ある日のこと。1隻の宇宙船が、光の国を訪れた。
その船に乗っていたのは……
「やぁ。久しぶりだね、メビウス」
「よっ! 元気にしてたか」
「私達の事、覚えてるわよね?」
「そんな薄情な奴じゃないよな、アミーゴ」
「ここが、光の国ですか!」
「ひさしぶり〜ミライくん……じゃなくて、メビウスくん」
「サコミズ隊長! リュウさんに、マリナさんにジョージさんにテッペイさんにコノミさん!
どうなさったんですか!?」
スペースポートの職員に、警備隊の他の主要メンバー共々呼び出されたメビウスの前に立つ訪問者達は、
かつて彼が「ヒビノミライ」として地球で所属していた防衛チームCREW GUYS JAPANのメンバーだった。
「実は、今地球では、長距離惑星間航行船の研究が進められていて、僕達はその試作機の
テストパイロットとして、この星を目指して来たんです」
「試作機と言っても、俺らが無事に戻ったら、メンテナンス後そのまま使用されるらしいけどな」
「私達が選ばれたのは、現職の隊員がしばらく地球を離れるのは、問題かもしれない。ということで、
元隊員でメビウスくん達と面識もあって最適だって、ことらしいです」
「の筈なのに、何故かコイツも来てるのよねぇ」
「うっせぇ! 俺より、サコミズた……総監の方が、普通に考えたらマズいだろ」
「信頼の置ける、優秀な部下ばかり。というのは、とても有難いことだよね」
口々に説明―と漫才染みたやり取り―をする元GUYSメンバーは、実は総監だった元隊長のサコミズと
現隊長のリュウ以外、現在は別の職―というか入隊前の本職―に就いている。そして、未だに隊に残って
いる要職2人が、今回のテストパイロットに加えられたのは
「やはり、全員揃っていた方がメビウスくんも喜ぶでしょうから、不在の間はお任せ下さい」
という、元総監代行のミサキ嬢の鶴の一声によるものらしい。
そんな訳で光の国を訪れた一行は、「光の国に辿り着くこと」が目的だった為、無事に辿り着いた以上は
特にすべきことも無かったが、彼らの噂を聞きつけた―地球を直接は知らない―一般市民や隊員、訓練生
などから「地球の話を聞かせてください!」という要望が殺到したため、国賓扱いで数日滞在してもらい、
公演的なものや交流会を行い、帰りはウルトラ戦士の護衛付きで帰還させる。ということに決まった。
とはいえ、光の国の環境は地球人の身体には毒な為、スペースポートと同じようなバリア空間を設定した
ゲストルームからは出ないように指示し、その分ウルトラ戦士達の方から、入れ替わり立ち替わり彼らの
元を訪れた。しかし、地球人向けのバリア空間なので、人間体をとっている上、その姿が地球に滞在して
いた頃とは違っていた為、最初の頃は少し混乱もあった。
そんなこんなな、滞在中の風景を、少しだけ紹介してみよう。
☆
「よければ、ハヤタや、他の特捜隊のみんなの話を聞かせてもらえないかな」
メビウスからまとめて紹介されたが、いかんせん人数が多いので「えーと。この人は……」状態の中。
サコミズにおずおずと話しかけてきたのは、一番地味で少し背の低い青年だった。
「特捜隊……科学特捜隊の話ですか? 構いませんよ。ただ、私が地球を離れていた間の話は、
後から聞いた話しかできませんが」
「それで構わない。というより、ハヤタ達が今どうしているかとか、元気にやっているかとか、
そういうことが聞けるだけで充分だから」
懇願するように訊ねた地味な青年こそ、光の国が地球を知ったきっかけであり、おそらく最も地球や
かつての半身を愛しているが、半身ハヤタの記憶は消去され、命令違反の罰として再び地球を訪れる
ことも叶わない、マンことウルトラマンだった。
そんなマンの心情を知ってか知らずか、本当に些細なことから近況まで、乞われるままにサコミズは
話し続け、後になってマン本人以上に他の兄弟達から「本当にありがとう」と大いに感謝された。
そんな交流を皮切りに、始めの内はある種の伝説の人達相手。ということで緊張していた他のメンバーも、
メビウスからどこかズレた紹介を聞いたり、きさくに話しかけられたりしている内に、何となく打ち解けて
来て、各自興味があったり共通の話題のある相手に、自分達から話しかけてみるようになった。
例えば、元GUYSクルー1の伊達男ジョージが、次々に訪れる人間の姿をしたウルトラ戦士達の中に、
涼しげな美人が居るのを発見し、いつもの調子で声をかけた所。相手は思い切り眉をしかめ、冷やかに
