6月半ばのある日のこと。
	レイが、床いっぱいに何枚も画用紙を拡げてお絵描きをしていました。

	「何を描いたのかな?」
	「セブン。と、ゴモラとリトラとエレキングとジャミラと……」

	その中の1枚を拾い上げ尋ねたマンは、レイの答えを聞いてピンと来ました。

	「ああ、そうか。もうじき父の日だものね。ということは、こっちのは父で、コレはヒュウガさんかな?」

	セブンの養いっ子なレイは、母の日にも、セブンの養母に当たるマリー様と、自分を拾ってくれた
	ペンドラゴンのハルナお姉ちゃんの似顔絵を描いていたので、父の日はその3人かな。と納得する
	マンに、レイはコクンと頷いて

	「父と、ボスと、ゴモラとリトラと(以下略)」

	と説明してくれましたが、

	「そうなんだ。上手だね。……こっちは、誰の絵かな?」

	似顔絵らしき絵は他にも何枚もあり、どれも3人の父達と同じような構図で、レイの大好きな怪獣達が
	描き込まれていたので尋ねると

	「クマさん。オキが、『母の日にハルナを描いたから、父の日にはクマさんも描いたら良いと言った」

	とのことで、母親代わりのお姉ちゃんと、お父さん並に頼りになるお兄さんだから、まぁ解らなくもないかな。
	とマンは思いました。そして、

	「じゃあ、こっちのは?」
	「オキ。ボスもハルナもクマさんも描いたのに、オキだけなくてずるい。らしい」

	という、もう一人のお兄ちゃんオキくんの屁理屈も、
	(メビウスが小さい頃、タロウが同じようなことしていたなぁ)
	と懐かしく感じたのですが、

	「それじゃ、今描いているのは?」
	「ナイス」
	「そう。でも、何でナイスなのかな?」
	「ナイスは、『ウルトラのお父さん代表』と言っていた」
	「うん。まぁ、確かにそれはそうだね」

	という辺りで、「何かちょっとおかしいんじゃないかなぁ」と思いはしましたが、わざわざ訂正するのも
	無粋な気がしたので好きにさせ、家事に勤しむことにしました。
	その間に、ナイスの絵を描き終え、更に誰かを描きだしたレイに、
	「マンか、それ?」
	と、今度はゼロが訊くと、レイはプルプルと首を振って「ジャック」と答えました。

	「は!? 何でジャックなんだよ」

	レイがそれまでに描いた分は、マンからどれが誰でどんな理由か聞いていましたが、その流れでなんで
	ジャックが来るんだよ!? と目を丸くしたゼロに、レイは不思議そうに

	「ジャックも、『お父さん』じゃないのか?」

	と訊き返しました。
	そのやり取りが聞こえていたマンは、

	(ああ。やっぱりレイは「家族」の概念がよく解ってないんだな)

	と思いましたが、それをゼロに説明するのもまた難しいので、

	「確かに、ジャックも息子が居るから『お父さん』で、色んな『お父さん』の絵を描いたんだね、レイは」

	とレイの頭を撫でてやり、ゼロには

	「レイが満足なら、何でも良いんじゃないかな」

	とだけ一言掛けておきました。
	しかしそれだけでは腑に落ちなかったゼロが、セブンを始めとする他の兄弟や獅子兄弟、平成組などにも
	訊いてみましたが、

	「レイ的には『父の日』はそういうもの。ってことで良いんじゃない?」

	といった感じの、マンと同じような答えしか返って来ませんでしたとさ。





マン兄さんは、母の日に絵を描いてもらってるしね(笑) 2012.6.17