3月半ばの週末。居候な中坊に、買い物に付き合って欲しいと頼まれた。
土曜はバイトで、日曜はクラスの女子達に強請られたホワイトデーのクッキー作りをする予定だったが、
菓子作りの方は1日仕事ではないし、個別の袋詰を月曜の帰宅後にすれば時間は取れる。
ということで、ひとまずどこまで何を買いに行きたいのか訊ねると、
「ホワイトデーのお返しって、何を買えば良いんだ?」
と問い返された。
「クラスの女子から、義理チョコでももらったのか?」
「それと、親父達とか……ナイトからももらったし」
どうも―地球人に擬態してはいるが宇宙人な―ゼロに日本版バレンタインデーを教えた連中が、ついでに
ゼロの仲間達にも「友チョコ」の概念だけ教えたらしい上に、俺の高校に編入しているナイトは、クラスの
女子辺りからも色々吹き込まれたようで、既製品とはいえキッチリ人数分買って来て、俺ももらった覚えが、
言われてみれば無くも無い。
「……とりあえず、学校用と家族用は、俺の手伝いするならクッキー余分に作ってやるから、それで
良いんじゃないか? んで、ナイトの分は別の何か用意したいってんなら、買い物につきあって
やらないこともないが、どうしたい」
どうせナイトのお返し分も俺が代わりに作るんだから、量が1.5倍になろうと対して変わらないし、本音を
言えば―バレンタインデーよりはマシだが―ホワイトデーの特設コーナーにもあまり近寄りたくないので、
全部手作りで済ませて良いならその方がありがたい。
「…………ナイトのも、同じで良い」
「そうか」
しばし悩んで答えたゼロに、コンビニで見繕うという。手もあることを教えなかったのは、参考意見を
求められるのが面倒だったし、その様をまた誰かに目撃されてネタにされんのが嫌だったからだ。
そんなこんなでホワイトデー当日。
いっそ既製品よりも手作りを渡すことの方がこっぱずかしいことに気付いて、渡すに渡せなくなっている
ゼロに、ネットで購入した―どうもタロウ辺りの入れ知恵らしい―ギモーヴ?とかいうのを何の気負いも
無く渡すナイトの様を、妖怪共が生温かく見守っていたのがキモかった上、何か動画を撮っていたっぽい
のでツッコミを入れたら、ゼロの親父のセブンに頼まれたと答えたが、まさか本当は腐女子の姫さんの
依頼じゃないよな?
オマケ
「うまそうなマシュマロだな。誰にもらったんだ?」
「……師匠。しかも手作りらしい」
「え゛。どっちのだ?」
「レオ師匠の方。マンや親父と一緒に作ってみたら、案外楽しかったって言ってた」
「そうか……」
挙げ忘れていた突貫WD話でしたw
2012.3.17(3.24)
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