俺は、前世で上司だった今世の実の父親が嫌いだ。
	だから両親の離婚の時には、迷わず母親について行くことを選んだ。

	だけど、その後母さんの再婚が決まった時、自主的に父親の元に身を寄せることにした。
	その理由は、対外的には
	「母さん達の邪魔にならない為」
	と称しているが、本当は違う。何故なら相手方にも俺より歳上の息子が居て、その義兄は大学に入学するまで
	実家で暮らしていたから、俺も残っていたって何の問題も無かったし、母さんにも再三引き留められた。
	それでも
	「俺が父さんの面倒をみるから」
	と押し切ってまでこっちに戻ったのは、向こうに妖怪でストーカーな元上司よりも関わり合いになりたくない、
	前世での知り合いが居るからだ。


	そいつは、
	「尊くーん。おにぃちゃんだよ。人体の不思議展見に行かない?」
	のような電話やメールを、月1くらいでよこす監察医志望の義兄で、うどんを食いながら寄生虫の話をしたり、
	焼肉屋で筋肉名で注文をしたり、その他諸々、現代人としてもかなりヤバい言動や性格―というか嗜好―を
	していて、今世でも妖怪クソ親父と意気投合しやがったのが、心底迷惑な奴だったりする。
	しかも、たまたま母さんの所に顔を出した時に居合わせた、前世からの奴の友人(記憶持ち)曰く、前世の記憶は
	ないらしいのに、前世を踏まえたような言動もしょっちゅうだし、おまけに前世ではかなり年下だったのに今世
	では兄貴なのも違和感があるんで、極力関わりたくない。
	だから俺は、苦渋の選択でクソ親父の方を選んだんだ。


	そんな義兄の名前は「真鶴まつる」といい、苗字が「伏木」なので、周囲には「伏ちゃん」と呼ばれていることが多い。
	……つまり、前世では親父のストーカー対象だった子の後輩で、何故かアノ包帯男に懐いていた、怖いもの知らずの
	鶴町伏木蔵が、今世での義兄なわけだが、何で俺の周りには、そういう厄介な奴ばかりが揃っているんだろう。




久しぶりに、光の国抜きで、だけどとても哀れな転生尊ちゃんでした(笑) 2010.9.21