とある冬の日の朝。忍術学園の至る所で
「何だこれー」
「何が起きたんだー」
などの絶叫がこだましていた。
そんな彼らの状況を、一つずつ見てみると……
〜4年長屋の場合〜
朝。何故か着替えていないのに頭巾だけ付けたタカ丸が、
「ねぇねぇ、3人共。ちょっと見てくれる〜?」
と言って、友人達を呼び集めて頭巾を取って見せたものは、
「猫の耳、ですね」
「それは耳を模した何かをつけている訳ではなく、頭から生えているんですか?」
量の多い髪に埋もれて見えにくいが、彼の頭には明らかな「猫耳」が付いていたのだ。
「何か、そうっぽいんだぁ。……って、綾ちゃん。痛いよぉ。引っ張んないで!」
訝しげな滝夜叉丸、三木ヱ門の問いに、タカ丸が暢気に答えていると、喜八郎は遠慮なくその猫耳に触れ、
思いっきり上下左右に引っ張ったり、裏返したりしてみて
「……繋がってるっぽい。やらかくてあったかいし、僕が触んなくても、勝手に動いてる」
と、見分結果を伝えると、今度は
「え!? ちょっ! あ、綾ちゃん? 何するの??」
「耳が生えたなら、尻尾もあるかと思いまして。……無いですね」
「やめんか喜八郎!」
喜八郎はタカ丸の背後に回って、寝巻きをめくりあげて耳と対になっていそうな猫の尻尾を探そうとしたが
見つからず、滝夜叉丸の鉄拳制裁を受けた。
結局。対処法も解らないし、何やら他にもいきなり猫耳が生えた生徒がいるらしいことも判明したので、気に
しないことにして1日を過ごし、翌朝目覚めたら猫耳は消えていたが、原因も何も解らないままだったという。
〜5年長屋のバヤイ〜
所変わって、こちらは5年い組の、久々知兵助と尾浜勘右衛門の部屋。お互いに猫耳と尻尾が生えているのを
確かめあった2人は……
「黒くて艶々な毛並に、尻尾もピンとしてて、兵助に似合ってるよ」
「勘はちょっと毛足が長めで、色は三毛だな。……オスの三毛猫って貴重らしいし、いいんじゃないか?」
などと、お互いの色や毛並を説明しながら褒めあっていた。
そんな彼らと朝食時に顔を合わせ、
「ソレはどうしたんだ?」
と訊くと
「ん〜。何か、朝起きたら生えてた」
「作り物じゃないぞ。触ってみるか?」
などと暢気に返されたので
「いや、おかしいだろお前ら! もっと動じるとか、原因突き止めようとするとかしろよ」
とツッコミを入れたのは、珍しく三郎だったが、
「別に今の所特に困ってないし」
「他にも居るっぽいから、何かあったならその内判るだろうから」
そんな風に平然と返され、それ以上はもう放っておくことにしたようだった。
そして放課後。原因は判明していないが、
「おおー、さっすが獣遣い。手懐けんの上手いな」
「手懐けるも何も、ちょっと触ってみてるだけだろ」
い組部屋に集まり、兵助の耳や尻尾を、見分しているのかただ触っているだけなのか、イマイチ判別の付かない
八左ヱ門を、三郎が茶化した。
「いや、でもお前触り方上手いぞ。何か気持ちも良いし」
「あはは。何だか、言葉だけ聞いてるといかがわしい感じがするねぇ。……あ。勘ちゃん寝ちゃってる。
丸まってて、猫っぽいね」
暢気に他の3人を眺めていた雷蔵が、部屋の隅の方に目を向けると、いつの間にか勘右衛門が寝ていた。
「……勘って、丸まって寝る奴だっけ?」
「どちらかと言えばそうだけど、あそこまで目一杯丸まりはしてない筈」
雷蔵が言うように、勘右衛門は膝を思い切り折り、首をすくめ腕で顔を覆って寝ており、その様はとても
猫っぽかったが、同室の兵助によれば、普段は軽く膝や背を曲げている程度だという。
「耳が生えただけで、なりきってんのかよアイツ」
「三郎みたいだねぇ(笑)」
呆れたように言う三郎への雷蔵のツッコミは、実にその通り過ぎたので、他の連中に
「そうだな」
「お前が言うなよ」
など散々笑われても、何の反論も出来なかったとか。
〜その他の皆様〜
左近「伊作先輩に聞いた所、尻尾はある人も無い人も居るみたいだけど、お前は? しろ」
