好きなものを選び、ようやく本題の手紙を書き始めるに至った。


					☆★☆

「それにしても、俺こういうのは初めてかも。母さんに、手紙なんて書いたこと無いし」

元気いっぱい「お母さん」に語りかけるザクトりゅ(精神年齢約3歳)の言葉を、時々聞き返しながら書いていたソウジの
呟きで、一瞬場が凍りかけたが、

「俺もないな。『母の日』ってのは聞いたことあったけど、何かするのは初めてだ!」

と、母親が家出どころか素性も生死も何もかも不明なダイゴが、そんなことは一切気にせず、純粋に初めての行事を
楽しんでいる様子でいつものピースを決めた。そんなダイゴに続くように、他のメンバーも

「拙者も、戦国の世にはこのような風習は無かった故、初めての経験にござる」
「あたしも、お花やプレゼントは用意してたけど、手紙はうんと小さい頃に書いたことがあったかしらね」
「俺もここ何年かは、一応何かしら贈ってはいるが、メッセージカードは既製品で済ませてるしな」
「うちも理香が物心つくまでは、しばらく縁遠くなってたしねぇ」
「私も、ずいぶん久しぶりです」

と、口々にフォロー的なことを口にした。

「そっか。みんな結構そんなもんなんだ」
「そうそう。案外その程度ナンジャタウン」

ということで、ノブハルの親父ギャグでオチが付き、気を取り直してのそれぞれの手紙の書き方は、黄色い
某電気ネズミのように頭に乗せたミニティラ(精神年齢5歳)と会話しつつ半分以上意訳して書くダイゴに、
ひざの上に乗せたステゴッちぃ(精神年齢高校生前後)の言葉を繰り返しあまり余計な親父ギャグを入れずに
ほぼ原文ママで書くノブハル。テーブルの上に乗ったチビケラと向かい合っておしゃべりしながら文を
組み立てていくアミィに、「ゴメン。もう一回言ってザクトりゅ」と聞き返すたびに違う言葉が返ってくるので
中々進まないソウジに、小テラゴードン(精神年齢中学生程度)が話した通りに書いているつもりが時々違うと
空中からツッコミの入る空蝉丸。ミニ化していないプレズオンの言葉に耳を傾け時折質問を交えながら少しずつ
書いていく弥生。そして、テーブルの上で手元を覗き込みながら話すプチサガンの言葉をそのまま綴るイアン。
と、個性が現れていたが、

「あの、さ。イアンには、プチサガンの言葉が、英語で聞こえてるの?」
「Why?  どういう意味だ」
「いや。さっきからちょっと気になってたんだけど、イアン手紙を英語で書いてるから、もしかして英語で
 聞こえてるのかな。って思ったんだ」
「あー、ホントだね。ラッキューロは『言葉が解るようになる』としか言って無かったから、僕らには日本語に
 聞こえてるけど、イアンには違うのかぁ」
「確かに、ミニティラ達はミニティラ達の言葉をしゃべってるもんな」
「……Oh,そうか。聞こえるままを書いたつもりでいたら、そうなってたか。ということは、俺の基本はやっぱり
 Englishなんだな」

後半は独り言ちるように納得するイアン的には、日本語も英語も同等に話せるし書けるが、無意識下の言語は、
一応母国語に当たる英語のようだ。とのことだった。


						☆★☆

「あ、ねぇ。そういえば、先週のイアンの用事って何だったの?」
「発掘調査の手伝いだ。といっても、アパートだか商業ビルだかを建てる前の、いわゆる緊急調査で、結局大した物は
 出てこなかったけどな」
「ふぅん。そういうのもあるんだ」
「ああ。日本では、やったりやらなかったり、工事中に遺跡や古墳なんかが見つかっても破壊してしまうこともあるのが
 嘆かわしいが、中には建設現場見つかった重要な遺跡もあるんだぜ」
「吉野ヶ里とか、三内丸山とかな!」
「へぇ。詳しいね、キング」
「俺も、日本でじゃないけどアルバイトでやったことあるし、親父やトリンから聞いたことがあるからな」
「そういえば私も、ギリシャなどだと、掘ると遺跡が出てくるので、中々土地開発が出来ない。と聞いたことがありますね」

などと雑談を交えつつ手紙を書いていると、アミィの-モバックルではない私用の-携帯電話が鳴り、同時に時計に目を
やった弥生が
「あ、アミィさん。予約の時間!」
と声を挙げた。

