宇宙警備隊の寮ラウンジには、誰がいつ設置したのか不明だが、カラオケ機材があり、誰がメンテを
しているのかもわからないが、常にちゃんと新曲が更新されていたりする。

そして、各自飲食物(主に酒とつまみ)を持ち寄った非番や勤務明けの隊員達が集ってカラオケしつつ
ダベっていることはさほど珍しくないし、忘年会や打ち上げなどでも、頻繁に使用されており、
タロウの提案でギンガこと礼堂ヒカルとその友人達も招待しての今年の忘年会も、ウルトラ兄弟を
中心にラウンジで開催されることになった。

一応事前にヒカルを通じて連絡はしておいたものの、当のヒカルが半分夢だと認識していた所為で、他の
3人もヒカルから聞いた夢の話と同じような夢を見ていると認識している節があったが、ジャンナインからの
通信があった一条寺友也だけは、迷惑そうな顔をしながらも、状況をほぼ正確に理解しているようだった。
しかし、本来の姿でも以前地球に居た頃の姿でもない人間態を採っていた為、夢の可能性も捨て切れて
いないかな。と読み取れた者も数人居たが、放って置いても特に問題は無いので流したらしい。
しかし、

「夢だとしたら〜、全員で同じ夢を見てる。ってことだよねぇ。それってすごくない〜」
「そうよねぇ。しかも、何かすごくリアルな感じがするし」
「てかさ、俺らギンガとタロウ以外はほとんどウルトラマンのこと知らないのにこんな大勢居るってことは、
 夢じゃない可能性も無くね?」

等々、かなりサクッと現状を受け入れ、最近の若い子は順応力が高いねぇ。というか、そもそもこの子達、
友達がウルトラマンだったり自分が怪獣にライブした現実をあっさり受け入れてたもんなぁ。と、主に
昭和組のおじさん達を驚かせた。

そんな訳で、早々に馴染みはじめた高校生達を囲んでの忘年会は、ライブした怪獣などの接点もあるし、
共通する話題もチラホラあったので、割とうまいこと始まったが、

「なぁ、ヒカル」
「ん。どうした健太」
「あそこに、すごい美人のお姉さん居んじゃん」
「どの人〜?」
「あ、あの人じゃないの、千草。壁際の、銀髪ボブの人」

そういって美鈴が指差したのは、端の方で他数人と話しているティガだった。

「そう。その人なんだけど、あの人何で俺とヒカルのこと、あんな睨むような目で見てんだろ」
「珍しいよねぇ。アノ鉄壁の外面を誇るティガが、端っから敵意剥き出しなのは」
「!?  どちら様ですか」
「君らの世界とも、この世界とも違う次元の、地球の化身なウルトラマンの、ガイアっていいますよろしくー」

いつの間にか高校生達の輪に混じっていたガイアは、ザックリとした自己紹介をすると、

「ティガはね、自意識高いしアイドルだから、自分の姿で無様な戦い方されたのが気に入らないみたいなんだ」

ねー。と、ティガに歩み寄りながら説明し同意を求めると、ティガ本人は眉を顰めたまま何か言いたげな顔をしたが、

「仕方ないだろ。こいつら訓練も何も受けてない、単なる高校生なんだから」

と、隣に居た男ーダイナーが、健太達をフォローしてくれた。

「でも、僕っていうか我夢も、ド素人で頭脳派の大学生だったよ?」
「混ぜっ返すなよガイア。……てか、我夢が戦い方ちゃんと覚えたのは、XIG入ってからだろ」
「そもそも、着地時の砂埃がトレードマークだったのはお前だろうが」

自分達の掛け合いに、冷ややかなツッコミを入れたティガに、どうにか話題を変えて場を和ませないと……と、
無い頭を絞ったダイナが、
「とりあえず、今日はブレイコーってことで!  折角カラオケあるから、何か歌えよ」
と、ヒカル達にマイクを手渡した。

「え〜、何歌う〜?」
「うーん。1人で歌うのは恥ずかしいから、みんなで歌わない?」
「そしたら、降星小の校歌入ってたから、とりあえずコレ行っとくか?」
「いや。それよりも、こっちだろ」

という訳で、トップバッターの高校生達が入れたのは、『ウルトラマンギンガの歌』で、その後に各自の主題歌が
数人続いた後。姫様御一行が美鈴と千草に「一緒に歌わないかしら」と持ち掛けて『夏の風  秋の風』を歌い、
「だったら俺らは」とヒカルと健太を誘ったUFZが『我ら〜』を歌い、
『友也は歌わないのか』
とナインから訊かれた友也が、
「仕方ありませんね」
とナインも誘い『Starlight』を歌った辺りで、早くも後は好きなの歌っていんじゃね。的な空気になり、酒も
入り始めていたおっさん達からの「誰か何か芸やれ」との声に「待ってました」とばかりに、ゼロがUFZの仲間達と
レイを伴い入れた曲は、某恐竜ダンスだった。

