私の、初恋の話をしてやろう。
何? 聞きたくない? そうはいくか。聞け。お前には、その義務がある。
小学4年生の時で、相手は同じクラスの少女だった。
一言で言うと、少々抜けた子でな。国語の音読のページや行を間違えたり、
別の教科や以前使っていた教科書を持ってきていることもしょっちゅうで、
給食の丸缶(メインのおかず)をぶちまけたりすることも頻繁にあった。
それでも、どこか憎めない空気をした子でな。クラスの皆に好かれていた。
その中でも、特によくフォローをしていたのが、私と彼女の双子の兄だったんだ。
それはもう、よく似た兄妹でな。兄の方も、実は妹と同じ位抜けて
いたのだが、とにかく妹に甘く、妹のためなら何でもやろうとして
いたから、結局私が2人まとめて世話していたようなものだった。
きっかけは、単に1年の時から同じクラスで、出席番号順で私の前だった。
というだけなのだが、親しくなれたのは僥倖だったと思っている。
妹の方に惚れているのだと気付いたのは、夏休みに入った頃だった
のだが、生憎と私は相手の家の場所も電話番号も知らなかった。
…まぁ、調べれば判っただろうが、所詮は小学生の時のことだからな。
それで私は、夏休みが終わって、学校で顔を合わせたら一番に伝えよう。と決めた。
しかし、いざ新学期が始まってみると、双子は「急な事情で転校した」と
担任教師から聞かされ、転校先はどれだけ訊いても教えてもらえなかった。
偶然再会し、その「事情」が訊けたのは、ここ(大川)に入学してからだった。
…再び顔を合わせ、共に過ごすようになり、想いも甦った。しかし彼女の
事情や状況などを慮り、告げずに状況が好転するまで見守ると決めた。
そうしたら、無神経で考え無しの馬鹿が、彼女に近付きやがってな。
あまつさえ、つい先日から付き合うこととなったわけだ。
…というわけで潮江文次郎。私は一生お前を許さん。もし万一彼女を
悲しませたり、傷付けるような行為をしたり、挙句の果ては裏切ったり
なぞした場合は、死ぬよりも辛い責め苦を与えてやるから、覚悟しておけ。
学生寮自室にて。スタンガン(改造済)を突き付け、
正座させた潮江くんに向かって。目だけ笑っていない笑顔で。
そんな状況かと
あえて「彼女」の名前を一切出さないで語らせてみました。
「仙伊」というより「仙→伊 + うっすら文伊」です。
あー楽しかった。
2008.11.30
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