異世界からの居候も元の世界に帰り、妖怪クソ親父とその同類は相変わらずで、たまに妙な客が勝手に
	訪ねて来たり、電話相談室もまだ続いているが、まぁそれなりに普段通りの、そこそこ平凡な日常が
	戻ってきたある日。
	「ちょっと演習に付き合ってもらいたいんだよね」
	と、今まであまり関わり合いの無かった、地球の大地の化身とかいう奴から依頼があった。


	「は? 演習? 俺に?」
	「そ。前にゼロ辺りからちょっと話行ってるかもしれないけど、うちのお姫様が、自分の姿で無様な戦い方
	 されることにイライラが募りまくってるみたいでね。ここはちょっと荒療治的演習をしようか。って話に
	 なったんだけど、僕は元凶だからお手本役は出来なくてさ」

	大地の化身ことガイアは、その日の気分とノリと勢いで、上司兼友人であるティガのことを、お嬢、姫御前、
	おひぃさま、女王陛下、麗しの分隊長殿、等々好き勝手な表現で呼ぶが、大抵女性に対する呼称で、必ず
	「うちの」とか「僕らの所の」とか「我らが」等の冠詞が付いているのだという。
	そして、無様な戦い方をした新人ことギンガの、着地時の砂煙はガイアの特徴でもあったので、ガイアでは
	見本にならない。というのは、解らないでもないが、だからって何で俺。と再度訊ねると

	「今回は、ギンガ以外にもゼロとマックスも参加させる予定でね。ギンガにはティガが直接当たるし、
	 マックスの相手はコスモスに頼んだんだけど、他にあのフィールドで効果的に戦える若手が居なくて。
	 昭和組の皆さんもねぇ、多分あんまり向いてないんだ」

	って、どんな舞台なんだよ! そう返したら、「それは当日のお楽しみってことで☆」と押し切られ、事前に
	妖怪クソ親父が許可をだしていたらしく、結局手伝わされる羽目になった。




						★☆★


	「――床一面に、衝撃を与えると電流の流れるパネルが敷いてあって、掛かった圧に比例して流れる電流の
	 強さも変わる仕様になっているこの部屋で、制限時間3分で闘ってもらって、総ダメージが少ない方の勝ち。
	 っていう単純ルールだよ」

	当日。顔合わせをして、軽く双方の紹介をされた後。ガイアの説明を聞きながら、俺が呼ばれた理由が
	何となく解った。確かに俺なら、この部屋でも、ダメージをなるべく食らわないような動きが出来る。

	「要するに床に足付かなきゃ、電流は流れないんだろ」
	「その通り。ふつーのコロセウムを1つお借りして、床にパネル敷いただけだからね。飛び道具や光線の
	 使用は一応可で、壁や天井には何の細工もしてないよ」

	俺の言わんとすることを解っているっぽいガイアの返しに、飛び道具アリなら楽だな。と思いながら、
	電流の入/切はスイッチ式だとかで、スイッチを入れるまでは問題なく歩ける床の中央まで向かい、
	「ハンデとして光線もスラッガーも使わないでやるぜ」
	とか余裕綽々なゼロを鼻で笑いながら向き合うと、スイッチが入れられ、開始の合図と同時に縄標を真上の
	照明目掛けて投げ、巧いこと巻き付けると、勢いをつけて振り子の要領で壁まで行き、縄を掴んだまま
	壁を駆け上って天井近くまで行くと、照明に飛び移りその上に座り込んだ。
	すると、一瞬面食らっていたゼロが、我に返ったように俺目掛けて飛び上がって来たので、逆にゼロ目掛けて
	垂直に飛び降り、加速の付いた蹴りを食らわし、そのまま空中で羽交い締めにし、地面に着く寸前に一瞬離れ、
	再度蹴りを食らわせて先に落とすと、ゼロをクッションにする形で着地した。
	その結果。背面強打+強電流を食らったゼロは、もちろん一発KOと相成り、あっさり俺の勝利となった。


	「すっげー。さっすが忍者!」
	「この人、忍者なのか!?」
	「元、な。今は単なる、人より少し身軽な高校生だ」
	「そっかー。俺と同じ位の年なのに、すごいな」

	一応始めにガイアから説明されたのに、聞いてなかったのか、もしくは耳を素通りしてたのか。某学園の
	1年は組並だな。という、多分ここに居る連中には通じない嫌味は飲み込み、ギンガこと礼堂ヒカルとか
	いう奴は、メビウス系の素直な若造なんだと解釈し、
	「ある程度の身体能力さえあれば、そんな難しいことはしてねぇよ」
	と返す程度にしておいたが、出来るもんならやってみろ。という思いも、少しだけあった。
	

