とあるのどかな休日の昼下がり。5年ろ組の不破雷蔵が、自室の前の縁側でひなたぼっこをしながら
本を読んでいると、見覚えのある下級生が自分の方に向かって来るのが見えた。
「こんにちは、不破先輩」
「ああ、こんにちは。庄左ヱ門、彦四郎。三郎に用?」
「はい」
やってきたのは、雷蔵の相方である鉢屋三郎の委員会の後輩に当たる1年生達で、2人は実は雷蔵の
膝を枕に昼寝をしていた三郎を見ても、全く動じることなく声を掛けた。
「鉢屋先ぱーい。学園長がお呼びです」
「……ヤダ。もうちょっと寝る」
以前きり丸が雷蔵を呼びに来た時のように、三郎は雷蔵にしがみついて、半分寝ぼけた口調で駄々を
こねたが、彦四郎は
「ダメですよ。起きて下さい」
と眉をひそめただけで、庄左ヱ門に至っては
「ほら、不破先輩を困らせてないで、行きますよ」
などと言いながら、三郎を雷蔵から引っぺがして連れて行った。
「――ってことが、さっきあったんだけどね」
三郎が後輩達に連れられて行った後。委員会の当番などから戻ってきた、同じろ組の竹谷八左ヱ門や
い組の久々知兵助に、その時の話をすると、案の定2人共目を丸くした。
「膝枕されてんのにも、駄々こねたのにも動じなかったのか。そりゃ確かすげぇな」
「庄左ヱ門が妙に冷静なのは、伊助から聞いたことあったが、彦四郎もか」
「将来有望というか、末恐ろしいというか、三郎の悪影響を受けちゃってるというか……」
2人の率直な感想に、雷蔵が感心していいのか呆れるべきかと、少し悩みながら自分の意見を付け加えると、
「三郎と学園長の下だもんなぁ。それ位でないと、やってらんないか」
学級委員長委員会の面子を思い浮かべた八左ヱ門が、それに同調するように呟いた。
「あとは、慣れかもな」
雷蔵と八左ヱ門が頷き合って納得していると、ポツリと付け加えたのは兵助だった。
「慣れ? どういうこと、兵助?」
「俺らもだけど、三郎が雷蔵に引っ付いてるのは、もういつものことと化していて、多少のことなら
気にならなくなってるんじゃないか?」
「あー、確かに。それはかなりありそうだな」
直属の後輩ならば、同期の友人である自分達と同じ位、三郎の雷蔵馬鹿っぷりを目の当たりにしてきて
居るだろうから。と兵助が説明すると、八左ヱ門は思いきりそれに賛同し、雷蔵自身も何となくそんな
気がしたが、
「それでもやっぱり何だかなぁ」
などと感じなくもなかったという。
だいぶ前に書いた物の三郎(というか学級)版
動じなかった理由は「庄左だから」「慣れているから」ともう一つ
「だって、鉢屋先輩ですから(いちいち驚く方が疲れます)」
でお願いします
2009.9.1
戻