〜家庭訪問こぼれ話〜
	「ねぇ半助さん。うちには家庭訪問来ないの?」
	「必要ないだろう。成績も学園での生活態度も、私が把握しているんだから」
	「でも、晴丸だって生徒の一人だし、あたしは単なる保護者なのにつまんない。兵ちゃんにお願いするか、
	 あたしから出向こうかな」
	「やめてくれ」

	父親が教師なおうち。土井嫁の苑(えん)さんと、元1はっ子は顔見知り


	〜鉢合わせ〜
	「姉ちゃん居る? いつものモン届けに来たんだけど」
	「……いさちゃん。この子何者?」
	「弟みたいなものです。…いらっしゃいきり丸。いつも御苦労さま。お代は前と同じで平気かな」
	「ああ、はい。一応確認お願いします。…で、こちらはどなたさんで?」
	「旦那の弟? 似てないね」
	「違いますお香(きょう)さん。私の弟代わりです。きり丸、この人は隣町の外れの旅屋の女将さんで――」
	「アレ? いさちゃんて、身寄りないんじゃなかったっけ?」
	「ええ。天涯孤独の身ですよ。だから、弟『みたいなもの』です」

	「…ああ。そういうことね。それじゃ、アタシにとっても義弟にあたるんだ」
	「??? 姉ちゃん? どういう……」

	「改めて紹介するんで、2人共ちょっと黙って聞いて。…お香さんは、留の奥さん。で、留は私のことを妹扱い
	 してくれてるから、巡り巡って君も『義弟』扱いになるの。解ったきり丸?」
	「あー、はい。何となく」
	「きり丸は私達の後輩にあたり、色々あって私と義姉弟となったんです。今日は、担ぎ屋として薬種の仕入れ
	 などを委託しているので、その用の方で顔を出したようですが」
	「ふうん。まぁ、よろしくね。きり丸?」

	お義姉さんと義弟が、同時に遊びに来た日。お香さんはこういう懐の大きいお姐さんです。


	〜二の舞?〜
	「こんにちはー、小松田さん。入門票書くから貸して?」
	「こんにちはぎんちゃん。今日は土井先生と晴丸くんのどっちに用かな?」
	「どっちも。あのね、母ちゃんから伝言に来たの。『次の休みは帰ってこなくていい』ってさ」
	「は? 父ちゃん何やらかしたの!?」
	「知らん! 何もしてない!」
	「逆に『何もしてない』のが原因なんじゃないですか? こないだ帰ったの、いつでしたっけ?」
	「不吉なことを言うな兵太夫! それなら、自分で文句言いに乗り込んで来るだろう。山田先生の奥方のように」
	「それもしたくないくらい怒ってたりして。…というか土井先生。僕もう生徒じゃないんで」
	「…妙な仮定をしないで頂けますか笹山先生。それでぎん。理由は聞いているのか?」
	「えっと『ちょっと出かけます』ってさ」
	「家出ですね」
	「笹山先生。黙ってください。また父ちゃんの胃に穴が……」

	ノリノリな笹山さん。土井嫁は別に家出したわけではない…はず。



ファイルを色々整頓していたら発掘。いつ書いたんだろう? 2010.4.1