	「確かに、ダイゴの知り合いにも、壁走り出来る地球人居るしね」
	「へぇ〜そうなんだ。俺も、練習したら出来るようになるかな」
	「さぁ? どうだろうね」

	ダイゴの知り合いって、あれか? 某SPで図書館員でゼロ戦乗りの軍師なアイドルか? って、サラッと
	メタ発言すんなよな。
	そんな俺の心のツッコミには気付かず―ティガは気付いていて黙殺していた可能性もあるけど―、ギンガは
	続く第二試合。マックスvsコスモスが始まるから見ようぜ。と声を掛けてきた。
	その対決は、結果だけ言うと、

	「ゼノさん! コスモスの、あの浮くのズルくね?」
	「仕方ないでしょう。アレが、コスモスの特性のひとつなんですから」

	ということで、浮いたまま後退だの、太極拳的な動きのコスモスの方が、身はそこそこ軽いが派手な動きも
	多いマックスよりも、食らったダメージが少なく、判定勝ちとなった。

	「てか、お前らウルトラマンなんだから、人間の俺と違って飛べんだろ」
	「あ!」
	「……気付いていなかったんですか。本当に、救いようのないお馬鹿さんですね、貴方は」

	俺が、何のために落下の加速を利用したり、空中で動きを封じたと思ってんだ。飛ばれたら勝ち目ねぇから、
	さっさと片を付けたに決まってんだろうが。
	その辺りを綺麗さっぱり失念していたマックスに呆れつつ、本日のメインイベント。ティガが、ギンガに
	どう力量と動きの差を見せつける気なのかに注目の、第三試合が始まった。



						★☆★


	まず、開始早々の飛び蹴りは、ティガの定番だそうで、倒れ込んだギンガをそのまま足場にして自分は
	床に足を付かなかったのは、俺を参考にしたのか元々の計画かはわからないが、ただの蹴りと多少の
	電流程度では、KOまでは至らなかった。
	続くギンガの反撃の拳をひらりと避け、逆に肩に手をついて逆立ちの体勢に入ったかと思うと、軽く勢いを
	つけ、鉄棒の大車輪の如く半周して蹴りを食らわせると、すぐに離れて空中で一回転して体勢を立て直して
	から静かに床に降り立った。そして、起き上がって向かってきたギンガの勢いを利用して投げ飛ばしたり、
	その場から動かずラリアットを食らわせたり、攻撃が当たる寸前に飛びあがってギンガの肩や頭上に着地
	したりと、ほとんどがギンガの攻撃の勢いを利用した身軽な動きばかりで、床の電流のダメージはおろか、
	攻撃もほとんど食らわず、体力消費も最低限。とどめは、静かに降り立ち黙ってゼペリオン光線。という、
	完全勝利を収めていた。


	
	「くっそー、負けたー」
	「僕に勝とうなんて、3000万年早い。少なくとも、綺麗なバク転と飛び蹴りが出来るようになってから
	 出直して来い」


	素人の高校生相手に、そこまでむきになって完膚無きまでに叩きのめさなくても。と、ガイアやダイナに
	苦笑されたが、

	「僕の肉体は、これだけの動きが出来ることを証明しただけだ。ガイアだって、自分の作ったメカが、機能を
	 充分に発揮した使用をされていなかったら、実演するだろう?」
	「あー、うん。そうだね。宝の持ち腐れは良くないね」
	「確かに、ティガの動きは無駄が少なくて綺麗だもんなぁ」

	ということで、ヒカル及びその友人達には、もっとスタイリッシュな戦い方が出来るよう、精進しろ。
	との課題が課せられたが、流石にそのコーチ役は引き受けねぇからな。と、先手を打って宣言したら

	「ちぇー、残念。でもまぁ、ティガ本人とかコスモスが教えれば良いし、ナイトくんなんかも動き綺麗だしねぇ」

	と、割とあっさり引き下がってもらえた。
	だがしかし。その後しばらく、ティガやコスモスに勝負を挑んでコテンパンにされたゼロやマックスや、
	時々メビウスなんかが、特訓に付き合えとやってくるようになった。そのこと自体がまず迷惑だし、俺が
	断った代わりにクソ親父やターバンが気紛れに相手してやってんの何か見ると、腐りきっていても2人共
	元忍者隊首領で、俺なんかとは雲泥の差だということが嫌という程解って悔しいが、だからといってアノ
	妖怪共に対抗して、修行し直そうなんて思いたくもない。
	たしかに俺は前世の頃から相当な負けず嫌いだが、ここで対抗意識なんか燃やしたら、妖怪共の思う壺だろ。
	俺をイジるため以外に、アイツらが光の国の連中にマトモに稽古つけてやるなんて、思える訳ねぇし。




約半年ぶりですか。このシリーズ書くの。 ヒカルや健太のティガさんの姿でドタドタした戦い方するのに憤慨しているのは私ですが、 ゼロもギンガも、街を壊さない動きを学習すべきだと思うんですよね 2014.3.16