「僕は男だ」と返した後
「メビウスくんの大事な仲間だから、今のは見逃してはあげますが、2度目は無いと思って下さい」
と、ニコリと微笑んで穏やかに告げたが、むしろその笑顔の方が、冷気が漂っていて恐ろしかった。
そんな一見美女風の美青年は、彼らとは違う次元の地球出身のティガで、後からメビウスに訊くと、
「ティガさんは、女の人に間違われるのが、とっても嫌いなんだそうです」
との答えが返ってきたため「先に言っといてくれ」と抗議したが、
「誰かれ構わず口説くアンタが悪いんでしょ」
と、マリナに切り捨てられただけでなく、その後も懲りずに又も女性と思しき相手に声をかけては
「ちょっと体育館裏まで来てくれるかな」
と連れて行かれそうになったり、目付きの怖いお兄さんに睨まれたり、危うく目の前でウルトラ
ダイナマイトをかまされそうになった。などというハプニング(?)があったり、
「あの、ミクラスやウィンダムに、会わせてもらってもいいですか?」
と、マケット怪獣を可愛がっているコノミが、そのモデルになったカプセル怪獣を所持しているセブンに
頼んでみたり、バイクレーサーのマリナと半身の郷秀樹がレーサー志望で自動車修理工場に勤務していた
ジャックがバイク談議に花を咲かせたり、室外には出られないが窓から見える光の国の風景や市民などに
目を輝かせるテッペイに、レイが
「……オキみたい」
と呟き、他にも自分の所属していた防衛チームにも、こんな奴居たなぁ。と懐かしく思った者が居たり、
ヒカリを「セリザワ隊長ー!」と呼ぶリュウと、「違う!」と主張するヒカリの、どっちが先に根負け
するか。などという賭けが行われ、結局ヒカリが「……もういい、好きにしろ」と折れたり、ヤプールの
トラウマやら怪獣やら星人やらの話題で、最終的には殆どのウルトラ兄弟と意気投合しており、他次元で
活躍していた面々―平成組―とも、当たり障りのない話をしていた所。
「え。我夢と藤宮!? アグルー。メビウスくんの隊の人達が乗ってきた船、我夢と藤宮の設計なんだって!」
と、いきなり目を輝かせてはしゃがれた。
「ガム?」
「高山博士の下の名前が、確かそんな感じの変わった名前だったと思うけど……」
嬉々として誰かを呼びに行った相手―ガイア―の言葉に、GUYSメンバーが首を傾げていると
「君達の世界とは別次元のだけど、高山我夢と藤宮博也はね、ガイアとアグルの半身だったんだよ」
との補足をしたティガが
「……ちなみに、君達の世界に『マドカ ダイゴ』っていう人が居るかはわかるかな? 『イルマ メグミ』
でも構わないけど」
と訊ねたのに
「あと、『アスカ シン』か、『アスカ カズマ』も!」
とダイナが便乗し、全員の記憶と知識を突き合わせてみた結果。
「確か、私達が子供の頃の高校野球の選手に、『アスカ』って選手で居た気がするけど……」
「プロになったって話は聞いたことが無いな」
との証言がマリナやジョージから。
「マドカ ダイゴ……火星移住計画のリーダーか何かが、そんな名前じゃなかったか?」
「ああ。そうですね。ご夫婦で移住されて、娘さんが火星生まれ第1号の筈です」
「マドカ ヒカリちゃんだね。彼女は数年前に地球に帰って来て、今は渉外交渉室……地球外生命体との
交渉を担当している部署の幹部候補生で、そこの室長がイルマ博士だよ」
そんな情報がリュウ、テッペイ、サコミズからもたらされた為、ダイナは
「ティガとか、ガイアやアグルばっかずりぃ」
と大いに拗ねたが、
「えっと、うちの園の園長から聞いたことのある、ボランティアで各地というか世界中の子供に野球を
教えてるっていう人が、確か『アスカ』さんだったと思います」
との、あやふやながら事実ならかなり光栄な証言が、コノミから出てきた。
等々、殆どのメンツが楽しく交流できた中。
「……マンとか、他のみんなが楽しそうでよかったけど、私もサコミズとしゃべりたかったなぁ」
といじけていたのは、「サコミズと会いたくば仕事を片付けろ」と弟達に言われたが、結局彼らの
滞在中には終わらなくて会うことの叶わなかった、残念な宇宙警備隊隊長だった(笑)
だいぶ前から書こうと思っていたもの。
メビ+昭和組中心のつもりだったのに、ついつい平成組に愛が……
2011.3.17
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