それは、ある種の事故だった。

	休憩中に、執務室の脇の簡易キッチンでマンがお茶を淹れようとした所、茶葉が切れていた。
	そして、買い置きは無かったかと、周囲を見回すと、席を外している同僚兼親友兼弟セブンの
	デスクの上に、ラベルは貼られていないが、おそらく茶筒だと思われる銀の容器を見つけ、
	開けて中を見るとやはり茶葉らしきものが入っていたので
	「買っておいてくれたのかな」
	とありがたくそれを淹れ、その場に居た数人に振る舞った直後。
	当のセブンが戻って来て、自分のデスクの上に目をやってから

	「誰か、この辺りに置いといた、解析用のサンプル知らないか?」

	と首を傾げた。

	「見ていないと思うけど、どんなやつ?」
	「銀色の筒に入った、植物の葉を乾燥させたものなんだが……」
	「え。まさか……コレ?」

	自分の分のお茶に口をつけながら訊ねたマンは、その返答に表情を少しひきつらせ、先程の茶筒を
	セブンに見せた。

	「ああ。それだ」
	「どうしよう。今さっき、お茶と間違えて淹れて、飲んじゃったんだけど……」
	「……。ひとまず、即効性の害はないみたいだな」

	セブン曰く、その茶葉らしき物体は、つい最近宇宙連邦に加盟した星の固有種で、その星ではお茶状に
	煮出して飲まれているものだが、他星人が服用しても害が無いか、成分解析することになっていたらしい。
	そして、この場合無造作に置きっぱなしたセブンが悪いのか、確認をせずに淹れた上に他人にも供した
	マンが悪いのかは、争っても無駄なので、ひとまず速やかに医務室に向かうことにした。
	ちなみに、たまたま居合わせ供されたお茶を口にしたのは、セブン以外のウルトラ兄弟6人と、ヒカリ、
	平成組4人にマックスの計12人で、全員そのお茶もどきをコップ1杯以上は摂取していたが、差し当たり
	気分が悪くなったりしている者は居なかった。

	しかし、医務室に着き、事情を説明している最中に、変化が表れ始めた。



						☆



	「おぉー、すげぇ。胸ってこんな感じなんだ」
	「思ってたより、柔かくて弾力あんだな」
	「って、そこ! ここぞとばかりに揉まないの!」
	「……中2男子かお前らは」
	「だって、この機会を逃したら、一生無理そうだし」

	彼らの身体に起こった変化は、いわゆる「女体化」というやつで、ひとまず自分の胸を揉んでみて、
	その感触にはしゃいで周囲に大いに呆れられたのは、ダイナとマックスの2人だった。

	「ああ、でも、感触はともかく、確かに意外に重くて揺れるから、想像以上に女性隊員は、男性隊員に
	 比べて戦い難いのかもしれないね」
	「そうですねぇ。実戦でも訓練でも、結構ハンデだと思っても良いかもしれませんね」
	「……。そこまである女子隊員は、ほとんどっていうか、多分全く居ませんから! 何よ。どう作用
	 したのか知れないけど、いきなりそのサイズとか、何の嫌がらせ!?」

	一応、警備隊隊長と訓練校教官の立場から、身を持って感じた男女差を論じたつもりのゾフィーと
	タロウ(共に無駄に巨乳)に、泣きそうな顔で猛抗議をかましたのはユリアンだったが、その場に居た
	銀十字所属の女性隊員達のほとんどが、その言葉に頷いていた。

	「まあまあ、落ち着けってユリアン」
	「この件に関してだけは、兄さんにもタロウにも否はありませんから!」
	「私より細くて胸のある人の慰めなんて、いらないのよ!」

	今にも暴れだしそうなユリアンを宥めようとしたジャックも、羽交い締めにして抑えようとしたエースも、
	推定Cカップ以上は確実にあった為、火に油を注ぐことにしかならなかった。

	「……。止めてこい、メビウス」
	「はい! 落ち着いて下さい、ユリアンさん。胸の大きさと女の人らしさは、関係無いと思います!」
	「そんなわけな……そうかもしれないわね」

	キッと振り返り、噛み付くように反論しようとしたユリアンは、見るからにつるぺたながら、見事に
	美少女度が増しているメビウスに、何だか毒気を抜かれ、ひとまず怒りを治め大人しく他の銀十字軍
	隊長であるウルトラの母の補佐に戻った。
	そして、とりあえず元凶である茶葉の解析は、セブンや科学者組に任せるとして、銀十字側は血液と
	皮膚の細胞を採取して検査を行うことにした、その順番待ち中。各自飲んだ量や体質によるのか、
	程度の差はあれど、

	・背が縮み、肩幅や腕なども全体的に華奢になった
	・胸が膨らんだ
	・目が大きくなり、まつ毛が伸びた
	・声が高くなった
	・髪が伸びた

	等の変化が現れ、普段からかなり女顔なガイアやメビウスですら、「瞳2割増しでまつ毛も増量」+
	「胸もあるね」+「声も、若干高くなってる?」といった感じになっているのに、間違いなくお茶を
	口にしていたにも関わらず、髪がかなり伸びている以外には、何の変化も見られない者が居るのが、
	皆気になっていた。


