ある日、マンがポツリと
「地球で見た桜、綺麗だったな」
と呟いた。すると、その呟きに弟達が
「花見も良いよな」
と便乗しだし、
「警備隊でお花見か。隊を空ける訳にはいかないから、ジャンケンで負けた奴が居残りになるのかな、やっぱり」
「……お前、時々めんどくさい所に地雷埋まってるよな、ティガ」
「ていうか、どうせ桜は無いけど寮の談話室にカラオケの機材はあるんですから、それっぽい花か作り物飾って
ノンアルコールで騒ぐ。ならアリじゃないですか?」
ということで、「地球の花見風」と称した、単なるカラオケ大会が開催されることになった。
6兄弟+メビウス、ゼロ、レイに、巻き込まれたヒカリとジャスティスまでを含む平成組6人の、総勢16人での
カラオケ大会で、
「単なるカラオケじゃつまらないから、クジで引き当てた相手の曲を選ぶ。っていうのはどうだろう」
と言い出したのが誰だかは定かで無いが、特に反対する者も居なかったので、六兄弟→平成組→メビウス→ヒカリ→
ゼロ→レイの順にクジを引き、主題歌または挿入歌縛りで相手の曲を指定していくことになった。
「それじゃ、私からかな。……ゼロか。えーと、そうしたら……1番新しい曲はまだ入っていないようだから、
1つ前のでいいかな」
そう言いながらゾフィーが入れた曲は、てっきり「Rising High」はまだ入っていないから「DREAM FIGHTER」か
「DREAM FIGHTER」が入っていなかったから「キラメク未来」かと思いきや、
「……『運命のしずく』かよ」
「ってことはまさか、入れようとしたのは『Lost the way』!?」
「プロモーションビデオ狙いですか兄さん」
確かにゼロ絡みの主題歌だけど、何で女子歌をチョイスするんだよオッサン。と、その場に居た全員が思い、
ボソッと一番キツイ評価を下したのはジャックだった。
「純粋に、良い歌だし、ゼロなら歌えるかな。って思っただけなのに……」
「ところで、次マンさんですよね。誰引きました?」
「ああ、うん。レイだね」
言い訳をするゾフィーはサクッと無視して2番手のマンが引き当てたレイは、「ウルトラスマイル」をゴモラと
一緒に振り付きで歌って場を大いに沸かせ、次いでセブンがタロウに六兄弟の歌を選んだのもウケた。
続いてクジを引いたジャックは、一瞬考えてから何も言わずにヒカリのテーマを入れたので、相手はヒカリだと
皆が思ったが、マイクを渡した相手は、なんとメビウスだった。
「は。え。何があったのジャック?」
「いえ、別に。たまには面白いかと思っただけです」
「えぇー。ジャック兄さん、そういうことするキャラじゃないですよね。しかも何でよりにもよってメビウスにヒカリ!?」
マイクを手渡されたメビウスや、歌われる当人のヒカリだけでなく、兄弟全員が目を丸くし、
「グッジョブですよ、ジャックさん!」
「……アグル。ガイアの手の中の超小型カメラ、没収して」
「ああ」
「えー。今のはオイシイハプニングだけど、撮影自体はウルトラの父と母の依頼なのに」
「だったら普通のハンディで撮れよ。そうやって隠し撮りっぽく撮ってるから、ユリアンに売るのか。って思われんだろ」
「まぁ、編集して売る気はあるけどね」
「……やっぱり没収。で、代わりにアグルかダイナが撮って。もしくは、後ろの方に設置して定点でも良いでしょ」
「あ、そうだぁ。全部撮ってるなら〜、後でジャスティス歌ってる所ダビングしてねぇ」
などと平成組の攻防が繰り広げる脇で、さっさと切り替えたエースが
「ブン兄かぁ……んじゃコレで(笑)」
と入れたのは、「すすめ! ウルトラマンゼロ」だった。
「うん。まぁ、そこそこオイシイかな。僕は……ゾフィー兄さんかぁ。もうちょっと捻れる人
引き当てたかったなぁ」
ぎこちないながらもお互いまんざらでもなさそうなセブン親子に、少し回復したタロウが選んだのは、
おそらく誰が引き当てても選んだであろう「ウルトラマンゾフィー」で、本人も
「どうせね。コレか六兄弟の2択だと思ってたよ」
との反応だった。
それと対照的だったのは、次のティガからコスモスで、
