01:どこから来るんだその自信
「……あー、悪い。みんな」
「どうしたの?」
「まさか、迷ったのか左近」
「そのまさか。しかも、多分とっくにこの地図の範囲じゃなくなっている」
「……。左近に任せた僕らも間違いだったな。携帯のナビで確認するか……って、圏外かよ」
「僕のも圏外。左近としろのは? 確か僕らのよりは、その辺強い会社のだよな」
「……昨日水没したばかりなんだ」
「僕は、部屋に忘れて来ちゃった。けど、大丈夫だよ」
「何を根拠に」
「地図見てた左近ですらわからなくてなった上、携帯も通じない辺りだぞ」
「うん。でも、僕この辺来たことある気がするから、多分道解るよ」
「お前なぁ、そういうのは最初に言えよ」
「ていうか、いつ来たんだよ。こんな所、マラソンの下見や走り込みにも遠いだろ」
「今さっき思い出したんだけど、前に金吾と一緒に、滝夜叉丸先輩の荷物持ちで来たんだ。
その時お駄賃としておごってもらったケーキのお店が、多分目的地だと思うよ」
「だから、そういうのは最初に言っとけってんだ!」
「落ち着け、久作。しろの記憶力のまだらっぷりは、左近の不運並だって、お前も解ってるだろ」
「……さりげに一言多いぞ三郎次」
02:気がついたら額に『肉』
「……なぁ」
「どうした、ハチ?」
「何か、さっきからすれ違うやつがみんな俺のこと
見て笑ってんだけど、どっか変なとこあるのか?」
「んー。おでこに『肉』って書いてあるからじゃないの」
「は!? いつの間に!?」
「さっき、政経の時間に居眠りしてたでしょ。その時に、三郎が……」
「私が、『コレで見逃してやって下さい』と書いたら、苦笑いで
済ましてくれたんだから、案外ノリ良いよな土井さん」
「多分、そんなお前らに対して自分はどうすべきか悩んでた雷蔵に
免じて見逃したか、疲れてたから放置しただけだと思うけどな」
「そうか。で、い組の2人は、何で教えてくんなかったんだ?」
「逆に聞くけど、何で教えなきゃいけないんだ? 自業自得だろ」
「おれは、ほっといた方がおもしろいかな。って思って」
「……ヒデェよ、雷蔵以外」
「雷蔵も、結局は『まぁ、しょうがないか』って結論に達したけどな」
「うん。ごめんね」
03:奴の授業中の挙動
三治(今日は何だと思う?)
喜(んーとー。チョークはぁ、3回連続で、すっぽ抜けて斜め前の乱太郎に直撃したしねぇ)
乱(……そうだね。じゃあ、確実な感じだと、丸めた教科書でひっぱたかれる。かな)
きり(んじゃ俺は、拳骨で)
しん(資料集とか図鑑かもよぉ)
虎(あー、有り得る。……ファイルの角は、地味に痛かった)
兵(頬をつねるとかデコピンは、最近あんまり無いよねぇ)
庄(僕が進呈したハリセンは却下されたしね)
金(それにしても、毎度毎度、いっそすがすがしい程の爆睡っぷりだよな)
「……。起きろ、団蔵!」
「はい! 毎度ありがとうございます、加藤急便です!! 集荷っすね。数は……って、アレ? 土井先生?」
「そうだ。今は、授業中だからな。それから、他の全員! ヒソヒソ話もメモを回すのもやめろと言ったら、
今度はノートで筆談か。そうか。そんなに私の授業は退屈か」
「そんなことないです! だから、宿題の山はやめてください。先生だって、読んでいるだけで頭の
痛くなるような、誤字と珍説まみれのレポートも発表もうんざりしてますよね!?」
04:「誰も気づかなかったね」「……うん」
「……アレ? 今日って、能勢先輩じゃなくて、怪士丸がカウンター当番じゃなかったですっけ?」
「ああ、うん。そうなんだけど、さっき本を返しに来た伊作先輩に、『風邪引いてるでしょ』って言われて、
熱測ったらホントに38度越えてたんで、早退させた」
「え。そうなんですか!?」
「誰も気付かなかったね」
「……うん」
「という訳で、『悪いけど、班学習は3人でやってて』だと」
05:喧嘩?漫才?
