久しぶりに、帰宅したら何か客―異世界のアイツら―が来ているっぽかった。
	けど、その割にそこまで騒がしくは無かったんで、人数が少ないのかと思ったら、

	「……ゼロと、引き籠りにホッカイロに焼き鳥だったか?」

	居間で茶―クソ親父が淹れたのか?―をしばいていたのは、今まではオッサン共に連れて来られていた
	ゼロと、その新しい仲間たちだった。


	『失礼な。誰が焼き鳥だ! 私には「ジャンボット」という、歴とした名がある!』
	「俺も、こないだちゃんと『グレンファイヤー』って名乗ったよな?」
	「……冗談だ。ジャンとグレンとナイトで良いんだろ?」
	
	もちろん、ちゃんと紹介されたし、覚えている。変形ロボがジャンボットで、燃えるリーゼントが
	グレンファイヤー、白ラン眼鏡がミラーナイトで、それぞれ気安く略称で呼べって言われたことも、
	忘れてねぇけど、親父達から聞いた表現の方がインパクトが強かったんで、ついそっちが出たんだよ。

	「ええ。……君は、『ミコト』で良いんだよね?」
		
	ミラーナイトの口調が、少し硬いけどギリギリでタメ口なのは、初対面の時は敬語だったのを、ゼロが

	「尊は俺の…友達で、お前らも、……似たようなもんなんだから、敬語とかいらねぇよ。な?」

	と言って改めさせたからなんだが、しばらく会わないでいる間に、成長したというか前よりデレるように
	なったというか、まぁどっちでもいいけど、とにかく変わったもんだ。俺のことを「友達」と言い切るのは
	照れがあるようだし、新しい仲間の3人のことも、ホントは「友達」と言いたいのに言えない。って感じに
	見えた辺りも、年相応の青さが感じられて、父親のセブンとかオッサン達なんかが、喜んでそうだな。


	「……で、お前ら今日は何しに来たんだ? お前らの他にも、誰か来てんのか?」

	微妙な距離感を、ニヤニヤ眺めてんのは、うちの妖怪親父共と同じようで嫌なんで、速やかに話題を
	変えて―というか、コレが一番重要だし―訊くと、

	「異次元間移動の訓練の一環として、ひとまず道の通じているこの世界と、しばらく行き来をしてみたら
	 どうかと、君のお父上から提案されてね。念の為、ダイナさん達にも一緒に来ていただいている」

	……。どこからツッコミ入れれば良いんだ? 「異次元間移動」は、ミラーナイトの能力と光の国の学者
	連中の研究の合わせ技とか、まぁそんな感じだろう。ってことで良いとして、「道」って何だ「道」って!
	アノ妖怪共、それを気安くあっちに顔出したり、こっちに客連れて来んのに使ってんのか!? だとしても、
	どうやってそんなもの……。あと、ダイナって他は誰で、姿が見えないけど今どこに居るんだよ。
	等々考えていたら、玄関のドアが開く音が聞こえた。


	「ただいまー。……みこっちゃんも帰って来てるみたいだね」

	いつも通りの、飄々とした調子で帰って来た親父の手にはスーパーの袋が下がっていて、どうもゼロ達に
	留守番をさせて、買い物に行っていたらしい。そして、荷物持ちに借り出されたのは、ダイナと

	「お帰り、尊くん。何というか、色んな意味で毎回ごめんね」
	「いや、別に。そっちこそ、お疲れ様っす」

	自由に時空を渡れるらしいが、どうしようもない方向音痴なダイナの、お守り役と化している―と口に
	出したらキレられそうな―ティガだった。



	「さて。それじゃ、経緯を説明してもらおうか」

	買ってきた食材―折角なんで、今日はカレー鍋にするらしい―を冷蔵庫に仕舞い終えた後。夕飯の支度までは
	まだ時間があったので、親父を問い詰めてみたら

	「んー。だから、ナイトくんが言った通り、私達が行き来してる間に、目には見えないけど道っていうか
	 糸みたいなものがこの世界と向こうの世界に繋がったんで、それを辿れば迷わないかもよ。って言って
	 みたら、ぞふぃくんが試してみることにしたみたいでねぇ」

	との、説明になってんだかなってないんだかよく解らない解説をされた。

	「ああそうかよ。ダイナ達まで来ている理由は?」
	「えーと、保険」

	薄々察しはついていたが、万一ミラーナイトの力が足りなくなったり、別の世界に迷い込んで道を見失ったり
	戻れなくなったりした場合の為に、次元を渡れる先輩として同行するよう命じられたが、本人が迷子なので
	逆に危険が増す。ということでお守り役も巻き込まれたんだろう。そう思ったら
	
	「僕は、保険の保険というか、引率もしくは監視かな。……この馬鹿、一番大切な人を次元の狭間に落とした
	 前科があるし」
	「は?」
	「コイツはね、最終回でブラックホールに飲み込まれんだ。で、その時に半身のアスカを見失ったんだよ」

	ブラックホールに飲み込まれたことと、アスカがどこか解らない宇宙を、宇宙で行方不明になった父親と
	並んで飛んでいるシーンがあったのは公式なので、そういう解釈になったらしい。けど、確かにそれは
	同行者が居る場合は、迷子並かそれ以上に危険だな。

	「他の世界で、ふつーに暮らしてるアスカは、何人か見つけたけど、肝心の俺らの世界のアスカは、まだ
	 見つけられてないんだ」

	そうやって、自嘲気味に笑うダイナの気持ちは、ほんの少しだけ解る。
	世界は同じだけど、時代も関係も―人によっては性別も―違う「前世の知り合い」が居て、確かに俺は
	その人達のことを知っているのに、向こうは何も覚えて無くて、俺に気付かない。そういうもどかしさと、
	異世界の同一人物に出会うのは、似た感覚だろうからな。

	……まぁ、かといって、元ストーキング対象を再度ストーキングしようとしている、クソ親父の所業には、
	絶対に共感しないし認めやらないけどな。




「尊もナイト達も友達だ」と、口に出せないけど思ってるゼロを書こうとした筈が、 何か違うことに…… 文中にも書いた通り、ダイナとアスカの関係は、公式を踏まえた捏造ですが、 カノウ的解釈というか設定ではそういうことになってます 2011.2.24