三次「みた感じはなさそうだな」
しろ「ん〜と。……あ。あるっぽい。けど自分では見えないから、誰か確認してくれる?」
三次「嫌だ。自分で鏡見ろ」(わざわざ男の尻なんか見たくない)
久「でなきゃ、風呂入った時にな」(同感。僕も嫌だ)
左近「……あるな。短くて丸い毛玉みたいなやつだ。色は耳と同じ」
しろ「ありがと」
久「左近……」
左近「何だよ。保健委員舐めんな。この程度、気にもなんないよ」
(2年長屋にて)
たしん、たしん
庄「……。猫の尻尾って、機嫌が悪いと振られるんでしたっけ?」
鉢「確かその筈だ。しかもあのゆっくりさ加減が、より一層機嫌悪げに感じられるな」
彦「……」
たしん、たしん
庄「アレ、猫耳と尻尾が嫌なのもあるでしょうけど、先輩が喉鳴るか試そうとした所為ですよ、絶対」
鉢「えー。庄左ヱ門が目の前で猫じゃらし振ったのもだろ」
たし、たし、たしっ
彦「2人共です! しかも、そのこれ見よがしなヒソヒソ話もムカつくし!」
(学級委員長)
三治「一平、孫次郎」
孫次「何?」
三治「耳とか尻尾、触ってもいい?」
一「ヤダ。ダメ」
三治「何で? さっき竹谷先輩にはなでられてたじゃないか」
一「だって、虎若が何か逃げてるの見たもん」
孫次「え? アレって、三治郎が何かした所為なの?」
三治「心外だなぁ。僕は何もしてないよ。……色々と試したかったのに、兵ちゃんの時点で、団蔵にも虎若にも
逃げられちゃったんだもん」
孫次「……折角、伏ちゃんから逃げられたと思ったのに(泣)」
三治「ろ組で耳生えたのって、孫次郎と伏木蔵じゃなかったっけ?」
孫次「そうだよ。なのに、自分の耳じゃなくて、僕の耳に興味を示して、隙があったらいじろうとするから、
今日1日怪士丸や平太に、壁になってもらってたの」
一「なのに委員会には三治郎かぁ。……災難だね」
(生物1年生ず)
伊「医務室に来た子とか目撃情報によるとね、耳や尻尾が生えた子は結構居るみたいなんだけど、みんな猫の
らしくて、犬の耳と尻尾が生えたのは君だけみたいだよ、こへ」
小「そうなのか」
伊「うん。ほら、長次も猫だし」
仙「しかし小平太には、猫よりも犬の方が似合うな」
文「そういう問題かよ」
仙「原因も対処法も解らない以上、他に何を気にしろと?」
長「……食満は?」
伊「早めに委員会に行ったよ。何か今日は、直すもの多いんだって」
(放課後6年生)
留「……七松以外にも、犬の耳が生えた奴がいたのか」
作「朝起きたら、3人共何か犬っぽい耳や尻尾が生えていて、まず左門が『見せてくる!』とか言って、
寝巻きのままどこかへ駈け出して行きやがって、そうしたら三之助も『んじゃ、俺も見せてくるか』
と、同じく寝巻きのまま左門と逆のどこかへ行きやがったので、少し悩んで俺は着替えて耳とかを
隠して探しに行ったんで、他の人とはあんま会ってないんです」
(用具1)
留「よく出来たな。流石3年生だ」
作「よして下さいよ。ガキじゃないんで、なでられても嬉しくなんか無いです。それより、次の仕事下さい」
平「……しっぽ、ちぎれんばかりに揺れてるね」
喜「うん。わんこのしっぽって、嬉しい時にああなるんだよね」
しん「ってことは、ホントは嬉しいんだね、富松先輩」
作「うるせぇ、そこ!」
(用具2)
猫の日(2/22)の2日後に、「猫耳話が読みたい」とねだられ、大まかに考えた分はどうにか全部書けたのが、ギリギリ
平成22年2月中だから、まぁいいか。という結論に達してみることにしました。もしくは、28は「ニャー」とも読める
かもしれない。ってことで。
ま、元々ねだられたのはタカ丸(4年生)だけで、それだけはさっさと書いて日記もどきに挙げておいて、他学年を
足したようなものなんですけどね。(そして生物1年生ずは、ほぼ余りを処理するためのやっつけなのは内緒です)
H22.2.28
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