俺んちは、星人だの怪獣だのの溜まり場では無いし、何で俺がそういう奴らの相談に乗ってやらなきゃ
	ならないんだ。とも、嫌になる程言ってきた。
	にも関わらず、今日も俺―諸星 尊(17)―が帰宅したら、うちには―人型こそとっているが―、顔馴染みの
	日本語というか人間の言葉が不自由な宇宙忍者と、そいつの知り合いだとかいうおっさんとカマの、星人
	3人組が来ていた。しかも、悩み相談ではなく、何故か雑談をしに。
	でもって、その雑談内容ってのが、

	「ジェントって、アンタの身内にしては相当良い男よねぇ、メフィラス」
	「確かに彼は、私の一族の中でも成功している方だな」

	何か、「プラズマソウル」という宝石だか鉱石を持った怪獣を倒して、その石を集めている「ハンター」
	とか呼ばれてる連中の話で、今日来ている3人―バルタン、ダダ、メフィラス―の同族も居るらしい。
	って、アレか。こないだターバンが勧誘しようとしてた、バルタンの義妹狙ってるとかいう奴と、その仲間か。
	メフィラスは、司令官ポジションみたいだけど。


	「ふぉふぉふぉ」
	「え、何。『スライとは大違いだな』? ホントねぇ。バレルも、シルビィちゃんのパパ以来の、クールで
	 出来る良い男だし、ガルムもガッツなのに何だか格好良いし。良いわぁ、ラッシュハンターズ」
	「ふぉふぉふぉふぉふぉ」
	「『キャンペーンのイラストのダダも、ダダとは思えない位格好良かったし』か。確かに。性格や立ち位置は
	 まだ不明だが、少なくとも『隊長の1日』のダダと同族とは思えん雰囲気だったな」
	「ああ、あのゾフィーにハグを贈ろうとしたのは、アタシのいとこよ。…ダダにはね、一握りの漢と、乙女
	 しか居ないのよ」

	……それは、ドヤ顔で宣言するような内容か? あと、「アタシはゾフィーなんかより、断然ティガさんね」
	とかいう補足も、誰も聞いてないし。


	「ところでさぁ、みこっちゃん」
	「その呼び方はヤメろっつってんだろクソオヤジ。前世云々差っ引いても、高校生の息子を、父親がちゃん
	 付けすんな」
	「そこの戸棚に入ってたお煎餅、食べたよね、お前」

	毎度の苦情は無視か妖怪。あと、煎餅食ってたらなんだよ。また何か怪しいもんでも入ってたのかよ。

	「いやぁ。お煎餅自体は、ふつーの、職人さんの手焼きの美味しい醤油煎餅だよ。そこの3人の手土産なだけで」
	「焼いたのは地球で修行したどこぞの星人だそうだが、こちらの奇怪な味の茶の方と違い、まともに美味かったな」
	「お茶も、私は嫌いじゃないよ。医務室の薬草茶の方が、よっぽどクセが強かったし」

	茶って、もしやアノ台所の隅の方にある箱の中の、赤青黄色のどぎつい三原色のパッケージのペットボトルの
	ことか? 確かに、よく見りゃ「眼兎龍茶」とか書いてあるけど。

	「我々の知人の星の名産品でしてね。彼は煙草も扱っているのですが、それは流石にやめておきました」

	怪獣…じゃなかった、懐柔するには物で釣るのが最も手っ取り早い。てな、おっさんーメフィラスーの
	理屈は、まぁそんな大筋では間違っちゃいないとは思うが、どういう魂胆だ。あと、
	「……少々とうは立ち過ぎているが、まだ辛うじて子供の範疇か」
	とかいう呟きも、どういう意味だよ。


	「流石に、お煎餅に釣られて『地球をあげます』って言っちゃう程、残念な元部下でも息子でもないと
	 思いたいけどなぁ」
	「しかしまぁ、物は試しと言いますからね。…この醤油煎餅の他にも、各種煎餅の詰め合わせと、眼兎龍茶を
	 定期的にお送りしますので、代わりに『地球をあなたにあげます』と――」

	誰が言うか。何だその、ガキでも応じないような不利な取り引き。そんな安い奴だと思われたってことか。

	「ごめんなさいねぇ。コレ、コイツの持ちネタなのよ。でも、歴代の中では結構出来る方なのよ、これでも」
	「ふぉっふぉっふぉっふぉっふぉ」
	「息子の話はしないでもらえるかね。私もメトロンも、息子の育て方を間違えたとは思っているんだから」

