今を遡ること、ざっくり14年位前の話です。

	とある高校の先生が、1限の授業の為に2年生の教室に入ると、1人の生徒が幼児を膝の上に乗せて
	いるのが目に入りました。

	「……マン、その子は?」
	「弟のメビウスです。母が、出張で1週間程不在なので、その間私達で看ることになり、今日の当番は私なので」

	2歳のメビウスが警備隊一家に引き取られるより前から、母が医療班の研修で出張することは決まっており、
	講師側の為参加しない訳にはいかなかったので、1日ずつ兄弟で子守りをすることになったのだそうです。

	「……。そういう事情があるなら、別に休んでも構わなかったぞ」
	「3限に数学の小テストがあるので、今日は休むわけにいかなかったんです」
	「そうか」

	妙な所が生真面目で頑固なマンに、先生は呆れながらも授業を開始し、他の先生にもその旨を伝えましたが、
	結局メビウスはその日1日中、マンの膝の上や教室の隅っこで、良い子にお絵描きや持ってきた積み木などで
	遊んでいたので、特に問題は起きませんでした。



	そんなことがあった次の日。今度はマンと同じ高校に通う同い年―双児では無い―の弟セブンが、昨日のマンと
	同じようにメビウスを連れて来ていました

	「……。お前の理由は何だ?」
	「今日の化学は実験なんです」

	マン以上にしょうもない理由に、先生達は、
	(だったら、別の日にしてもらえばよかっただろ)
	などと思わなくもなかったとか。


	更に他の曜日は、小学校の方に
	「だって、今日の給食プリンだもん」
	が理由でエース(小6)が連れて来た翌日、
	「弟の子守り当番なので休みます」
	と、新たに出来たばかりの弟が可愛くて仕方ない元末っ子のタロウ(小4)が自分で電話を掛けて来たりしました。

	そして兄達とは違う高校に通っていたジャック(高1)は、メビウスを学校に連れて行きはしたものの、登校する
	なり事前に話をつけておいた保健室に預け、休み時間ごとに顔を出し、放課後は委員会や部活を休んでさっさと
	帰る。という、実に真っ当な行動を取っていました。
	


	ちなみに、この当時、唯一既に学生ではなく警備隊員だった長兄は――

	「……おい、そこの奴。ゾフィーはどうした?」
	「えっと、弟くんの子守りをする為に、有休を取ると……」
	「あの野郎。人に今日までに資料用意しろとか言ったくせに、自分は休みかよ!」

	と、ブチ切れたヒカリに怒鳴りこまれ、そのヒカリを見たメビウスが
	「ひーたんだぁ」
	と物凄くご機嫌で構ってもらいに駆け寄り、結果的に

	「俺が代わりに看ていてやるから、お前はさっさとやるべき仕事を終わらせて来い!」

	とヒカリに蹴り出され、おまけに帰宅した弟達にそのことをグチっても、口を揃えて

	「それは兄さんが悪い」

	と返されてしまいましたとさ。




オマケ
	「懐かしい光景だな。お前は何の理由で連れて来たんだ?」
	「……親父達が全員忙しくて、けど『学校休むな』とも言われたんだよ」
	「そうか。んじゃ、保健室預けて来い」

	などという会話が、最近レイを連れて中学に行ったゼロと、警備隊兄弟の誰かと元同級生な先生の間で交わされ
	ましたが、ゼロとセブン達の大きな違いは、登下校時以外は、抱っこはしないでずっと教室の隅で遊ばせていた
	ことだったりするようです。
	



だいぶ前に書くと約束した代物です。 ついでに残る1日は日曜なので、全員で目一杯構ってやったと思われますが、 父と爺(キング)はずっとハブられていたんではないかと(笑) 2010.7.8