ある日いきなり

	「ぞふぃ君達に、たまにお前にレイちゃんやゼロくんやメビウスくんに常識教えたり、相談にのってもらえたり
	 すると助かるって言われたけど、お互い行き来はめんどくさいんで、回線繋いどいたから」

	とか親父がほざきやがった。しかも、固定電話じゃなく俺の携帯に繋いだらしい。

	「どうやって!?」
	「内緒v」
	「キモッ」
	「お前、相変わらずお父さんにヒドイよねぇ。まぁ、でも、ともかくそんな訳で、電話掛かって来たら相手して
	 あげてね」

	……要は、光の国とアマノんとこの組織の技術か何か使って、俺の携帯に細工しやがって、無駄に超高機能
	なのに、用途は子供電話相談室ノリ。とかいう、しょうもない話なわけだな。その上、実際に掛かって来た
	電話はガキ共からよりも、面白がって掛けて来た若手―ガイアとかダイナとかマックスとか―や、いい年
	こいた息子達に構ってもらえない親父辺りからの、どうでもいい相談の方が多かった気がする。

	そんな訳で、成り行きで妙な相談役にされてしまった数日後。マンから
	「レイやゼロに、言葉遣いを少しでも指導してもらえると助かるんだけど……」
	との相談というか依頼をされた。……確かに、目上の相手に一切敬語が使えないアイツらの言葉遣いは問題が
	あると思うが、マン本人でもジャックでも80でもティガでも、とにかく俺でなくても身内に適任者が居ると
	思う。と答えたら、

	「レイはともかく、ゼロは私達には逆らおうとする節があるからね」

	苦々しげにそんな答えが返ってきた。だとすると、俺が言っても効果が無い気がするが、マン曰く

	「君には結構心を開いているようだし、いっそ同年代っぽい君への対抗意識でなら、覚えるかもしれない。
	 とも思ったんだ」

	とのことらしい。それは一理あるかもしれないと思えなくも無かったが、またあっちに行くには、バイト
	なんかの休みを調整しなきゃならないし、親父共を頼らなきゃいけないんだよな。そんな風に考えて返事を
	渋っていたら、俺に引き受ける気があるなら、今回は奴らがこっちに来るようにする。と確約してくれた。
	が、どうやって。とか思いながら、ひとまず承諾してみて、今日がその日なんだが……

	「……お邪魔します。今日は、よろしく」

	戸を開けるなり、代表して頭を下げたのは、何故かティガだった。しかも、何か妙に人数多くないか?

	「えーと……」
	「今回の移動手段及び生徒役のダイナ他の、引率役を任されてね」

	どこからツッコミを入れるべきか悩みながら、ひとまず一同を家に上げている俺に、ティガは若干遠い目を
	しながら説明してくれた。そういや、ダイナは時空を渡れるけど方向音痴で、肝心な時とティガが居る時は、
	ひとまず迷わないって、親父達が言ってたような気がするな。
	けど、今日の面子―ゼロとレイ+ダイナ、マックス―の内、あダイナとマックスは一応敬語使えんじゃないのか?
	そう思ったが

	「おじゃましゃっす」

	とのマックスの言い方で、何となく参加させた奴らの意図が読めた。こいつら、雑なしゃべりで、語尾とかに
	問題があるんだ。だからその辺りを矯正するために、周囲が送りこんできやがったんだな。
	てことは、ゼロとレイだけ一からで、他の連中は軽い修正だけでいいんだろうが、正直オマケの連中の方が
	面倒くさい。
	とかまぁ、色々思う所はあったが、ひとまず居間に押し込んで講義っぽいものを始めてみた。


	
							


	「まず初めに。俺は一介の日本人に過ぎなくて、正直そんなに育ちが良いわけでもないから、あまり細かくて
	 専門的なことは教えられないので、丁寧語についてだけ説明します。それで異論はありませんね」

	というか、異論は認めない。謙譲語だの尊敬語だのまで解説した所で、混乱するだけだろうし、正直俺―という
	より、コレの書き手―自身が、解説できる程キチンとは理解していないから、昔―諸泉尊奈門時代―の話し方が
	限界なんだよ。
	
	「それで、まぁ、ざっくりと簡単に言うと、一番良い例はメビウスです。彼は、基本的に誰に対しても『ですます』
	 口調で話しますし、名前に敬称……『くん』とか『さん』のことです。をつけていますので」

	とりあえずそこから説明を始めると、すぐさまゼロから

	「お前も、今は何かキモいジャックみたいな話し方してっけど、普段は親父やマン達のこと呼び捨てにしてるし、
	 自分の親父にも俺と同じような口の利き方してんのに、何でお前が講師役なんだよ」