「どうかしたの、2人共。これから何か用事でもあるの?」
「Yes. そうなのよ。ネイルサロンの優待券を貰ったんだけど、あたしは飲食店のバイトだから、派手な色には出来ない
 じゃない。でも、弥生ちゃんならデコらなければ大丈夫じゃないかしら。って思って、一緒に行くことにしたの」
「確かに、家事どころか日常生活も送れそうにないデコラティブな装飾は、流石の俺でもどうかと思うが、この機会に
 少し位飾り立てても可愛いだろうな」
「面白そうだな!  俺も見に行って良いか?」
「え。ダイゴさんも、一緒に来るんですか!?」
「そうね。キングが見学して覚えてくれたら、今度はキングにやってもらえて良いかも」
「よしっ、任せとけ!」
「え、え、えぇー」

いきなりのダイゴの同行の申し出に、弥生は困惑したが、そんなこと気にする王様とお嬢様な訳がなく、

「確かにキングなら、見て覚えて、アレンジまで出来るようになりそうだよね」
「キング殿は器用でござるからな」
「そうだねぇ。懐かしいなぁ。優子も、『兄さんが出来るようになってくれたら、わざわざお店まで行かなくても
 良いから』って、ヘアアレンジや着付けを覚えさせられたから、僕編み込みもお団子も、浴衣どころか晴れ着の
 着付けも出来るよ」
「そういう風に、彼女や女家族の影響で、その手のことが巧くなる男は、よくいるな」

と、残る男性陣も、アリなのでは無いかと言い出したため、3人で出掛けることになってしまった。


「ネイルサロンの後は、ヘアサロンや春物の服や靴なんかも見に行って、最後はカラオケでパフェとハニートーストの
 予定なんだけど、キングとミニティラも、そこまで付き合う?」
『ミニティラ、パフェたべるー』
「って、アミィさん。ミニティラやチビケラも連れて行くの!?」
「もちろんよ。だから、カフェじゃなくてカラオケでお茶にすることにしたんだもの」

アワアワしている弥生と、何でもアリなダイゴに代わって、ふと気になった点を尋ねたのはソウジだったが、
あっけらかんとしたアミィの答えで
「ああ。個室なら、こっそり外に出したり食べさせてもバレにくいからか」
と、何だか納得してしまった。

そんなわけで、赤桃紫の3人が出掛けた後。残った男子4人は手紙の続きを書いていたが、

「…….STOP,プチサガン。俺は、自分で自分の自慢を恥ずかしげもなく書ける程、面の皮が厚くない」
「え、ザクトりゅ、それ書かないとダメ?」
「拙者も、居た堪れなくなってきたでござる小テラゴードン」

幼児化している獣電竜達の近況報告が、いつの間にやら相棒自慢に変わってきて、それを自分で書くのはちょっと……と
黒緑金が困惑している中。ノブハルだけは特に照れたり困った様子が無かったので、ステゴッちぃは精神年齢も一番
高めっぽいから、そういうことはあまり言ってないのかと思い訊いてみると、「慣れてるだけだよ」との答えが返ってきた。

「慣れてる?」
「うん。まだ字が書けない頃の優子や理香に、こうやって代筆を頼まれたことは結構あるカラマーゾフの兄弟」

毎度の親父ギャグはスルーし、代筆はともかく自分の自慢にも慣れているのはどういうことなのか尋ねると、ノブハルは
苦笑いで過去のことを思い返し話し始めた。


					☆★☆

「あれは、僕が小学校の一年生か二年生位で、優子はまだ保育園の頃だったかな。母の日じゃなくて敬老の日に、
 離れて暮らしているお祖父ちゃんお祖母ちゃんに手紙を出すから、お兄ちゃん書いて。ってねだられてね」
「優子さん、昔はノッサンのこと『お兄ちゃん』って呼んでたんだ」
「そりゃまぁ、小さい頃から『兄さん』なんて呼ぶ程、お育ち良く無いからね僕ら」
「確かにそんな呼び方をするlittle girlは中々居ないだろうし、優子さんのイメージじゃないな」
「して、幼き優子殿にねだられた手紙の代筆に、如何なる問題が生じたのでござるか?」
「いや、まぁ、大したことじゃないんだけど、その時も始めは優子自身が、保育園で何をしたとか、休みの日にどこへ
 遊びに連れて行ってもらったとか、そういう近況だったんだけど、途中から、父さんや母さんや、僕の話になってね。
 それで、その中で、『この間、お兄ちゃんは国語のテストで30点を取りました』って……」

そこまでは、優子が話すままに一所懸命に書いていたが、その報告だけは、そのまま書いたものか、齢7歳かそこらで、
ひどく悩んだのだという。

「その頃の優子にしたら、30っていう数は、とても大きな数だったと思うんだ。何しろ、お小遣いを30円握りしめて
 駄菓子屋に行ったら、10円のお菓子が3つも買えるし、10までしか数えられなくて、10より上は『いっぱい』だった
 からねぇ」

