地球では10月半ばに当たるある日の、光の国。
「地球には、この時期に『はろうぃん』って行事があるそうなんです」
と雑談中に言い出したのはメビウスでしたが、昭和組が地球に居た時期には今ほどポピュラーな行事では
なく、メビウスを初めとする最近の連中も良く解っていなかった為、とりあえず地球出身者達に話を聞きに
行くことにしました。
しかし、ティガは
「僕、あのイベント好きじゃないんです」
とにべもなく、ダイナは
「えっとな。仮装してお菓子貰いに行くんだ」
という小学生レベルの答え。アグルは訊いても教えてくれなさそうなので端から除外し、残るガイアは
「ハロウィンですか? 元はケルトの――」
などと、無駄に詳しく専門的に説明し出したため、好奇心で聞いてみたメンツ―メビ・エース・タロウ・
マックス―にはさっぱり理解できず、どうしたものか考えていると、
「私でよければ説明しましょうか? 教師時代に、クラスでやったことがありますから」
そう申し出てくれたのは、80でした。そして、板書付きの授業形式で―一部居眠りこいた奴も居たとは
いえ―しっかり説明された結果。
「説明足りないだけで、ダイナの答えで殆どあってたじゃん」
との結論に達し、誰が誰をどう説得したり抱き込んだのか、地球(日本時間)で10/31に当たる日に、光の国
全体でハロウィンを決行することになりました。
そんな訳で開催されることになったハロウィン当日。様々な仮装をした者達の行き交う警備隊本部内を、
魔女―というか魔女っ子―姿の若い女性が闊歩しており、通りすがりの一般隊員などは「あんな人居た
っけかな?」と首を傾げましたが、誰にも見咎められていないようなので放っておきました。
そしてその魔女姿の美女は、迷いの無い足取りでセブンの執務室に辿り着くと、そこにいたレイに、どこから
ともなく取りだした黒い猫耳と尻尾をつけると、満足げな表情をして、そのまま連れ出しました。
「……なぁ。アレ、レイの姉貴だよな。何で実体化してんだ?」
「まぁ、ある意味西洋版の盆みたいなものらしいから、そんなにおかしくないんじゃないのか」
部屋の隅で一部始終を見ており、ひそひそとそんなことを呟いていたのは、断固として拒否したのに
ウサミミ(白)を装着させられたゼロと、忍び装束の包帯親父に連れて来られた挙句、とばっちりを食って
お揃いのウサミミ(黒)をつけられた尊でした(笑) ちなみもう1人の妖怪は、普段の格好が充分コスプレ
くさい不死身男なので、特に仮装はしていません。
面白がった父親達に無理矢理付けられたウサミミが、どういう仕組みになっているのか外せない息子達は、
そんな姿をさらしたくないのでセブンの執務室に籠っていたわけですが、セブンの元にお菓子をもらいに
つるんで来た、タロウ・エース・マックス・メビウス・ダイナに引っ張り出され、結局一緒に他の連中の
所を回る羽目になりました。
尚、目一杯ハロウィンを楽しんでいる連中の仮装はというと、タロウはドラキュラ。エースは狼男。と、
割と正統派でしたが……
「メビウス。何の格好だ、それは」
「えっと、ノーバだよ」
赤いシーツお化けもしくは真っ赤なてるてる坊主のメビウスに、
「てめぇなぁ、忍者を馬鹿にしてんのか!?」
な、勘違い外国人風の忍者姿のマックス。そして
「見覚えはある気がするんだが、ソレどこの隊服だ? お前のじゃないだろ」
「コスモスんとこのっすよ。ティガもガイアも貸してくんなかったんで」
とのことでチームEYESの隊服姿のダイナ。という何か微妙な感じでした。
ついでに、カボチャ大王なセブンがくれたお菓子は、
「甘い・辛い・しょっぱい・酸っぱい・苦いの五味キャンディーだ。どれがどの味かは、俺も判らん」
という当たり外れのデカイ代物で、見事に全員で全ての味を引き当てましたが、「甘い」も甘過ぎた
為、全部かなり凶悪な味だったとか(笑)
そして一行が次に向かった先は
「あれ? ティガさんは仮装してないんですか?」
「しているよ」
「どこが?」
