ある日の放課後。珍しく職員室で、保険医の新野がお茶を飲んでいた。


「保健委員の生徒達は、『不運委員』や『不運小僧』などと言われてはいますが、
それにもめげずに、頑張って仕事に取り組む前向きさを持ち合わせています。
そして特に、委員長の善法寺くんの手当の早さと正解さ。薬の効能などの知識は、
時に私を凌ぐくらいで、頼もしい限りですから」

周囲にいた教師の1人が、「医務室を開けていて平気なのか」と問うと、新野は
にっこりと笑い、誇らしげにこう答えた。
すると、対抗するように用具管理主任の吉野も、

「それならうちの委員長も、器用で面倒見も良く、文句を言いながらも与えられた
仕事は、迅速かつ正確にこなしてくれます。それに加えて、自分から率先して修理や
補修、改良なども考えて行ってくれるので、とても助かっていますよ。
アノ1年は組の子達とも、うまくやっていけていますしね」

などと、自分が顧問をしている用具委員長を評した。そしてそれを皮切りに、

「火薬委員は全員良い子たちですが、特に委員長代理の兵助は頑張ってくれてます!
本当に。しっかりしていて、とても助かっているんです。後輩の面倒もよくみてくれているし、
アメとムチの使い方もうまいし、私が指示を出さなくても、やるべきことをちゃんと考えて
くれるから、なくてはならない存在なんですよ」

「うちの竹谷も、責任感があって、明るく前向きではあるな。ただし大雑把過ぎるきらいはあるし、
ああも度々虫が逃げて問題になるのは、管理不足と言わざるをえん。…まぁ、6年が居ない割には
頑張っていなくもないんだが」

「うちの立花くんも、優秀ですよ。多少…だいぶ、過激と言えなくもないですが、一応筋は
通っていると思います。研究熱心で、自負があるということでしょう。清潔感はありますが、
潔癖というわけではありませんね。あれでいて、ちゃんと協調性もありますよ」

「一応なぁ、七松もアレでも決して馬鹿なわけではないんだ。後輩を可愛がってはいるし、
面倒見も良い方だと言えなくもないから、慕われてもいるようだしな。…ただ、何というか、
もう少し、力を抑えることと、周りを見ることと、落ち着きが必要かもしれんな」

等々、委員会の顧問をしている教師たちが、自分の所の委員長(代理含む)の自慢を始め、

「寡黙で、下級生などには少し怖がられてもいるみたいですけれど、知識は豊富で、
結構面倒見も良いです。それと、さり気ない気遣いがうまいです」

普段は人前に滅多に姿を現さない、図書委員の顧問の松千代までもが―相変わらず同じ
2年い組担当の野村の背後に隠れつつではあったが―控え目に声を上げた。


その様子を、どこの委員会の顧問もしていない山田などが、茶をすすりながら眺めていると、

「わ、我が会計委員会の委員長も、暑苦しいですし、私の高尚な冗談を解するセンスも持ち合わせて
いませんが、まぁ、まじめと言えなくもないでしょう。やる気と、責任感も一応はあるようですしね」

苦々しげな顔で、言い訳がましく安藤も自分の受け持ちの委員長について述べたが、明らかに
対抗意識と疎外感から無理やり褒めたようにしか見えなかったという。


元拍手お礼加工品 そのままなのは此方をどうぞ おまけつきです。