	メトロンてのはこの胡散臭い茶を扱っている星人で、公式でちゃぶ台越しにセブンと対話したことがある
	シュールな奴で、メフィラス共々詐欺師枠らしい。って、他にも居んのかその枠……。

	「星人にも色々居るみたいだからねぇ。……ああ、そうだ、尊。この煙草もお茶と一緒に試しに貰った
	 やつだけど、お前は吸っちゃだめだからね」
	「未成年だからかよ。ホント、どうでも良い所で常識人で親ぶるよな」
	「いや。人を凶暴化させる成分が含まれているからだそうだ」
	「じゃあ何でお前らは吸ってんだよ」
	「我々は、天然の毒物はほぼ効かず、化合物もあまり効かんからな」
	「伊達に元忍じゃないからねぇ。あと、アマノちゃんの場合、効いても3時間で蘇っちゃうし」

	……。クソ。普段は忘れてっけど、この妖怪共、室町の世から生きている元―ターバンはある意味で
	現役の―忍者だから、毒の耐性なんざあって当然か。でもって、俺も前世は一応忍で毒に対する訓練も
	受けてはいたが、一旦死んで生まれ変わってっから、この体では耐性無いもんな。

	「ところで、本題は良いの? お煎餅とお茶は、その頼みごとの為の賄賂でしょ」
	「あら、そうよね。ダメじゃないのよメフィラス。条件反射で本来の目的を忘れたりしちゃ」
	「……今話そうとしていたところだよ」
	
	そういって俺に向き直ったメフィラスは、「君に頼みがある」と切り出した。

	「先程、ラッシュハンターズの話はしたと思うが、その中の1人のマグナという男が、近い内にこの家を
	 訪れるかもしれないので、その際には少々口の利き方と戦い方の特訓に付き合ってやってはくれまいか」
	「は?」

	詳しく聞けば、こないだそのラッシュハンターズの連中が、光の国に少し迷惑かけたとかで、その侘びも
	兼ねて、(会計は全部マグナ持ちで)ウルトラ兄弟とUFZの連中と飲んだ時に、何か俺の話が出たらしく、
	ツンデレヤンキーな中坊のゼロの奴に敬語教えたり、たまに体術の相手してやってる。ってのを後日訊いた
	ジェントって奴が、
	「折角ですから、マグナもその少年に教えを乞うてみたらどうですか」
	とか提案しやがったらしく、当人がいきなり出向くよりも、面識のある奴を間に挟んだ方が良いだろう。
	ってことで、この3人が仲介役に来たらしい。

	「そのマグナくんて子は、グレンくんとかのご同類らしいよ」
	「要は、力押しで調子に乗った、お笑い担当とのことだ」

	後から、グレン当人を含むUFZの連中―最近は、居候はしていないが、地球に来るとうちに転がり込む率が
	高い―に訊いた所

	「そうそう。見た目も声もノリも俺そっくりで、『兄さ〜ん』て言われた時は、マジに俺の弟かと思ったけど、
	 マグマ星人なんだってな」
	「……アノ『兄さん』の言い方は、アストラ師匠の真似かもしんねぇってタロウ教官とかが言ってた」
	「まとめ役のガルムさんという方の指示を聞かず、特攻して失敗するらしい所もそっくりで」
	『チームのメンバーを名前で呼ばない所なども同じだったな』

	なんて証言が得られた。それだけでも充分面倒で厄介だってのに、更に追加で

	「そういや、ダイナから『ティガが、自分の姿で無様な戦いっぷりだったギンガに実は結構キレてっから、
	 タロウ兄ちゃんがギンガも尊んとこに身のこなし習わせに行くべきか悩んでた』って言ってたぜ」

	と、ゼロから言われた。
	そのギンガってのがどこのどんな奴かは知らないが、何にしろ「メンドくせぇ」と「何で俺が」が
	率直な所だが、俺に拒否権なんか一っ欠片もないんだろ、どうせ。





姉さんから久々に尊ちゃんをねだられた&ジェントさんマジカッコいい と合わせた結果、何か訳解らんことに 一部姉さんちのネタを踏まえているのは、最近の我らにとっては「いつものこと」ですから…… 2013.10.12