「見て解りません?『ティガダーク』です。ご希望とあらば、ブラストやトルネードにもタイプチェンジしますけど」
にこやかに笑いながらお菓子を差し出しつつも、まとう空気もダーク様仕様のティガに、空気の読めない
メビウスと、前から知っていたダイナ以外は
「ああ。本当にハロウィン嫌いで、かなり機嫌悪いんだな」
と悟り、さっさと次に行くことに決めましたが、去り際に部屋の床に何か―というか誰か―が倒れているのが
目に入りました。
「あのー。そこに落ちてるゾンビは、もしかしなくても21っすか?」
「そうだよ。目一杯不快感を露わにしているのに『ノリが悪い』とか『もっと楽しみましょうよ』とか
五月蝿かったからね。でもまぁ、本格的に老婆な魔女の格好をしてこなかっただけマシかな。もしも
そんな格好で来ていたら、ロリポップ眉間に突き刺してたかも」
最早「貼り付いた笑顔が怖い」域のティガに、一行は心の中で21に合掌しつつも、見なかったことにして
部屋を出ました。
途中。可愛らしい妖精姿でカメラを構えて激写しまくるユリアンや、シンプルなシーツお化けのコスモス、
存在感の無さがはまり役過ぎる幽霊のネクサスなどとすれ違いながら、ガイアの元に顔を出すと、
「悪戯させてくれるんなら悪戯の方が良いけど、されるのは厭だから、はい、これあげる」
と、あっさりクッキーをくれました。しかし一行が去った後。傍観していたアグルが、念の為クッキーが
既製品かどうか訊ねると
「え。僕が、ティガと一緒に作ったのだけど、それがどうかしたのアグル?」
平然とそう返されたので、微かに顔色を変えて後を追おうと部屋の外に出ると、数メートル先で泡を吹いて
倒れているマックスと、その周りでオロオロとしている他のメンツが目に入りました。
「……学習能力が無いのかアイツは」
そう呟きはしたものの、コレで他の連中は食べないだろうと判断したアグルは、そのまま踵を返して戻り、
一応ガイアにその惨状を伝え
「次からはそのクッキーを与えるのはやめろ」
とだけ釘を刺したので、ナイスと手伝いのジャックに引率された園児やレイなどは、殺人クッキーの餌食には
ならずに済みました。
その後。ゼノンの元では妙に古臭い、小さなもなかやオブラートに包まれた寒天などをもらい、一番期待して
行ったマンには
「お菓子? 無いよ」
と言われ―どうも、反応が見てみたかったらしい―泣きそうになったり、単なるいつもの白衣姿なのに
「知っているかお前ら。『フランケンシュタイン』というのは、怪物を造った博士の名前で、怪物には
名前は無いんだ。だから俺のコレは『フランケンシュタイン博士』の仮装だ。……何か文句はあるか」
と、屁理屈をこねたヒカリに、他のメンツは単なるのど飴―しかもスーパーメンソール―を投げつけられた
のに、メビウスだけはカレー煎餅だったので文句を言ったら
「ガキ共の分だけは用意しておいたんだ」
と返され、その証拠に一応ゼロと尊も―あとで聞いた所レイも―カレー煎餅をもらいました。
そして締めは、ゾフィーの所へ
「お菓子はいらないので悪戯させて下さい☆」
と押し掛け、しかしキッチリお菓子―だけでなく、秘蔵のお茶受けも―を強奪してきましたとさ。
オマケ
「ジャスティスさん。コレ、前にお豆についてきたお面なんですけど、ジャスティスさんに似合うと思うので、どうぞ!」
「……ああ」
(って、アレ鬼の面っすよね。何考えてんだよ、メビウス〜)
(多分意味とか解っていないと思うけど、それにしても、止めた方が良いのかなぁ)
(いやぁ、今更だろタロ坊。諦めて、後で目一杯文句言われろ)
(えー。僕の所為になるんですか)
(そりゃまぁ、一応教官スからねぇ)
光の国でハロウィン。しかし家族モノ設定か通常仕様かは不明。
姉さんと一緒に決めた仮装+αを出すので精一杯でしたが、
お祭り騒ぎ感はそこそこ出た気がするので、良しとしておきます
2010.10.12
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