「……」
「あ、綾ちゃん。今日は滝くんと三木くん、何で揉めてるの?」
「タカ丸さん。『目玉焼きには何をかけるか』です」
「そっかぁ。昨日は、『卵焼きは甘いかしょっぱいか』だったねぇ」
「一昨日は茹で卵のゆで具合で、その前はそもそも『どの卵料理が一番か』でしたよね」
「うん。明日は、オムレツの具かなぁ」
「『オムレツかスクランブルエッグか』かもしれませんけど」
「ちなみに綾ちゃんは、どの卵料理が好き?」
「とりあえず卵かけご飯で」
「あー、良いねぇ。オレも好き」
「しょうゆの入れ方や手順で揉めるので、この2人の前では食べませんけど」
06:変質者の噂
「今日さ、委員会の時に、変な人というか、怪談ぽい噂を聞いたんだけどね」
「ほぉ。どんな噂だ」
「えっとね。確か、一昨日だったかな。に、第二グラウンドの辺りで、白っぽいものをかじってる人を見た。
って子が、何人か居るらしいんだ」
「ああ、その噂は、俺も後輩から聞いた。俺が聞いたのは、先週の話だけど」
「あ、それ多分両方俺。走り込みの後腹減ってたけど、門限過ぎてたから買いに行けないんで
食堂のおばちゃんとこ行ったら、大根ならあるって言われたんで、それもらってかじってた時に、
下級生とすれ違った気がする」
「確かに、食堂は第二グラウンド脇だな。んじゃ、先週の方は」
「駅前で、パーティバーレル買って、食いながら帰って来た時だと思う。足んなくて骨までかじったりしてたから」
「……鳥の骨は刺さるから、食わない方が良い」
「そういう問題か?」
「こへの場合は、そうなんじゃない?」
07:漫画でしか見ない点数!
「どうしたの、一平。苦虫を噛み潰したような顔して」
「……こないだの、英語の小テストの点が悪かったんだ」
「ふぅん。何点だったの? ちなみに虎若は、3点だっけ?」
「5点だよ! 3点は喜三太」
「え。何の冗談? 10点満点じゃ無かったよね」
「うん。100点満点で1ケタだったのが、4人居るんだ」
「4人も!?」
「そう。まぁ、乱太郎の0点は、終了直前に鼻血吹いて答えが全部読めなくなっちゃったからだけど」
「どうやったらそんな事態が起こるの?」
「校庭で体育の授業中だった七松先輩の吹っ飛ばしたボールが直撃したから」
「……そっか。流石不運小僧」
「で、字が汚すぎて1つも読めない上に、ローマ字で書いた自分の名前も間違ってた団蔵が、−5点」
「テストの点でマイナスって、初めて聞いた」
「それで、結局一平は何点だったんだ?」
「……75点」
「それ、悪い点なの? 僕68点だったけど、うちのクラスはみんなそれ位だったよ」
「そうだよ。うちの組なんて、最高点の庄ちゃんで70点だよ」
「ろ組はともかく、は組と一緒にするな! うちのクラスは安藤先生のクラスだし、平均点が80点だったんだよ!」
※安藤先生は発音の悪い英語教師です
08:お前本当は何歳だ!?
「数馬、袖の所何か汚れてるぞ」
「え。うわ、ホントだ。しかもコレ、血ってことは昼休みの当番の時についたのかな。
ヤダなぁ。時間が経った血痕て落ちにくいのに」
「だったら、洗う前に大根おろし乗せとけ。確か、酵素か何かで落ちる筈だ」
「うん……」
「……なぁ、藤内。前から思ってたんだけど、お前いくつだ?」
「はぁ? お前らと同い年だよ。誕生日来てないからまだ14歳だけど」
「それは解っているが、つまり作は『おばあちゃんの知恵袋っぽい』と言いたいんだろ。確かに、
霊柩車を見ると親指を隠す中学生は、そう居ないしな」
「だな。『夜中に爪を切るな』なんて、俺、ばあちゃんにしか言われたことないし」
「こないだ、茶殻まいて畳掃除してんの見たけど、アレもうちのひいばぁちゃんがやってたぞ」
「……悪かったな、年寄り臭くて」
「別に、そこまでは言ってない! それに、作法に詳しいのは、部活(茶道部)の影響だろ」
「いやぁ。小さい頃から、結構こんなだったよ」
「……どうせな」
09:この学校の七不思議
「あの、先輩。前から気になっていたんですが、うちの学校、中高一貫だし広いから、美術室も音楽室も
科学室も生物室も2つずつあるのは解るんですけど、何で家庭科室だけ『第3』があるんですか?」
