ゼロが、新しく出来た仲間達との武者修行中に遭遇した、とある事件の後。その話を、
「アイツも、少しは成長したもんだ」
と満足そうに語る、ゼロの父親であるセブンから聞いたゾフィーは、その場では
「まだまだ詰めは甘いようだけど、進歩していないこともないようだね」
と評価したが、その表情は冴えなかった。そして、同期のヒカリにも相談した結果。
「……ミラーナイト。悪いんだけど、ちょっと私の執務室まで来てくれるかな」
その場には居合わせていなかったが、彼らの中では最も冷静で、まとめ役のようなポジションにいる
ミラーナイトに声を掛けた。
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「えーと。最初に言っておくけど、お説教や注意では無いんだけど、この間の件に関して、ちょっと
話しておきたいことがあってね」
そう前置きし、机の上のコーヒーに1口だけ口をつけると、まず
「ベリアルが、かつてウルトラ戦士だったことや、謀反を起こしたことは、一応知っているよね?」
と問い掛けると、ミラーナイトは特に何も問い返さずに「はい」とだけ答えて頷いた。
「それで、アレ以降ベリアルの過去に関することは、触れちゃいけない話題になっているから、今の若い
隊員の殆どは知らないだろうけど、実はベリアルは大隊長の同期で、実力も均衡した、親友だったんだ。
……今の、マンとセブンや、平成組とか、ゼロとグレンファイヤーみたいなね」
今や、その事実を知っている―覚えている―のは、幼少期から新人隊員時代まで、ずっと憧れや尊敬を抱き、
目標や誇りに思ってすらいた、ゾフィー達の世代までしか居ない。そして、盟友の裏切りに誰よりも傷つき、
止めることの出来なかった自分を責め続けているだろう父の心情も、察することが出来る為、おのずから
その話題は禁句となった。
そこまで語るとゾフィーは、呼び出した理由とこの話をした理由を、ミラーナイトに告げた。
「だから、その、この間の話は、絶対に父や母の耳には入れないようにするけど、今後ゼロがそういう
粋がったり知ったかぶったことを言いそうになったら、それとなく止めてもらえるかな」
「解りました。……私を選ばれたのは、ゼロやグレンでは、聞く耳を持ちそうにないからですね?」
静かに頷いたミラーナイトに、ゾフィーは人選の正しさを実感した。
「それから、時には疑うことも大事だとか、無条件に手を差し伸べるだけが慈悲じゃない……っていうのは、
コスモスやマンとかティガ辺りに、実例込みで教えてもらった方が良いかな」
「そうですね。私では、意見を述べることは出来ても、聞き入れない可能性は高いですし、まだまだ経験が
足りませんので、先輩方にお願いすべきでしょう」
しばらくコスモスの所に、慈悲や博愛の精神を学ばせに通わせていたことが、半ば奏を効したと言えなくも
無い出来ごとだったとはいえ、コスモス達には、その信条を貫くだけの覚悟や、時には見捨てたり討たねば
ならなかった経験もある。その辺りが、ゼロはまだ上辺だけで甘い。
そんな自分の結論に、苦笑しつつ同意するミラーナイトに、ゾフィーは
「良い仲間であり友人を、見つけたんじゃないかな」
と、甥兼部下の成長を期待することにした。
お正月のバトルステージに、ささやか〜にケンカ売ってみました。
というか、姉さんと2人で
「ベリ様にだって、父達が居たし、部下にも慕われてるよ!」
的なツッコミを入れながら話した内容を書いちゃった。
ってな感じですが、最後の辺りはつじつま合わせの捏造です。
2011.1.18(2011.1.6)
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