でも、50点満点じゃなくて100点満点のテストだったから、親には怒られはしなかったけど、それを自慢げに書くのはなぁ。
って思ったんだよ。でも、優子にしてみたら「お兄ちゃんすごーい」て言いたかったみたいだから……。

そんなノブハルの説明は、一人っ子のソウジなどには、イマイチピンとこなかったが、可愛い妹の期待を裏切れない
気持ちは、何となく解らなくもない、かな?  といった感じに受け止められた。

「ああ、でも、小さい頃の優子さんにとって、ノッサンは本当に自慢のお兄ちゃんだったんだろうな」
「そうでござるな。気は優しくて力持ちで、壊れた玩具を直してくれたり、色んな遊びを教えてもらったと、優子殿も
 理香殿も言っていたでござる」
「え。いつそんな話を聞いたのウッチー」
「先日、夕餉に招いて頂いた折に、ノッサン殿の帰りを待ちながら、この折り紙と共に教わったでござる」

家族構成を詳しくは知らないが、もしかしたら兄弟がいるのかもしれない二十代組は、やけに訳知り顏で頷いており、
初めて聞く妹と姪の証言に驚いたノブハルに空蝉丸が見せたのは、

「青い、鳥?」
「左様。理香殿が、ノッサン殿に教わったものを、拙者にも教えて下さったのでござる」

他にもいくつかあるでござるよ。と折り紙細工を取り出す空蝉丸に対抗するかのように、イアンが余っていた便箋を
使って折ったのは、

「すごい。カーネーションだ。これも、どこかの女の人に教わったの?」
「まあな。ただ、LadyはLadyだが、子供の頃通っていた教会の近所に住んでいた、日本人のMadamから教わった中の一つだ」
「へえー。そんな前に教わったのを、ちゃんと覚えてたんだ。帰ったら理香にも教えてあげたいから、折り方教えて
 もらえるかな?」
「もちろん」

ということで、簡易折り紙教室が始まり、折られたカーネーションも、封筒に同封されていた。


						☆★☆


そんなこんなのやり取りの収められたビデオレターを、レイとゼロを撮影した映像を見ている時のセブン程では無いが、
「うちの子ってば可愛いなぁ、もう」
と楽しげに観つつ、手紙を再度読み返そうとしたガイアとは対照的に、映像をBGMに紫の便箋に目を通していたアグルは、
ものすごーくしょっぱい顔をしていた。


「どうしたの、アグル?」
「……」

覗き込んで尋ねたガイアに、アグルは黙って便箋を手渡してきたので、目を通してみると、2枚あるアグル宛の手紙の、
1枚目は読みやすいが少し丸みを帯びた可愛らしい女子の文字で、言葉使いも丁寧だったが、2枚目をめくるなり

"弥生が出掛ける用事があるのを思い出したらしいんで、こっからはワシが引き継ぐぞい、アグルっち"

と、それはもう達筆で書かれており、その先に続く文章も、ダイゴの代筆並の意訳と書き手らしすぎる口調で書かれて
いたが、字だけはとても達筆なのが逆に頭の痛い仕上がりになっていた。


「あー。コレは僕宛なら面白がっちゃうけど、アグルには目が滑るし、頭痛を覚えるね」

オマケに可愛い便箋も相乗効果でイラっとくるかもねー。
とのガイアのコメントに、アグルは何も返さなかったが、ほぼ同感だな。と、UFZの連中も思った。



そんな、地球の化身達と強き竜の者達との母の日エピソードに行き合った話の後。

「で、俺のおふ」

くろは?
とゼロが聞こうとするなり、セブンは脱兎の如く逃げ、後から兄弟一同+弟子達+後輩その他諸々から「往生際が悪い」と
責められただけでなく、ゼロ当人とその場に一緒に居たゴモラのみならずレイにまで、何か白ーい目で見られ、しばらく
口を利いてもらえない。との刑に処されたのだが、誰がどう考えてもというか、セブン自身でも100%自業自得だと解り
切っていたので、愚痴ることも出来なかったが、それでもまだ真相を明かす気の無いことにこそ、周囲は呆れていたとか
いないとか。
 


柳佳姉さんと盛り上がった、獣電竜ミニ化×光の国で母の日ネタでした。 アレコレ小ネタを盛り込みまくったら、ミニ電竜達の出番がだいぶ少なくなったけど、 姉さんと話した内容は書いた……筈 (1個忘れていたネタがあったので足しました) 2014.5.7 2014.5.12 一部加筆