光の国で保育園の園長をしているナイスが、受け持ちの園児達に
「もうじき敬老の日だから、今日はおじいちゃんおばあちゃんの似顔絵を描こう☆」
と呼び掛けると、案の定

『「敬老の日」の意味は検索したが、僕におじいちゃんおばあちゃんは居ない。レイは
 キングやウルトラの父を描くと言っているが、僕もその人達で良いのか』

との質問が、ナインから飛んできた。

「もちろんだとも。友達やお兄ちゃん代わりのおじいちゃんもおじいちゃんだし、キングは
 みんなのおじいちゃんだから、その2人でバッチリさ!」

グッと親指を立てて答えたナイスは、『そうなのか』と割とあっさり納得してくれたナインと、
「母は、母の日だから違うと、マンが言っていた」
とナインに教えるレイに、内心かなりホッとしていた。というのも、数日前に

「キングや大隊長が『おじいちゃん』は一向に構わないけれど、母上が『おばあちゃん』は、
 レイが言い出したとしても、うまく軌道修正して止めさせるように」

と、笑顔で口調も柔らかいのに、目が笑っておらず何かオーラも怖いマンに釘を刺された直後に、
ほぼ同じことをタロウからも言われていたからだった。
そんな訳で、W祖父さんの似顔絵を描かせ、他の園児達と一緒に紙粘土や折り紙などでプレゼントも
作って持たせたナイスは、達成感でいっぱいだったが、工作中にナインが何やら考えているっぽかったのが、
ちょっぴり気になっていた。しかし、
『おじいちゃんおばあちゃんは、親の親なんだな』
「うん。だから、父と母は、おれやゼロのおじいちゃんおばあちゃん。でも、母は母の日に似顔絵を
 描くから、敬老の日には描かないと、マンやタロウが言っていた」
というやり取りが聞こえていたので、私の使命はとりあえず果たしたよね! と、気にしないことにしておいた。 


その日の夜。お迎えが来て帰宅し、キングや父の似顔絵を見せた後。おもむろに

『僕を作ったのはビートスターだから、ビートスターが父さんに当たると考えられるけれど、
 兄さんをベースにしているので、ある意味兄さんも父さんのようなものかもしれない』

などと語り出したナインに、ジャンが意図を掴めずに面食らいつつも、ひとまず『そうかもしれないな』と
返すと、ナインは更に

『それから、名付け親も親のようなものだから、母の日にはエメラナ姫の絵を描いた』
『あ、ああ。そうだったな』

と続け、その斜め上の発想を思い返し、又も軽いショックに陥っているジャンには気付かず、

『そして、兄さんはエスメルダ星の護衛艦だから、それらを総合すると、エスメルダ星の国王が、
 僕のおじいちゃんに当たるのではないかと考えたのだが、何か間違っているだろうか?』

と締めた。

『エメラド陛下が? 確かに、そこに至る理屈に、齟齬は無いように思われるが……』

昼間、ナイスが聞いていた部分以外でも、レイ(やゴモラ)と「祖父母とは何ぞや」的な話をしたが、
レイもイマイチよく解っておらず、解ってない同士でアレコレ検討した結果。
『僕とっての、レイにおけるウルトラの父的な存在は、多分エスメルダ国王』
との結論に達したのだという。
そして、翌日UFZの他の面々にも意見を訊いてみたが、

「あー、まぁ、大筋では間違ってねぇんじゃねぇか」
「そうですね。とりたてて、問題があるようには思えません」
「エメラナが母親代わり。って発想は、ちょっとどうかと思わなくもねぇけど、母の日ん時に
 アリにしてんだもんな」

といった感じで、「ま、別にいんじゃね?」が共通見解のようだった。
しかし、そうなると、国王陛下に、紙粘土や折り紙の工作を贈るのか? しかも、実の孫とか、
それこそウルトラの父とゼロやレイみたいな関係だとお互いが認識しているならともかく、
お互いによく知らない相手で、精神年齢は幼児だけどパッと見はデカいし……。という
新たな問題も出てきた。かといって、それだけで却下するわけにもいかないので、

「ひとまず、エメラナ様から陛下に説明して下さるよう、事前にお話しておきましょうか」
『そうだな。私やナイトが直接お話しするよりも、姫様にお願いした方が適切だろうな』

