「三郎と雷蔵ってそっくりだけど、従兄弟とかでは無いんだろ?」
「そうだよ。全くの赤の他人でもないけどね」
「それって、三郎の親父さんの隠し子かもしれない。とかいう意味か?」
「馬鹿ハチ。んなわけ無いだろ」
「君だって、つい最近までその疑惑を抱いてただろう、三郎?」
「で、本当はどういう関係なんだ?」
「マイペースだな、兵助」
「僕の父方のひいお祖母さんが、三郎の母方のひいお祖父さんの姉らしいんだ」
「それは、確かに遠いけど、一応血縁だな」
「でしょ?」

「……雷蔵も、だいぶマイペースだよなぁ」
「まぁな。アレでマジギレすると、恐ろしいんだが」
「ふぅん。何やったんだお前」
「俺が怒らせたの確定かよ。…まぁ、確かに実際一番怖かったのは、俺が雷蔵を親父の隠し子だと思い込んで
 騒いだ時だけども」
「やっぱりな。んで、どんなだったんだ?」
「ニッコリ笑って、『君がおじさんのことを嫌いなのは知ってるけど、うちの両親まで侮辱しないでくれる?』
 って。……笑顔だけど、目は全く笑ってなくて、冷気が漂っていたんだ」
「あー、そっか。隠し子だったら、雷蔵のお袋さんも共犯だし、親父さんも解ってて不義の息子育ててる
 ヘタレって意味になるもんな」
「……。俺は、お前のそのハッキリとした、デリカシーに欠ける物言いが、時々嫌いだよ八左ヱ門」
「奇遇だな。俺はお前の、嘘と誤魔化しまみれな言動が好きじゃないぞ三郎」


2009.10.21移動



「えーと、佐武虎若居る?」
「はい。何ですか先輩?」
「大木コーチから伝言あって……」

「ねぇ、虎ちゃん。さっきの先輩どなた?」
「バレー部の、尾浜勘右衛門先輩。何か、春休み中に事故って、4か月入院してたんだって」
「へぇ」
「そう言えば久々知先輩が、『同室者が帰って来た』って言ってたの、あの人かぁ」
「尾浜先輩って、僕らが入学した時に空席だった先代の副会長で、『本来なら今期も続けさせるつもりだったのに』って、
 この間鉢屋先輩が愚痴っていたよ」
「てことは、アノ先輩今は……」
「どこの委員会にも入っていないけど、『現副会長への引き継ぎ』と称して仕事を手伝わせる気満々みたいだから、
 実質は生徒会メンバー扱いみたい」


2010.7.8移動