	との抗議が入った。そこの点は、言われると思っていた。しかし

	「とりあえず、マン達については、初対面の時に『さん』付けすべきか訊いて、本人に要らないと言われたから
	 呼び捨てにしているだけだし、ウチの父親達に対しては、あえて使わないんです。……言っとくが、
	『使えない』と『使わない』の間には、大きな差があるからな。お前やレイは『使えない』で、俺やアグル
	 みたいなのが、『使わない』だ」

	俺の印象では、アグルは多分使おうとさえ思えば、かなりキチンとした言葉遣いが出来るけど、あえて不遜な
	態度を取っているように思えた。それを証明するように、

	「アグル位、徹底的に誰に対しても敬語を使わないのは、ある意味凄いけど、ああいうのを『傲岸不遜』と
	 言うんだって、覚えておくと良いよ」

	と、溜め息交じりにティガがレイ達に説明したので

	「ついでに、ガイアのようにに言葉遣いは丁寧でも、言動が失礼なのを『慇懃無礼』と言います」

	と付け加えたら、かなり嫌な顔をされた。確かに、行動を共にすることの多い連中が、傲岸不遜と慇懃無礼と
	羞恥心もとい天然馬鹿は、キツイよな。でも、事実だろ。

	「……というのは、まぁ、置いといて、ひとまずレイが参考にすべきなのは、メビウスやティガやマンなどです。
	 セブンやジャックやタロウでも構いませんが」
	「エースは?」

	エースは、限りなく今回この場にいるダイナやマックス寄りだから、やめといた方が良いと思う。あと、
	ゾフィーやヒカリなんかも、自分より立場が下の奴としゃべってることが多いから外したんだが、

	「つまり他の奴らやオッサン共は、参考になんねぇんだな」

	と、ゼロが呟いたのが聞こえた。……けど、まぁいいか。参考にし辛いのは事実な訳だからな。

	「それから、返事の仕方は『うん』よりも『はい』の方がいいし、『ありがとう』や『ごめんなさい』も
	 ちゃんと言えた方がいいけど、それは言えるよね?」
	「言える」
	「じゃなくて、『言えます』」
	「……言えます?」
	「そう。よく出来ました」

	ぶっちゃけ、こういうしゃべり方が、今の俺の柄じゃないのは解っている。けど、レイに教えてる間はこうじゃ
	ないとマズイのは、今までの流れで解るだろうから、そういう怪訝そうな目で見るな、ヤンキー小僧。

	「さて、それじゃ、俺は他の人にもちょっと指導するから、レイはティガに頼んでも構わないかな。しばらくの
	 間『ですます』で会話してるだけでいいので」

	そう頼んでから、いっそダイナとマックスは、ひとまずレイ達としゃべらせておいて、語尾だけティガに注意して
	もらえば良い気がしたが、それじゃ今日ここに来た意味が無いのか?

	「俺らは、別にそれでいいよな、マックス?」
	「そっすね」
	「……ダイナは『それで構わないです』もしくは『それでいいです』、マックスは『そうですね』」

	すげ。さっそく指導が入った。ってことは、コイツらはティガに任せて平気だな。

	「……というわけで、しばらく個人指導といこうか、ゼロくん」

	戦国時代の縦社会出身を舐めるなよ。これでも、下の指導をしていたことは多少あるし、外面を取り繕うのも
	必須能力だったんだからな。部下として、みっちり教育してやるよ。


	
							



	とまぁ、そんなこんなの簡易敬語講座を終わらせ、連中を帰した後帰宅した親父―珍しく勤務先の中学の仕事で
	出掛けてたから、今日を狙った訳なんだが―に、

	「お帰りなさい、組頭」

	と言ってみたら、かなり微妙な顔をされた。まぁ、そりゃそうだろうな。自分は俺を「尊奈門」と呼ぶくせに、
	自分がその頃ので呼ばれるの嫌がるのを、解っていて言ってみたわけだし。


	そして後日。レイは俺が教えたことを、帰ってからもティガやマン辺りと練習してみて、それなりに丁寧な
	言葉遣いが出来るようになってきたらしいが、ゼロの奴は一部―セブンや母辺り―を除いて

	「使う気にならない」

	と開き直り、相変わらず口が悪いままだという報告がマンからあった。……クソ。俺やアグルの例を挙げたのが
	失敗だったか。けど、少なくとも母相手にそれなりにキチンとしゃべれてんなら、後は空気と状況さえ読めれば、
	万一の場合もどうにかはなる。ってことだよな。

	ってな逃げは、アリなんだろうか。




久しぶりに、転生×光の国コラボで、書こうと思っていたネタを書いてみたものの、何か上手くまとまらなかった。 やっぱり間が空くと、何書こうとしてたか忘れるな 2010.6.9