「あー、何かレイと一緒になって毎週テレビの前で練習してたけど、他の子も巻き込んでたんだ」
「ジャン兄弟までは、まぁ解るとしても、後の2人までよく覚えたもんですねぇ。特にグレン」
「どういう意味だ、タロ坊。グレンの方が、ノリ良いからやりそうなんじゃね?」
「その根拠は私が解説しよう!  要するに、並び順でどの戦士を担当しているか推測すると、グレンはダジャレ
 好きな青いオッさんポジションに当たる訳なんだ」

後で聞いた所によれば、
「俺がキングで、レイはウッチーな。で、ナイトは緑繋がりで、グレンがのっさんで、あとの2人はどっちが
 どっちでも良いから!」
と割り振り、グレンとジャンの苦情は一切聞き入れなかったそうだが、ナインがピンクで構わないと言ったため、
結局ジャンも仕方なく了承したので、グレンも多数決で折れざるを得なかったのだという。

そんな息子達の撮影に忙しいセブンの横でしみじみと呟いたマンへの、タロウの補足に首を傾げたエース他に
解説したのは、お父さん代表で保育士なナイスで、ゼロ達の次に喜々として入れた『勇気のタマゴ』は、セリフ
まで完璧だからこそツッコミ所が満載だった。

そして、歌以外でも

「きれーなお姉さんなら、騙されても仕方ないよなぁ。ピット星人とか、マジに美人でセクスィーだったし。
 そっすよね、セブン先輩」
「俺に振るなマックス!」
「セブンは、ピット星人以外でも、美人絡みのトラブルは結構あったけどね」
「てことは、お前も気をつけろよー、ゼロちゃん(笑)」
「うっせ。どっちかってぇと、お前の方が引っ掛かりそうだろグレン」

などと、健太、マックス、グレンが意気投合していたり、

「へぇー。ネクサスは適応者。ってのが何人も居て、その中の一人が戦場カメラマンなんだ」
「別に戦場ばかり撮っていた訳ではないけどな」
「ちなみに、どんな国に行ったことが?」
「…….ヒカル。カメラマン志望の健太が姫矢の話に食い付くならともかく、何で君が。世界を旅した話なら、
 僕も出来るよ。光太郎は世界を股に掛ける冒険野郎だったんだから」
「へえ。それで?  他には??」
「そうだな……」
「って、聞けよ!」

とか、大きくなってもタロウがヒカルにスルーされている様などを、楽しく眺めながら飲んでいてほろ酔いのゾフィーが

「あ、そうだ。ヒカリちゃんコレ歌えば」

と、冗談でヒカリに入れた曲は、男気あふれる侍的歌詞と曲調で、おまけに若干愛を語っていたりもするもので、
普段は酒が入ったザムシャーがドヤ顔で歌うのを聞かされてウンザリしたり、今日のようにゾフィーに冗談で
勧められてキッパリ断ったりしているものだった。しかし、珍しく「別に構わない」と承諾してマイクを受け取り、
更に珍しくアグルまでもが、「俺も良いか?」と便乗して来た。
そして、クールな青い剣士達が、実に良い声で、時々各々の恋人達に目線をやりながら歌いきった結果。普段は
押せ押せな愉快犯のガイアも、勢い任せなド天然のメビウスも、顔を覆って真っ赤になって照れる。という、
世にも珍しい状況が出来上がった。
 
 
「……アグルって、半年とか1年に1度位、デレたりしなくも無いんですけど、何も人前で発動しなくても//////」
 
頬を押さえながらそうこぼすガイアに、
 
「ヒカリちゃんもねぇ、3〜4年置きで、1週間位はデレ期来るんだよねぇ」
 
と、ポーッとしているメビウスに代わって、「伊達に長年親友してないよ」なゾフィーが付け加えた。
 

「えっとぉ、あの人達は……」
「下の方で括ってる目付きの悪い蒼髪のアグルの嫁が、オレンジ髪のガイアで、ポニテで三白眼のヒカリ博士の、
 すっごい年下の一応恋人が赤いツインテのメビウスだよ。そして、ネオスは私、セブン21の――」
「寝言は寝てから言ってくれないかな。誰が、誰の何だって?」
「まあ、ネオスはこの通りのツンデレだから、人前じゃ認めてくれないけどねぇ」
 「僕だって、ヒカリさんのこと認めてないからね!」
(あれ?  こないだ、ガイアもメビウスも男って聞いた気がするし、あのネオスってひとも男に見えるけど、
まぁ、世の中いろんなひとが居るもんな)

