発端は、朝のワイドショー。「今日は何の日?」的なコーナーで今日が「キスの日」だと知ったタロウが、
エースとメビウスに耳打ちし、3人で朝食を作っていたマンに駆け寄り頬や目元に口付けた。
するとそれを見ていたジャックが、珍しく「では私も」と自分から便乗し、弟達3人から目で促された
セブンも、一瞬考える素振りを見せてから、額に唇を落とした。
そして、「兄さんからも!」とねだるタロウ達の頬に、クスクス笑いながらキスをし返してやるマンや、
「ジャック兄達もな」と代わる代わるキスをしたりされたりと戯れる兄弟をじーっと眺めていたレイは、
ゴモラ達─目を凝らして見るとケイトも混じっていた─のキス責めにあった後。とてとてとセブンの元に
寄って行き、ちょっと背伸びしてキスをすると、目だけでお返しをねだった。
そんな養いっ子が可愛くてたまらなかったセブンが、目一杯デレてハグしながらキスしてやると、満足げな
レイは、「ゼロも」と言ってセブンの腕を引いてまだ寝ているゼロを起こしに行き─流石に武士の情けで
他の兄弟は様子を見に行かなかったが─、見事「おはようのチュー」をゲット出来たようだった。
一方、所変わって平成組の4人は、ガイアが
「今日ってね、キスの日らしいよ。……ということでv」
と、ティガにまとわりつくように抱き付いて口の脇にキスをした上、
「ティガからもお返しにチューして」
とねだり、突っぱねられるかと思いきや、勢いに押されたのか面倒くさかったのか、
「はいはい。……コレで満足?」
と、目尻にキスをしてもらえた。
そこで更に調子に乗って─というよりは通常運行で─、
「アグルもして? ほっぺたじゃなくて、口でも良いよ(笑)」
頬を指して笑いながらねだると、アグルは鬱陶しそうに眉間に皺を寄せた。しかし、すぐに何か思い付いた
ように一瞬ニヤリと笑い、ガイアの胸ぐらを掴んで引き寄せると、噛み付くように口付けた。
そこから優に2〜3分。呼吸の苦しくなってきたガイアが「もういいよ!」と突き飛ばすまでかなり濃厚な
キスシーンを繰り広げていた2人を、ティガは「勝手にやっていれば」と放置し、誰にも構って貰えなかった
ダイナは
「俺、空気?」
などとボヤきながら傍観していた。
「え。何。ダイナもキスして欲しい訳? だってさー、ティガ」
「いやっ、別に、そうとは言ってないし」
「何で僕が。理由がない」
「だよな。うん。解ってるってか、そもそもして欲しいとは一言も言ってないから」
つい一瞬前までの自分達の行動に照れるでもなくサクッとからかってくるガイアと、いつだってバッサリと
クールなティガに、
(何で、何もしてない俺が一番気まずくて言い訳みたいなこと言ってんだろ)
とダイナは何だか切なくなったが、ちょっぴり羨ましかったり惜しいと思わないでもなかったとか。
そんなダイナ以上に空気だったのは、珍しく執務室に泊まり込みで真面目に書類を片付けていた―正確には、
ブチ切れたマンに缶詰状態にさせられていた―所為で朝の出来事に混じれなかったゾフィーで、仕上がった
書類を届けて別の資料を受けとるついでに、ヒカリとコーヒー休憩しても良いよね。と思いながら科技局を
訪れると、非番なので遊びに来ていた―本人は「お手伝いです!」と称していたが何の役にも立ってなさそう
だった―末弟メビウスが、朝の顛末を嬉々として語っていた上、きょろきょろと周囲の様子を窺うと、資料に
目を通しているので半分話を聞き流していたヒカリの頬に、素早く口付け、何事かと目を丸くしたヒカリに、
ニコッと笑いかけているのを目撃してしまった。
(……メビウス。私は通りすがりみたいなものだけど、科技局の皆さんもスルースキル高いだけだからね。
