1.報告
	「……珍しいですね。先輩がアクセサリーしてるなんて」
	「そう言われてみれば確かに。でも、前に金属アレルギーとか言ってませんでしたっけ?」
	「いや、まぁ、そうなんだけど、一応アレルギーフリーなプラチナだし。もらってからしばらくは
	 着けてないと悪いかと思って。……一応コレ、婚約指輪だし」
	「そうなんですか!? おめでとうございます」
	「ついにですか。けど、伊賀崎先輩がそういう所キッチリ押さえてるのは、何だか意外ですね」
	「一応アレでも、今世ではそれなりに人付き合いもしていて常識もあるし、何よりうちには
	 強烈な小姑が居るから(苦笑)」
	「ああ、数さん……」
	「同居し始めた時から、『受け持っている学年(作達)を卒業させたら』とは周囲には言ってあったからか、
	『大体半年〜1年前から準備を始めなきゃいけないだからね!』って、わざわざ結婚情報誌を買ってきて
	 押し付けながら言ってきたんだ」
	「それも何か意外な話ですね。数さんて、反対派じゃなかったですっけ?」
	「そうなんだけど、今更なんで諦めたらしくて、仕方なく認めざるを得ない以上は、なるべく完璧で
	 キチンと計画を立てた状態でないと気が済まないらしい」
	「……ああ。何となく解る気が、しなくもないです」


(「ぐっじょぶカズさん!」→後日、飲みに誘われ、案の定延々グチを聞かされました@左近)


2.結納&挙式プラン
	「正直な所、結納や仲人立てたりするのは面倒くさいけど、元作法委員としてその辺は
	 キチンと押さえておくべきな気がしなくも無いんだけど、孫はどう思う?」
	「僕としては、藤の好きなようにすれば良いと思うので任せるが、仲人の当ては無いことも無い」
	「ちなみに誰だ?」
	「うちの園(動物園)の獣医の、木下先生だ」
	「……。それは、捨てがたいな」
	「だろう? けれど、さっきも言った通り、基本は藤に任せる」
	「って言われてもなぁ。……とりあえず、仲人の件は、先に挙式形式考えて、それに合わすか」
	「そうだな。希望はあるか?」
	「私自身は特には無いけど、父さんは金を出す気満々で、義母さんが『6月の花嫁』に夢を見ていて、
	 カズと一緒に『ドレスを選ぶ時は一緒に行きましょうね』とか言ってる。……そっちの親御さんは、
	 何か言っているか?」
	「いや。特に何も。精々『藤菜さんなら、ドレスでもお着物でも似合うでしょうね』と母さんが
	 言っていた程度か」
	「そうか。……とりあえず、大々的な披露宴は柄じゃないし、やりたくないよな」
	「そうだな」
	「あと、キリスト教式も違う気がする。けど、義母さんはドレス見たがってるし……」
	「だったら、挙式は神式で、その後に披露宴代わりの二次会で洋装をする形でどうだ?」
	「……良いと思うけど、何で妙に詳しいんだよ」
	「折角なので数の買ってきた雑誌をいくつか読んでみたら、結構参考になったぞ」


(「どんなお式でも納得いくまで検討して下さい」→仲人を頼んで結納等は略式でやって、
 挙式はドレスで人前式。という形に落ち着きました)



3.ご挨拶
(伊賀崎家)
	「……そういやご両親の職業って訊いたこと無いけど、何を?」
	「写真家と大学教授だが、南米やアフリカで原色のヘビや虫を中心に撮っていたり、『虫愛づる姫君』の
	 異名を持っていたりして、一般常識は欠け気味な人達だな」
	「……。何と言うか、今世でもお前が虫馬鹿に育つように用意されたような親だな」
	「ああ。僕もそう思う。けれど、自分達や僕が一般とズレている自覚はあるので、『お前なんかで良いと
	 言ってくれる相手には、そうそう出会えないだろうから、見捨てられないように』とは散々言われたな」


