弟に友達が出来た。それは別に良いことだと思うし、その友達の所に招かれるのも、まぁアリだと思う。
ただ、その「友達」っていうのが、あのエスメラルダ星のお姫様で、何故か弟のナオだけでなく俺まで国賓に
近い扱いをされているのが、まずものすごく気になる。その上……
『久しぶりだな、ナオ』
「うん。迎えに来てくれてありがとう、ジャン。今はこっちに帰って来てるんだ」
俺達を招いて下さったエメラナ姫が迎えに寄越した、立派な護衛艦に気後れする俺を余所に、
「何ボーっとしてんだよー、兄貴」
とか言いながら乗り込んだのは、まぁ良い。けど、乗り込むなりいきなり艦内放送っぽい声に話掛けられても
当たり前のようにその声と会話を交わしているし、
「よぉ、ひっさしぶりだな、ナオ。相変わらずちっちぇなぁお前」
「そりゃ、グレンに比べればそうだろうけどさぁ」
「久しぶりですね、ナオ。元気にしていましたか?」
「巨、人が、2人!?」
『先程から何を驚いているんだ、ゼロ』
「ちっげぇよ、焼き鳥。ゼロじゃなくてランだろ」
「増えた?? しかも、何だこのふざけたやり取り」
「もう、2人共相変わらず仲悪いんだから。……でも、そう言えばゼロは?」
「ゼロでしたら、エメラナ様の元に居ますよ」
出迎えてくれた、何十メートルもある巨人達とも顔見知り(?)で、その内1人はさっきの護衛艦が変形した姿
だとか、もう訳が解らなくて、俺にはついていけない。そして、「ゼロ」って誰だ?
「ゼロは、兄貴だよ」
「は? 俺??」
詳しい話を聞いた所によると、その「ゼロ」って奴は他の宇宙からやって来た光の戦士で、俺達の宇宙をあの
カイザーベリアルから救ってくれた英雄で、なりゆきで俺の身体を借りていて、その時にエメラナ姫や巨人達と
知り合ったんで俺=ゼロらしい。
「あ。そういや、炎の海賊に逢えて、バラージの盾は見つかったのか、ナオ?」
「ああ、うん。一応。……このグレンファイヤーは、炎の海賊の用心棒だったんだよ」
「そうなのか!? じゃあ、もしかしてノアの神にも逢えてたりするとか??」
「逢えた、けど……」
目を輝かせて訊いたら、もの凄いしょっぱい顔で言い淀まれた理由は、後になってよーっく解ったけど、長年の
憧れで夢で目標だったんだから、仕方ないだろ。
「お久しぶりです、ナオ」
「久しぶりエメラナ……と、誰?」
エメラナ姫の隣に居たのは、俺と同じ位の年の男で、今度は何者かと思ったらナオも知らない奴のようだった。
「俺だ。ゼロだよ。親父と師匠と先生から、身体を借りるんじゃなくて自力で人間態を取る方法教わったんだ」
曰く、ゼロの母星である光の国は、俺達の宇宙に比べて太陽の力が桁違いに強いらしいんで、こっちに居る時は
戦闘時なんか以外は省エネの為に人間態を取っていないと辛いらしい。
「それでですね、ここからが本題なのですが、この姿のゼロがジャンに乗り込み宇宙間を渡ってみた所、体調等に
特に問題がなかったので、ナオ達を光の国に招くことも可能なのではないか。との話になったのですが……」
「焼き鳥の野郎が『姫様とゼロを同じに扱うな!』とか反対しやがって」
『限りなく近い姿をとっているとはいえ、能力も基礎体力も違うのだ。当たり前だろう!』
「みてぇな話をしてたら、レイが『……ペンドラゴンなら、多分大丈夫だ』って言い出して、親父達も何か賛成
したんで、お前らが興味あんなら頼むことにしたんだけど、どうする?」
「まぁ! ヒュウガおじ様とレイ様の船ですか。それは素敵です」
また知らない名前が出てきて、ナオもその人達のことは知らないらしいが、
「光の国に? 行きたい!」
と大はしゃぎしたんで、さっそく連絡を取って、数日後に迎えに来てもらえることになった。
そして、ペンドラゴンの船内で聞いた話によると……
「え。レイ、さんって、まだ5歳なの?」
「ええ、そうなの。だから、君の方がお兄ちゃんね、ナオくん」
「そうすると、さん付け無しの『レイ』で構わんだろ、レイ」
「ああ」
『ところで、そちらの御仁は、もしや先日私の修理の指示をだして下さった方か?』
「ん? ああ。そっちの船から話かけてるのか。……船としゃべるってのも、新鮮で良いな」
「ずるいですよー、クマさん。ぼくだって、怪獣とか星人とかとおしゃべりしてみたい」
「……いや、既に話しているだろう、オキ。そこに居るゼロや、船外の2人を質問攻めにしてたのは誰だ」
等々、一見単なるベテランクルーっぽいペンドラゴンの皆さんも、かなりクセが強いようだった。
そんなこんなで辿り着き歓迎された光の国でも、俺は逐一驚いたりついていけな過ぎて
「ラン兄貴ってば、頭堅過ぎだよ」
と呆れられたが、お前が意外と順応性が高過ぎるだけだと思うぞ、ナオ。
前から書きたかった、「可愛そうなランくん」ネタでした。
ちなみに、今回のゼロの人間態は某声の人ベースです
2012.2.5
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