「何で『僕たちのヒーロー』な訳!?」
「いや、本人の曲もどれも良い曲なんだけど、歌詞が若干重いし、ウルトラ兄弟の皆さんの曲はどれなら
似合うかピンと来なくて、僕らの曲は迂闊に選ぶとジャスティスへのラブソングにされそうで……」
等々、悩みに悩んだ挙句よくわからなくなったのだという。
次いでガイアを引いたダイナも、しばらく悩んでから「ULTRA SEVEN」(全英語歌詞)を入れたが、その理由は
本人には
「ほら、アルケミースターズのメンツって、色んな国の奴が居るだろ。だから英語出来んじゃないかって思って」
と説明したが、実際は様々な意味でジャイアンなガイアの、壊滅的な歌声の被害を最小限に食い止める為に
短い曲の中から選んだらしく、ガイアの歌唱力を知っている面々には
「ダイナにしては良くやった」
と、内心で大いに評価されていた。
そんな真意に気付いていながら「まぁいいけど」と享受して、自分が引いたくじを確認したガイアはニヤッと笑い
「君達の曲だから、バッチリ歌えるよね、ジャスティスv」
と、「High Hope」を選び、コスモスにも目を輝かされたジャスティスは、渋々歌うかと思いきや、案外
まんざらでも無さそうに歌いきった。
続くアグルからジャックに「英雄」も、
「アグルにしては珍しい」
と評価されたが、妙な暑苦しさもとい熱血路線は結構ジャックに似合っていた。
「次はぁ、僕だよね〜。……ティガかぁ。ティガ歌上手だから、どれでも歌いこなせそうだけど〜、やっぱり
『LIGHT IN YOUR HEART』が一番恰好良いかなぁ」
そんなコスモスの次のジャスティスは、
「短いし、多少の敬意は払うだろうから」
とアグルに「ウルトラマンのうた」を歌わせた。
「えっと、次は僕ですね。……あ、ヒカリだ。けど、ヒカリのテーマは僕が歌っちゃったから、逆に僕のかなぁ」
偶然の結果とはいえ、何の嫌がらせ!? とまたもキレかけているタロウには気付かず、少し考えてメビウスが
選んだのは「ワンダバ CREW GUYS」で、ヒカリの反応が案外悪くなかったことに驚かれたが、
「……セリザワの記憶や感覚が残っているから、若干血が騒ぐんだ」
とのことで、その感覚はワンダバがあった隊に所属していた全員が「何か解るかも」と共感出来るものだった。
しかし、続けて自分の引いたダイナに「君だけを守りたい」を選んだのは、
「何で『ウルトラマンダイナ』じゃなくてそっちなんですかー」
「確かに、今度の映画でも使われてますけど、でも、ねぇ」
「コスモス以外は、まず名前が付いた方が浮かぶよねぇ」
と、ガイアにもタロウにもゾフィーにまでイジられた。
「放っておけ。暑苦しいのが続くよりはいいかと思っただけだ」
そんな言い訳は聞き流し、「残ってんのは誰だ」と思いながらくじを引いたらエースだったゼロは、考えるのが
面倒だからと、そのまま「ウルトラマンA」を入れた。
そして、最後に残ったのはマンの分で、主題歌はアグルが歌ったけれど他にも本人絡みの曲はたくさんあるし、
別に他の奴の曲でも構わない。と、あれこれアドバイスをもらいながらレイが選んだのは
「……『特捜隊の歌』?」
「うん。さっきヒカリとかが、『自分のいたチームの歌は血が騒ぐ』って言ってたし、俺もペンドラゴンのみんな
好きだから」
「そっか。ありがとう、レイ」
という訳で、マン的には最高の選曲で、締めとしても実に良い感じに終わった。
そんなカラオケ大会の一部始終を撮影していた映像は、途中から定点になった物以外にも、ガイアがもう一つ
隠し持っていたカメラでオイシイ所をバッチリ撮っていた物と合わせて、「ウルトラの父母用」「ユリアン用」
「セブン親子用」「兄弟用」「コスモス用」等々編集して配られ、どれも好評だったことと、その場の雰囲気が
実によく伝わる良い出来だった為、隠し撮りについては不問にせざるを得なかったという。
関内のカラオケで姉さんにしゃべったネタが、ようやく完成。
花見の時期はもう過ぎちゃいましたがね
2012.4.29
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