ああ、でも、とりあえず見なかったことにして、出直さないと。あと、今見たことはタロウには話さない
ようにしないと)
詰めが甘くて天然な可愛い末っ子に、心の中でツッコミを入れて自分の執務室に引き返し、コーヒーを
淹れながら
「……いいもん。私には、コレがあるもん」
と、秘蔵アルバムを引っ張りだして眺めていると、新たな書類を持ってきたり確認や報告をしに来た弟達に
見つかり、「今日までの分終わったんですか?」などと怪訝そうに問われたが、一区切りつけて休憩中だと
答えると、多少疑われはしたが処理済みの書類の山を見て納得してもらえた。
「所でそれは何ですか。……アルバム?」
「そう。微笑ましくて可愛いでしょ?」
手元を覗き込んで来た弟達の問いに答え、とある写真を指差して見せると、全員が一瞬絶句した。
「確かに微笑ましいし可愛い。けど、コレ、マンだよな!?」
「覚えてはいないけど、多分私、だと思う」
「何でゾフィー兄が、マン兄のガキの頃の写真を持ってんだ?」
「しかも、母さんから頬にキスして貰ってるって、どういう状況ですか!?」
そこに写っていたのは、若かりし頃のウルトラの母が、レイ位の年頃の幼い少年の額にキスをしている様子で、
たおやかに微笑む母と照れながらも嬉しそうな少年の様は、確かにとても微笑ましくかつ可愛らしかった。
けれどその少年が、他の弟達だけでなく、本人と、実は幼少期から面識があるセブンから見ても、マンにしか
見えないことが問題だった。
「コレは、母というかマリー様のご成婚記念式典の時に取られた写真でね。ご成婚1万5000年記念誌を
出すに当たって、写真の選別をしていたら出てきた。って見せていただいたのを焼き増ししてもらったんだ」
マン本人は、色々あって少年期以前の記憶の欠けている所為でさっぱり覚えていないが、写真には写っては
いないが傍らに居た両親とも言葉を交わした記憶が母側にはあるそうで、その記憶に依れば十中八九間違い
なく後のマンだと思う。とのことらしい。
「他にも、言葉を交わしたり握手やハグなんかをした人も居たし、相手から手の甲にキスされたりはした
そうだけど、結婚記念のプレゼントのお返しにキスしてあげた子はこの子だけだったんだって」
曰く、
『だって、小さなあの子が、ほっぺを真っ赤にし、目を輝かせて懸命にこちらを見上げている様子が、
とても可愛らしかったんですもの』
とのことで、キスに驚いてあわあわしている様が更に可愛くてハグまでしたそうで、後で「あんな子が
欲しいですわね」と父―当時はケン―とも話したという。
「……何で、そんな素晴らしい出来事を覚えていないんだ、私!?」
「いや、まぁ、仕方ないだろ。昔のこと全部覚えてないんだから」
「良いじゃないですか、ゾフィー兄さんから聞けた上に、写真という物証もあった訳ですし」
「そうそう。おまけにハグ写真や、その当時の映像とかまでダビングしてもらったじゃん」
「若い頃の母さん、可愛くて綺麗だったなぁ。今でも若くて綺麗だけど」
思い掛けない所で、過去の衝撃のオイシイ体験を知り、記憶が無いことを悔やんだマンを、必死で宥めた
弟達は、とりあえず
「もっと早くソレ見せて教えてやっても良かっただろ」
などと思ったとか思わなかったとか。そんな、地球(日本)では5/23の話。
柳佳姉さんの呟きを形にしてみました☆
なブツでございます。
とりあえず、振られたネタは全部拾った……筈!
平成組パートは調子に乗りましたスンマセン(笑)
あと、マリー様はユリアンの1、2段階下のお貴族様辺りの出自で良いと思います
2012.5.26
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