「というか、家庭科室って第2と第3しか無いですよね。しかも他は大抵第1が高等部棟で第2が中等部棟なのに、
家庭科室は第3が高等部棟ですし」
「あー。それね、兵助が土井先生から聞いた話によると、先生が高等部の1年だか2年の頃に、吹っ飛ばした
生徒が居たんだって」
「それで、ひとまず急拵えで作った第3が何の問題も無さそうな出来だったので、結局第1は直さなかったらしい」
「『吹っ飛ばした』って、どうやって……」
「さぁ? 何か、好奇心と大雑把さと化学反応があわさった、有り得ない偶然の結果らしいけど」
「ちなみに、七不思議には『それでも一人も怪我人が出なかったこと』の方が入っているそうだ」
「そうなんですか。ところで、他の七不思議ってどんなのがあるんですか?」
「えーっと、山本シナ先生の実年齢と、そうじのおばさんと同一人物なのかと、だとしたらどっちが本来の
姿なのかは、まとめて1個扱いで良いんだっけ?」
「ああ。シナ先生絡みは、細分化すると1人で7つ以上いきそうだしな」
「……確かに」
「ちなみに、真相が不明でずっと変わらないのはそれだけで、後は大体理由とか原因解ってるし、年々変わってるらしいよ」
「例えば?」
「んー。とりあえず、寮の『開かずの306号室』は、鉢屋を筆頭に調子乗りすぎた俺らの所為で使えなくなってるだけ。
とか、北校舎の端の『血染めの階段』は、アクロバティックに階段落ちした上に赤ペンキ被った先輩の鼻血とペンキの
痕を学園長が面白がってそのままにしてる。何てのが、俺ら入学以降のだよね」
「後は、小松田さんが事務員を続けられていることも最近入ったらしい」
「不思議だけど、それは何か違う気がします」
「まあねぇ。ただの学園長の気まぐれだろうし」
「気まぐれと言えば、外観と室内の構造が一致せず、どこにも通じていない廊下や階段があるとすら言われている
『魔の北校舎』も、単なる学園長の気まぐれ増築の産物だそうだ」
「……流石学園長」
「その他の、いかにも怪談っぽい、『図書室の幽霊』は松千代先生だし、『西校舎の奇声』は斜堂先生の叫び声で、
『呪詛の声』は土井先生とかの愚痴だしな」
「あー、はい。言われてみれば納得出来ますね、どれも」
「え。じゃあ、『消える生徒』は?」
「「そりゃもちろん善法寺先輩」」
「校庭に掘られた穴や側溝に落ちたり、」
「廊下で曲がった直後に何かというか誰かにぶつかって転んだり、」
「その他諸々、アクシデントに見舞われていきなり姿が見えなくなったんじゃないか。って説が有力」
「ああ……」
「ところで、『七』不思議以上ある気がするのは、気のせいですか?」
「気のせいじゃないよ」
「この学校の謎が7つ程度で済むと思うのか?」
「……思いません」
「そういえば、年々変わってるって言ってましたしねぇ」
10:笑いすぎて苦しい
伝「1年は組の連中ってさ、ホント馬鹿だけど、時々あまりにも下らな過ぎて、呆れるよりも笑えることってあるよね」
左「ああ。素直に笑うのは癪な気がしたり、同類だと思われたくなくて、その場では笑えないこともあるけど」
彦「変なプライドは捨てて、笑っちゃえばいいのに」
一「そうだよ。後になって隠れて馬鹿笑いしてる方が恥ずかしいでしょ」
左「お腹がつる程馬鹿笑いするのは伝七だけで、僕は思い出し笑い位だよ!」
彦「いや、左吉。それも恥ずかしいから。良いじゃないか、君達の憧れの先輩達だって、馬鹿笑いや指を指して
笑ったりするらしいし」
伝「え。立花先輩や、潮江先輩が?」
彦「うん。仲間内とか、七松先輩や竹谷先輩に対してとか、後は立花先輩の失敗を潮江先輩が指差して馬鹿笑いして
ケンカになったりするのは、日常茶飯事だったらしいよ」
一「それ、鉢屋先輩情報?」
彦「どちらかと言えば、尾浜先輩かな。『立花先輩って、実はおれ並にゲラだよ』って言ってたから」
配布元 : リライト
元拍手御礼文
個人的には、07の生物1年生がお気に入りです
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