ある日のこと。顔に、割とはっきりと「面倒臭い」と書かれていそうなミラーナイトが、
深い溜め息を吐いていた。
「どしたー、ミラーちゃん」
「ああ、いえ、もうじき『父の日』というものがあるそうじゃないですか」
『そうだな。しかし、それがその溜め息と、どう関係するというのだ?』
「先月の『母の日』には、帰省こそ出来ませんでしたが、母さまに贈り物はしたんです。
それで、そのことを聞いた父が、『たまには自分にも』と催促して来まして……」
「鏡の国の奴にしちゃ、珍しい性格してんだな、お前の親父。あそこの連中は、基本
他人には無干渉だろ」
ゼロの、ベリ銀の時に門前払いされかけたし。との嫌味も籠った反応に、ミラーナイトは
「半分、地球人の血を引いていますからね。ですから、地球の文化風習にも詳しいんです」
と苦笑した。
「へぇー。んな奴も居んだな。でもってお前、母ちゃんはエスメラルダ人だろ?」
『考えてみると、一般的な二次元人ならば、他星人と子を儲けることは、まず無いからな。
それも血筋故か』
「ん。ちょっと待て。まさかお前の親父って、ミラーマン!?」
なーんかどっかで聞いたことあんな。と記憶を辿ったゼロが、ハタと気付いて声を上げると、
あっさりと肯定された。
「ええ。一応は」
『姫様の護衛を任ぜられるまでは、父君の元で修行していたのだったな』
えぇー。2人揃ってるとこ見たことあるけど、全然親子らしく無かっただろ。
そんなゼロとグレンのコメントは、
「まぁ、他の星の血は引いていますが、私も父も鏡の国の民ですから」
『ある程度の年齢になると、男親と息子で、ゼロとセブンほどベタベタしている方が珍しい。
とのデータがあった』
等々、価値観の違いを説明されて終わったが、肝心の
「で、父の日はどうすんだ?」
との問いには
「どうしましょうね。趣味も好きなものも知りませんから」
と返ってきたので、やっぱり父子の交流は大事だろ。と、ゼロはこっそり思わなくも無かったとか。
光の国の小学生以下の子供達を対象とした、父の日の作文大会に、子供側として審査に
呼ばれたゼロは、「何で俺が」と言いつつも、結構真剣に全ての作文に目を通していた。
どの作文も、書いたのは小学生以下だけに拙い文章のものばかりだったが、父親への
尊敬やら憧れやらが溢れまくっていて、ゼロには羨ましくてくすぐったい感じがした。
その中でも、特に父親が大好きで大好きでたまらないらしい少年の作文を、「これとか
良いんじゃね」と選ぶと、何故か審査員の一人であるナイスが、にへらっと脂下がった。
「は? 何でお前がそんな嬉しそうなんだよ」
「だってー、それ私の息子の作文だし??」
キャッとか、どこの乙女だよ。と突っ込みたくなるような仕草で、デレデレと息子の愛らしさと、
息子がどれだけパパを尊敬してくれているか語るナイスを、他の審査員達は、
「ゼロやレイを誉められた時のセブンと同じスイッチ入っちゃったね」
「そうですね。まぁ、ナイスの息子さんはまだ小さいですし、本気でお父さんを尊敬しているようですが」
等々、生暖か〜く眺めていたが、ゼロ的には、作文に書かれた「おもしろくてカッコイイお父さん」と、
ナイスがイマイチ結びつかず、お笑い担当なのは間違いないけど、ナイスのどこが格好良いんだ?
と首を傾げていた。
「ナイスは、お父さんや保育園の先生としては、結構きちんと慕われているんですよ」
「あれでも一応歴とした宇宙警備隊の隊員だし、誰も本気を出した所を見たこと無いけど、本気を出すと
すごく強い。って噂もありますよね」
「そうそう。太鼓持ち気質なのは事実だけど、子供達に何かあったら別人のようになる。って噂だよね」
「あとは、場を和ませたり、隙を突くのが上手いのは事実でしょう?」
等々─本人の耳に入ると調子に乗りそうなので─、こっそり言われたが、やっぱりそんなとこ
見たことねぇから、わかんねぇし。が、ゼロの率直な感想だった。
ミラーマンさんの、公式でのナイトくんとの関係とか性格とか知りませんが、
何かふと降りてきたので。
ウルトラのお父さん代表の真の実力も知りませんけど、夢見てみても良いじゃないですか
そんな父の日ネタ2本でした。
2013.6.9
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