	「……。さっきの話からして、嫌がらせだとは思わないが、だとするとコレは、試されているのと素と
	 どっちなんだ?」
	「おそらく、最高のもてなしのつもりだと思う。イナゴの佃煮はともかく、蜂の子ご飯はお祝いの
	 日にしか出されなかった覚えがあるし、他の食材も入手が面倒な筈だからな」

(「個性的な親御さんで(苦笑)」→蜂の子ご飯もイナゴの佃煮もトカゲの姿揚げも美味しくいただいや結果、
 ものすごく気に入られました(笑))



(三波家)
	「とりあえず、割と典型的な『娘はやらん!』的なことを言い出しかねない父ではあるけど、カズを
	 味方につけているから何とかなる筈……って、カズは味方なのか?」
	「多分大丈夫だろう。藤を困らせるよりは喜ばせる方を選ぶ気がするから、味方にはつかなくとも
	 敵には回らなければ何とかなると思う」
	「そうかもしれないけど、やけに余裕だな」
	「ああ。昨日『同棲アリな時点で認められてるってことでしょ!』と言われたからな」


(結局、思いの外すんなり認めてもらえたので、お義母さんに訊いてみた所
「藤ちゃんの選んだ人ですもの。大丈夫ですよぉ」
		+
「反対なんかしたら、藤ちゃんだけでなく、かずみの反感も買うかもしれませんねぇ」
という説得(という名の脅し)が効果てきめんだった模様とのことでした)




4.ドレス選び
	「ねぇ、藤菜ちゃん。コレはどうかしら?」
	「藤菜さんなら、こんなのも似合うと思うんですけど、いかがです?」
	「藤ちゃーん。コレかわいいv」

	「……。先程から、流行りのふわふわした髪型に合いそうな可愛らしいデザインばかり選んで
	 下さっていますが、義母さんとかずみは知っていると思いますけど、私はひどいクセっ毛で、
	 特に梅雨場はきつく結ってまとめておかないと湿気で膨張して有らぬ方向にはねるので、
	 ぎちぎちのまとめ髪に似合うものでお願いします」



	「お色直しに、この雨蛙色のドレスはどうだ?」
	「……綺麗な黄緑で、デザインも悪くないけど、その表現はやめようよ孫兵」
	「いいよ、カズ。今更だ」


(「結局どんなドレスに?」→シンプルでクラシカルなデザインのウェディングドレスと、孫兵が
 目をつけたライムグリーンのドレスを選びましたが、家庭科教師で手芸屋の娘な二郭さんに
「ベールもドレスも、かなり高価いアンティークレースを使った物に見えるのは、気の所為ですか?」
 と訊かれたのが正解な、見る人が見れば解る良いお品だったようで)




5.招待状作成
	「えーと。うちの身内は、両親とカズに、三波の祖父母と浦風の祖父に三反田の祖母だけで、
	 他は省いても良いかな」
	「……『浦風』と、『三反田』?」
	「ああ。実母と今の母、カズの母さんの旧姓。私も知った時は驚いた。……そっちの身内は?」
	「僕の方も、両親と祖父母だけで充分で、職場からは園長と木下先生の他に数人呼べるかどうかだな」
	「まぁ、動物園だから休日に大勢呼ぶのは難しいよな。こっちは、左近とニノさんは確定で、立花先輩にも
	 一応招待状は送った方が良いのかな。あと、出来れば作達を含むクラスの子達を呼びたいんだけど……」
	「もちろん構わない。生徒としても、先生の結婚式に呼ばれるのは良い想い出になるだろうしな」
	「それじゃ、私の側はクラス38人+10数人で」
	「僕の方は20人に満たない程度だからバランスは少し悪いけど、まぁ構わないよな」
	「ああ。それを理由に、父の仕事(弁護士)絡みのお偉いさんを呼ばなくても済むし」


(「作ちゃんの反応が楽しみ(笑)」→招待状をもらった時は、色々とショックが大きかったけれど、
 当日までにはどうにか気持ちの整理をつけ、お祝いの言葉やドレス姿を褒めようとしたのに、
 ことごとく左門や三之助に先に言われてしまいましたとさ)



6月期拍手御礼 一番書いてて楽しかったのは、孫さんの両親とお色直しドレスの表現です(笑) 2011.7.1