という訳で、エメラナに連絡をした所、

「まぁ。お父様がナインのお祖父様ですか。素敵ですね。解りました。お話ししておきますね」

と快諾され、ナインから母の日にもらった似顔絵は、額に入れて飾ってあると教えてもらった。
そして、プレゼントの方も、

『トモヤに呼ばれたから』

と地球に行き、用事を済ませた後、試しに一条寺友也少年や、ギンガこと礼堂ヒカルと
その友人達にも敬老の日の話をしてみると、

「僕が祖父に贈る予定のものを、もう1つ用意してあげましょうか」

と友也から提案され、見るからに高価そうな箱に入った万年筆を持ち帰って来たが、
保育所で作った工作も贈り、どちらもそれなりに喜ばれたという。
更に、

「敬老の日に何かしたいなら、うちのじいちゃんのマッサージしに来るか? じいちゃん、
 小学生の時にあげた『肩たたき券』をまだ持っててさ。毎年1枚ずつ使ってくるんだけど、
『いつまでたってもうまくならないな、お前は』って言われてるんだ。でも、ナインなら
 ロボだから力もあって、ツボとかもわかるだろ」
「……お前なぁ、高性能な人型ロボを、マッサージチェア扱いかよヒカル」
「そうだよぉ。それはちょっと失礼だよ〜」
「それに、加減がわかんなかったりするかもしれないじゃない」
「ジャンナインは学習能力が高いですし、リアルタイムでの検索と即時の修正が可能ですから、
 マッサージ位でしたら難なく出来る筈です」

という訳で、ヒカルの祖父 礼堂ホツマ祢宜の肩揉みをしに行くことにもなったらしいとの話を、
ナイン→ジャン→ゼロ→セブン→ウルトラ兄弟経由で聞いたウルトラの父とキングが、ウルトラ
兄弟主催の敬老の日の催しの最中に、ゼロやレイに試しに肩たたきをねだってみた結果。
「は。何で俺がンなこと」
とやる気が無く、力も入っていないゼロの方が、もの足りないだけまだマジで、大真面目に渾身の
力(覚醒状態)でレイが振り下ろした拳に、肩を砕かれかけた。しかし、大慌てでゼロを含む周囲に
注意されたレイは、何が悪かったのかよく解っていない様子で、今度はキングに低周波マッサージ
代わりにゴモラの超振動波をかまし、大目玉を喰うと思いきや、御老公は
「丁度良い刺激ぢゃのう」
とご満悦で、どういうことかと―止めるのが間に合わなかった―周囲が説明を求めようにゴモラを見ると、
『出力を調整出来るんだヴォ』
とでも言っているかのようなドヤ顔をしていた。

その後。キング爺はいい大人な孫(的なもの)や弟子(本人未承諾含む)にもマッサージをさせてみた所、
常日頃から爺の世話を焼き
「僕は兄さんのサポーターですから」
と称するアストラが最も上手く、次いで
「拳法をたしなんでいますし、隊長のリハビリに付き合わされたりしましたから」
なレオと、足が悪かった当人のセブンがそこそこ上手かったが、キングには少し力が強すぎたという。
そして、一番下手というか力の足りなかったヒカリを
「知識はあっても、割と非力で実戦経験伴ってだもんねぇヒカリちゃん(笑)」
とからかったゾフイーが、
「人体工学は、ここに居る誰よりも把握しているからな。圧したらマズいツボと、足の腱を切るのと選ばせてやる」
と日本刀を手にキレられ、良い年したオッサンらが何してんだ。と呆れる弟達も、おさんどんをしていて
マッサージ大会に参加していなかった次男四男が、揃って

「まぁ、私も痛め付ける方が得意だけどね」
「私も、どこの筋肉や関節を、どう酷使すると、どう響くのかでしたら、それなりに」

なんて物騒なことを言っていたり、

「俺、アロマなオイルマッサージ出来っけど」 
「僕は、ヨガがちょっとなら」

との、五男六男の意外なんだか解るような気がするんだかな発言から、

「あ、僕はタイ古式マッサージ出来ますよ」
「俺テーピングは結構うまいっすよ」
「どちらかといえば、負担や体力消費の少ない動きには、詳しい方かと」
「ゼノさん、机の下に何か足つぼの板置いてるよな」
「青竹もありますし、ツボ圧しも幾つか持っていますよ」

等々、若手が得意分野やら何やらに話を発展させていき、結局地味に一番高評価だったのは、80の
お灸だったりするという。




今更敬老の日ネタ しかもオチが迷子に…… 2013.9.21