	「……悪かったね。ろくに変わっていないように見えて」

	仏頂面でそう呟いたティガの声は、一応微かに高くなっており、外見も、よーく見れば若干背が縮み、
	隊服の肩が少し落ちていたり、下も緩そうで裾が余っていなくも無かった。

	「どれ」
	むに
	「あー、うん。結構あんな」
	「……人の胸を、勝手に鷲掴みにするな!」

	半信半疑の視線を集め、どんどん機嫌が悪くなっているティガの胸を、思い切り掴んで確かめ、即座に
	スカイタイプに変化した彼─彼女?─に高速ビンタを食らったのは、考えるよりも先に行動を起こす
	ダイナだった。

	「……。タイプチェンジは出来るようですが、少々腕力は落ちていますね」

	タロウ曰く「母さん並のスピードと威力」でダイナをひっぱたいた直後に、シレッと報告したティガに、
	ウルトラ兄弟達は「なるべくコイツを怒らせないようにしよう」と思ったが、当のダイナは

	「ちなみに、どれ位あった?」
	「んーと、ソフトボールよりちょっと小さい位かな」
	「うわぁ。何か、妙に具体的で生々しい表現だね」
	「ってか、それって実際どれ位なんだ?」
	「公式は12インチの筈」
	「つまり、30cm弱か」
	「それが片方の円周だから、カップ数に直すとDか、もしかしたらEかもしれない位かな」

	等々の会話を、ガイアを初めとする若手と繰り広げており、

	「……っ、全員黙れ!」

	と、他のメンツと共に、再度キツイ1発を食らった。

	「それにしても、つるぺたのメビウスより、明らかに身体的変化出てるのに、パッと見全然判んない
	 だなんて、流石だねティガ」
	「これっぽっちも嬉しくないし、褒めてないよね、ガイア」

	どうも、隊服の素材が厚い上、全体的に細くなったことで服が浮いていて胸が目立たなかっただけで、
	後でキチンと採寸した所。
	「60のDで、腰もこんなに細いなんて、信じられない」
	と、ユリアン他に、怒りを通り越して愕然とされた程だったりする(笑)


	その後。ざっと調べた結果、性別が変化したことにより、体型や体力等は変わったが、それ以上の害は
	無く、自然には戻らないことが判明した。その為、学者組で中和剤を作り、それ以外のメンツは、警備
	隊員及び訓練生全員に事情を説明し、女子隊員扱いで通常任務に就くことになった。
	そして、中和剤が出来るまでの数日間。隊服を着ている勤務中はともかく、私服時にはパッと見で気付かず
	ナンパされたりすることは珍しく無く、特にモテたのは、意外にも普段から眼光鋭く愛想の無い科学者達で、
	どうも女顔にした場合一番変化が激しいことや、凛としたクールビューティが好みな奴が多かったことが
	その理由のようだった。しかも、声を掛けられる度に冷たい態度を返しても、何か喜ぶ奴まで居たため、
	(斬り捨ててしまいたい)
	と、何度か結構本気で思い実行すらしかけたが、それでも引かなかった本物も居るとか居ないとか……
	そんな状況の中、通常任務ではなく、銀十字軍の手伝いや事務仕事のみを命じられた者が3人。

	1人は、普段から外回りの任務は殆ど無いが、無駄に胸があって隊服の前が止まらないので
	「目に毒なんで、この機会に書類に専念して下さい!」
	と言われたゾフィー。
	もう1人は、女子隊員の隊服を借りても、イマイチサイズが合わず何だかダブっとしていたり袖が余るので、
	「何か、女子隊員の反感買いそうな感じするから、隊長手伝えば?」
	ということで、書類整理などを手伝うことになったティガ。
	そして残る1人は、体型にそこまで変化は無く、力もそこまで落ちていないから、別に問題は無い。……と
	主張したのに
	「お前は肉弾戦中心だから、腕力も体力も下がってると、普段通りには戦えないだろ」
	などとメビウス以外の兄弟に言われ、無理矢理銀十字の手伝いに貸し出されたマンで、本人的には元から
	地味で目立たない顔立ちなので、そんなに変わっていないつもりだが、

	「何て言うか、あんまり美人過ぎない感じが、完璧な美人のティガとかと違って、手が届きそうに見えるし……」
	「ジャック兄もほとんど同じ顔だけど、本人が思ってる以上に可愛いくなってるのに自覚ないから、警戒も
	 してないもんなぁ」
	「私には無い、『清楚』とか『可憐』な雰囲気があるからじゃないかな」
	「多分、『大和撫子』って、ああいう女性を指すんだろうね」
	「という訳で、意地でも他の奴から守るぞ!」

	なんて密談及び協定が交わされた結果であることを、本人だけが知らないだけだったりするとかしないとか。






女体化というか、女体(女子の胸とか細い腰とか華奢な肢体)が大好きです。 そんな趣味を目一杯詰め込んで、好き放題書いてみました(笑) 主に書きたかったのはW初代様の描写と、セクハラ発言&行動と、 中2男子的行動ですが、他も全部楽しかったなぁ 2011.2.22