何しろ人数が多いので、まだ全員は把握出来ていない千草の呟きに答えた21の言葉を遮ったネオスに呼応するように、
兄馬鹿全開でメビウス達のことを未だ反対していると主張したタロウの叫びを聞き流しながら、、ヒカルは少し首を
傾げたが、あえて言うこともないかと黙っておいた。


「ところで、ダイナ。ティガも、デレることってあるのかしら?」
「ティガは、5年に1度位、デレるっているか甘えて来ることが無くも無い。ってな所すかね」
「え。うそ!? そんな所見たこと無いんだけど」
「そりゃなぁ、そういう時は、絶対人前に出ないっていうか、『誰とも関わりたくない』とか言うくせに、いつもの
 プチ鬱かな。って思って俺も部屋出てこうとすると止める。ってな感じだから」
「そうなんだ。ちなみに、そういう時って、ダイナはどういう態度取るの?」
「グチでも我儘でも何でも聞いて、ベッタベタに甘やかす」
 
便乗するかのように尋ねたユリアン達に、サラッと答えたダイナは、もしかしてコイツも実は酔ってんのか? 
と思えなくも無かったが、当のティガから制裁が下らないのは珍しいと思い指摘すると、

「疲れたっつって、部屋帰った。何か、まだ時々ダークに引っ張られそうで、ダルいんだってさ」

とのことで、いつの間にかマンに許可を取って自室に戻っていたらしい。

「ああ、それもあって機嫌悪かったんだ」
「?  どういうことですか」
「ティガだけは、マンさんやセブンさんと違って、ダークライブされたからとかじゃなくて、マジに闇の巨人だった
 過去があって、たまにそっちに引きずられそうになることがあるらしいんだ」

だからごめんなー、態度悪くて。と、代わりに謝るダイナに、高校生達は

「いえ。気にしないで下さい」
「体調悪いなら仕方ないですよ〜」
「俺の場合、最初の頃にちょっとビクついてたのも良くなかったし」
「てか、ティガって、闇に打ち克ったんすね。すげーな」

等々気にしていなかったが、姫様御一同からは

「当たり前のように、我が事のごとく自然に謝るのね」
「それに、体調もperfectlyに把握しているようだし」
「そして、本人不在の隙に、大いにノロケるなんて、やるわね今日のダイナは」

などと、謎の高評価を得ていたという。


「ツンデレかぁ。ジャスティスはね〜、デレる相手とぉ、冷たくしかしない相手が分かれてる、変則的なツンデレだよ〜」
「偏り激しいよねぇ。コスモスとレジェ以外に、デレ見せる相手なんているの?」
「んーとぉ、リドリアスとかワンコとかの可愛い動物以外だと〜、地球署の署長さんには、ちょっとデレてるかなぁ」

ニコニコ笑いながら会話に加わって来たのはコスモスで、彼(?)の愛しの堅物宇宙刑事は、融通の利かない
正義感と―青い科学者共ほどではないがー、愛想の無さが特徴と言われている。

「地球署の署長って……ああ、そうか。そういうことね」
「モフりたいと思いながら見詰めていたら、睨まれていると思われたんですっけ?」

該当する人物が浮かびニヤリと笑った数人が思い浮かべたのは、某戦隊の精悍な犬の人だった(笑)


「なぁなぁ、ところでゼノさんもツンデレ?」
「いやぁ、違うでしょ。単に『お馬鹿な部下を見捨てきれない上司』ってだけで、ツンじゃなくて呆れ果ててたり
 見限ってたりするのと、デレじゃなくてちょっとは見直したり見逃してくれるだけでしょ」

ノリと勢いで高校生達にも酒を飲ませようとしたら、
「未成年に飲酒を勧めたり、他の方に迷惑をかけたら、明日から向こう一週間は、業務に必要な最低限の
 会話しかせず、書類も一切手伝いませんからね」
と言われたのを思い出した最強最速のお馬鹿さんが、話題に乗ろうと手を挙げてみた所、「ゼノさんて誰?」と
近くに居たメンツに訊いて簡単な説明をされた高校生達にすら、「いや、それは違うだろ」的な反応をされた。


そんな濃厚な時間を過ごし、目を覚ましたら自分の部屋に居た高校生達は、
「夢にしては、やけに細かくて盛り沢山で濃かったけど、現実とは思えない感じだったしなぁ」
と、一様に首を傾げたのだった。 



柳佳姉さんとのカラオケ中に、某曲に対し 「青い理系共がコレ歌って、ツレを照れさせりゃいいのに」 という話になり、書くと約束したまま書きかけで丸1年位放置していたブツに加筆して完成させてみました。 ヒカリさんとアグルでSAMURAI STRONG STYLEは、マジでカッコいいと思いますよ、うん。