今日も今日とて、帰宅したら何か客の気配がしたのは―不本意ながら―、もう慣れた。
	けど、居間で親父とダベっていた4人の男は、何となく見覚えがあるような気がしなくも無かったが
	知らない奴だったので、「今度はどこの誰だ」と訊いたら、

	「今日からうちにホームステイさせることになったランくんと、すぐそこのアパートに越してきた
	 留学生のナイトくんと、ナイトくんの親戚のジャンさんと、ついでに出稼ぎ外国人のグレンくん」

	……。つまり、いつもの姿ではなく、別の誰かをモデルにした人間体の、ゼロ達。って事だな。

	「そういうこと。ランくんは、お父さん日本人だから日本語解るけど、外国育ちなんで日本のこと
	 よく知らなくて、ナイトくんとジャンさんは片言程度で、グレンくんは日本語さっぱり。って
	 ことにしてあるから」
	
	その設定に何の意味があって、そもそも何でうちにホームステイさせるんだよ!?

	「んー。ゼロくんが、地球でレギュラー番組やることになったから、いちいち光の国から通うよりは
	 楽かも。ってことで、他の3人はついで」

	コレは、どこからツッコミを入れるべきだ?

	「……番組の話は良いとして、次元違うだろ」
	「それがねぇ、『このネタ限定で、同じ次元ってことで☆』だって」

	ああそうかよ。そんじゃ次。

	「いきなり中坊……だよな? を居候させんのや、外人が出入りすんのを近所にどう説明する気だ。
	 あと、コイツらどこの国の人間設定だよ」
	「とりあえず、4人共国連に加盟してなくて地図にも載ってないような小さな国の人。ってことにして
	 あって、ランくんは研究員なお父さんとアマノちゃんが知り合いで、苗字おんなじだから親戚かも。
	 ってことでうちで預かることになって、ナイトくん達は言葉が通じなくて困ってた所にたまたま遭遇
	 して、日本語を教えてあげることになった。ってことで」

	後で聞いた詳しい設定によれば、ゼロ―ことラン―は母親は物心付く前に死んでて、学者な父親と2人で
	暮らしていたが、親父は研究が忙しくてあまり構われたことが無く、ナイトは育ちが良い上に祖父さんが
	日本人なんで、妙に丁寧で古臭い日本語が少しだけ話せることになっているらしい。ついでに「ゼロ」や
	「ナイト」はあだ名やミドルネームってことにしてあって、「諸星ラン」と「鏡(ナイト)京介」とかいう
	日本名をつけてみたと、自慢げにほざいた親父がウザかった。
	……。何というか、所々事実っぽいものが混ざってんのがまたウザい設定だな。さっきも思った通り、
	ここまで作り込むことに何の意味があるんだよ。

	「うちに居る間は、折角だから学校にも通わせてあげようと思ったから、周りに何か訊かれてもボロが
	 出難い設定にしてみたんだけど」
	「……まさか、通わす中学って、自分の勤め先じゃないだろうな親父」

	折角なんで経験を積ませてやる。という発想は、まぁ良いとしよう。必要書類や何かをでっちあげられる
	ことも、身を持って―戸籍を偽造出来るから、結婚して今の俺が居る訳だし―知っている。けど、近所の
	中学ではなく、この妖怪クソ親父が勤めている中学に通わす。ってのは、聞き捨てならねぇんだが。

	「そのまさかだよ。余所に通わせるよりは、フォローし易いし。ちなみに、ナイトくんはお前と同じ
	 高校で、学年も一緒にしておいたから、よろしくね☆」

	てことは、当分の間俺は、家ではゼロ。学校ではナイトの、フォローをしたり、何かと教えなきゃならない
	ってことか?

	「大丈夫。メビウスくんに比べたら、断然楽だって。それに、弟分が増えるのは嬉しくない?」

	……確かに、メビウス程天然ですっとんきょうではないし、今世では1人っ子で、前世でも下っ端な内に
	死んでるんで、下が出来るのは悪い気はしない。けど、そういう問題じゃねぇだろ!

	「でも、もう決まっちゃった話だし、当面の生活費や必要経費の支払い用に。って、通帳も預かっちゃって
	 いるからねぇ」

	そう言って親父が見せた通帳は3通あり、それぞれに「モロボシダン」「おおとりゲン」「矢的猛」の
	名義になっていた。

	「父親に師匠に先生。って、解るような解んないような出資者だな」
	「ああ、それは、単にそれなりの額の残金があって、自由に使えるのがこの3人なだけだって。
	 特にレオくんと80くんは、副業や前職があったから、結構貯金あるみたいだよ」

	曰く、ハヤタ(マン)は別人だし、郷(ジャック)は義理の弟に全部遺したとかで使えず、光太郎(タロウ)は
	ミライ(メビウス)の連帯保証人として弁償中で、北斗(エース)は残金が微妙なんだという。……って、
	そのリアルさも無駄な気がするのは、俺だけか?
	

	とまぁ、そんな訳で、居候と同級生が1人ずつに、しょっちゅう顔を出す近所の外人2人が増えた生活は、
	正直今までも変な客―アマノんとこの奴らや光の国の連中―に頻繁に出入りされてたんで、そこまで劇的
	には変わらなかった。けれど、ナイトと顔見知りで家が近くてしょっちゅう家に来ていることをクラスの
	女子に知られた時の反応は、予想外に激しかった。
	何しろナイトは、物腰もしゃべり方も上品で顔も良いんで、早々に女子に人気が出たが、元が引き籠り
	気質な所為で、うまく打ち解けられず、日本語が不自由なことになっているのを利用して、俺に助けを
	求めてきやがったりしたからな。




	俺の平穏な日常を返せ。と言いたい所だが、アノ妖怪の息子に生まれ変わって来た時点で、端から
	「普通」ってものとはかけ離れた日常しか無かった訳だし、前世もかなり色々おかしかったんで、
	今更なんだよな。




3周年記念 柳佳姉さんリク 転生タソガレドキ中心で、ゼロ達の出番殆ど無くてスイマセン。一応、ナイトくんだけちょこっと 加えといたんで、ひとまずコレで見逃して下さいませ 2011.7.7