ある日。ペンドラゴンのオキは、訳あって現在は不在のクルーであるレイからのメールを前に、
大興奮していた。
「うわぁあ〜、スゴイスゴイ! ゴモラにリトラにエレキングにレッドキングにシーボーズに、
これなんかタイラントだー」
今はM78星雲光の国に身を寄せているレイから「ナイスたちと作った」という件名で送られてきた
メールに添付されていたのは、前座担当でウルトラのお父さん代表で保育士なナイスの保育園で
作ったものらしい、お手製鯉のぼりの写真で、手形や足形をウロコにしているのが、いかにも
「保育園の工作の時間に作りました」感満載だった。しかし、その足形が主に怪獣墓場の怪獣達の
ものなことが、怪獣オタクのオキには垂涎のものたらしめており、
「クマさんクマさん。ココ! この足跡、もうちょっとアップにして下さい!!」
「お前な、それくらい自分で出来るだろ」
「出来ますけど、解像度保ったまま拡大して欲しいんです! だから、お願いします。魔法使いさん」
と、メカニック担当のクマノに頼み込んでみたり、
「……オキ。涎が垂れているぞ」
「もう。完璧に好きなものを前に興奮した幼児ね。夜辺りに熱を出さないか、心配になってきたわ」
などと、ボスのヒュウガや副長のハルナに呆れられた。
「うわ〜。ゼットン大集合だぁ。でも、何だろう。この横のヒールの跡っぽいのは……」
クマノに拡大してもらいつつ、1つ1つの足形を舐めるようにじっくり眺めていたオキは、初代から
ハイパーまでの歴代ゼットンの足跡が並んだ隣の、小さな跡が気になった。
「インクが飛んだとか垂れたにしては、綺麗な形になってるしなぁ。やけに小さいのも気に
なるけど、こんな足形の星人居たっけかな??」
「気になるなら、レイに訊いてみたらどうだ?」
「そうですね。この辺りの、ウルトラ戦士の皆様っぽい足形の横の方にも、ちょっと判らないの
ありますし」
ということで、光の国の通信室にレイを呼び出してもらい尋ねてみると、ゼットンずの脇の足跡は
ヒール跡で正しく、ゼットン達の主人でレイの姉であるケイトのもの。ウルトラ戦士達の足跡が
並ぶ端の方の謎の足跡は、セブンの息子でレイの義兄なゼロの仲間達のものだとのことだった。
「あー、最近の人達かぁ。それじゃ、僕が判んなくても仕方な……くないね。最新だろうが
何だろうが、網羅してこそだよ。うん」
「何を自己完結してるんだ、お前は」
それがオタクの矜恃ってやつです。怪獣・星人はほぼ完璧だけど、ヒーロー側は疎いんじゃ
片手落ちですからね。と答えるオキは放っておき、
「ああ! 前に会った、あの連中の足跡か」
「ボスはご存知で?」
「ほら、お前も会っているというか、指示出しただろう。休暇の時に」
「あ。ああー、あの時の」
何気にZAPのクルーとUFZはOVAで面識あることを思い出したボスが、「元気にやって
いるのか」と画面の向こうのレイに尋ねると、レイはコクンと頷き、近くに居るからと呼びに
行った。そして、ひとしきり初対面やら再会の挨拶を交わした後。鯉のぼり作成時の話になり、
「焼き鳥の野郎は、最初インクに足浸すの躊躇ってやがったんだよな」
「ああ。細部に塗料が入り込むと、不具合や故障の原因になり得るからか」
「けど、親父んとこのウィンダムとか、エースキラーの足跡があんのを見て、」
『エスメラルダ星の科学力が、光の国はともかく、ヤプールごときに負けるなどあり得ん!』
「……と。そこは、『いつ如何なる物質で構成された星に降り立つとも限らないので、どのような
液体も通さない筈だ』ではないのかと思うのですが」
とか
『……ナイトは、右足ばかりなのを気にしていた』
「ええ。向きが揃っていた方が、図形として美しいのかもしれませんが、数人対になった方が居た
以外は、ほとんどが右足だったもので」
「僕もそれは気付いてましたけど、気にはしてなかったですねぇ」
とか
「ところで、ケイトのもの以外にも、ローファーっぽい足跡もあったわよね」
「あ。バルタン星人の足跡に混ざってたやつですね」
「あー、それな。タイニーの。『折角だから、両方で付けておこうか』ってよ」
とか、アレコレ盛り上がった。
ついでに、ケイト以外の怪獣墓場のおねぇ様達は、
「我がペダン星の技術力が、ヤプールやらその辺りの星に劣るわけがないだろう!」
「そうよ! ロプスだってそんな柔な機体では無いわ」
な2人が、3色キングジョーやダークロプスの足形の両脇に自分達の足跡も残した他は、
「汚れるのはイヤ」「興味がない」「何で私まで」と不参加だったという。
更に、
「でも、歴代のゼットンやバルタン星人はともかく、キングジョーはカラーリングと、ちょっと
合金も違うのかもしれないですけど、基本的に型は一緒だから、流石の僕でも見分けが……」
「何言ってんだ。合金もサイズも重量も違ってるんだから、拡大して沈み方や跡の形状を見れば、
判るだろ」
「判んないですよ」
「あら珍しい。言い分が逆転してるわ」
「その辺は、クマノの領域だからな」
なんてやり取りも、あったりしたという。
戻