地球暦2014年4月13日。
折角全員集合していて、この辺りは今ちょうど桜が見頃ですし、ステージ終わったら、打ち上げ兼ねて
みんなでお花見しましょうよ。とのガイアの提案に、異論があるものは1人も居らず、ハロウィンと
同じ位お花見が嫌いだと認識されているティガですら、
「誰かが留守番としてハブられるので無ければ」
と参加の意を表し、時間と人数の関係で夜桜見物となったため、ボーイとニャンだけは、遅い時間に
保護者不在での参加はマズイ。ということで外されたが、今回のステージでは不在だった、アミア、レイ、
UFZの面々に加えレイの怪獣達まで参加しての、総勢40人超えでのお花見が決行されることとなった。
☆★☆
場所は会場のすぐ脇の川べりで、
「時間があまりないから、凝ったものは作れないけど」
と言いつつ、マン・ジャック・エース・母とでおにぎりとから揚げや玉子焼きなどを。ティガ・ガイア・
コスモス・メビウスとでサンドイッチやサラダを作った他にも、惣菜やツマミや和菓子などを買い足し、
飲み物もアレコレ用意して向かったのだが、何かテンション上がってたんだかいつも通りなんだかな、
最強最速のお馬鹿さんが、
「ここそのまんま駆け降りた方が近くね? ってか、駆け降りたい! ゼロ! ダイナ! グレン!
誰が一番早く降りられっか、競争しようぜ!」
などと言いながら土手の斜面を駆け降り始め、燃えるリーゼントと中坊はその誘いに乗ったが、普段なら
同じくすぐさま乗ってきそうな迷子は
「お前がお弁当を持ってるんだから、振り回してぐちゃぐちゃにしたら承知しないよ」
と、傍らのクールビューティーに睨まれた為、自重したようだった。
ちなみに、
「地球ですごしていた頃の人間態や半身だと目立っちゃうから」
ということで、ギンガ含め、全員別の−ヒカルも光の国で何度か会ったことのある−人間態をとっていた。
そして、駆け降りた馬鹿共以外の全員がちゃんと舗装された道や階段を使って川辺に降り、ビニール
シートを拡げ、キング翁の長ーーい訓示はご遠慮いただき、警備隊長のゾフィーが代表して乾杯の音頭を
とり、星人……もとい成人組がビールを開けた瞬間。勢いよく中身が噴き出してきた。
「うぉっ。何だよコレ」
「誰かこのビール振った!?」
「……そういえば、飲み物を持っていたのは、マックスでしたね」
「ビールの箱を抱えたままダッシュしたんだ。ホント、君の後輩って……」
「そこで俺を見るのはやめろ、マン。というか、マックスや21が何かしでかす度に、俺をディスるのは
やめてくれ」
そんな一騒動からスタートし、各自てきとーに飲み食いしたり桜を眺めながら団欒していると、タロウから
初対面の面々を紹介されていたヒカルの元に、何度か会ったことはあるが話したことは多分ないレイが、
てててッと寄ってきて
「怪獣は好きか」
と尋ねた。
「え」
「ゴモラとエレキングから聞いた。友達がギンガに助けてもらったから、俺はギンガが好きだ」
「えーっと……」
単刀直入というか言葉の足りない精神年齢7歳児に、ギンガがイマイチ現状把握出来ないでいると、タロウから
「レイは怪獣遣いで、ゴモラとリトラとエレキングと、あと一応ジャミラが相棒なんだよ。で、光の国を襲った
ゴモラ達は、レイのゴモラ達の友達らしくて、それで君に感謝してるんだって」
と、セブンやマンから聞いた話を元に、簡潔に説明してくれた。
「そっか。怪獣も、ウルトラマンも、同じ位好きだぜ。よろしくな、レイ」
「うん」
多分この子、某宇宙キターみたいに宣言はしてなくても、その内宇宙全体と友達になれるんじゃないかなぁ。
と、タロウが弟子(的なもの)のコミュ力の高さに舌を巻いていると、もう1人今回自分の中のギンガ株が
急上昇した慈愛の戦士が、いつも以上にニコニコ笑いながら
「ギンガくーん。何飲む〜?」
とお酌をしに来た。
「コスモス。ギンガというかヒカルは、まだ未成年なんで」
「大丈夫ですよぉ。カルピスと〜、リンゴジュースと〜、オレンジジュースに〜、緑茶とウーロン茶ですからぁ」
「あ、いや、それ烏龍茶じゃなくて、眼兎龍茶」
「お歳暮でもらったまま溜め込んでいたのを、持って来ていたんですかあなたは」
全部ソフトドリンクだから、レイも飲む〜? と勧めてくるコスモスに訂正を入れたのはマックスで、それに
更に呆れたようにツッコミを入れたのはゼノンだった。
「メトロンって、こないだの自称天使?」
「あー、いや、確かに同族だけど、これ送ってくれてんのは、別の奴でおっさん」
博品館のアイツは、結構オイシイキャラだっただけに、正体メトロンだったのがホント残念すぎるよな。
なんて話題で、ギンガとマックスが意気投合し、やっぱりコミュ力高いなぁ、あの子。それとも、最近の
若い子はみんなそうなのかな。と感心するおじさん達+αは、
「このたまごサンド美味しいね。マヨネーズに、何か隠し味入ってる?」
「ああ、それはですね」
とか、
「母さんの甘い玉子焼きも好きですけど、ジャック兄さんの出汁巻き卵や、マン兄さんのジャコと
ネギ入りのも美味しいですよねぇ」
「私のも、元は母上から教わったんだよ」
「ええ。マンのものより、もう少しお醤油が多くて塩辛いものが、わたくし達の古い友人の好物だったんですよ」
(それってまさか、某目付きもガラも悪い反逆者ですか……)
とか、
「このロール型のサンドイッチ、小さくて食べ易いし可愛いね。ジャムは何のジャムなのかな」
「それはコケモモのジャムで、これが洋ナシとバニラのジャム。こちらは、メイヤーレモンとクローバー
ハニーのジャムですね。メイヤーレモンのジャムは、柚子茶のようにお湯で割って飲むことも出来ますよ。
それと、ポットのお湯なので味は今ひとつになりますが、緑茶か紅茶でよろしければ、淹れられます」
「あ、私も、ホットコーヒー魔法瓶に入れて来たのあるよ」
とか、リアル女子顔負けの女子力を発揮し、
「マズイわ、ベス、アミア。わたし、ティガはおろかマンにすら、女子力で勝てる気がしない」
「Don't worry姫姉様。某戦隊ピンクと比べたら、姫姉様の方が女子力ありますって」
「でも、あっちはお嬢でわたしは王女よ!?」
「400年前の侍に女子力で負けているより、全然良いではないですか」
「3000万年前の戦士よ、ティガは」
などと勝手に対抗意識を燃やされていたが、
「サーガには、その唐揚げはまだ無理だから、おにぎりとサンドイッチと、玉子焼きとポテトサラダ辺りで
我慢しなさい」
「ほら、サーガ。ウインナーなら食えるだろ。あと、リンゴとかイチゴもあるぞー」
なんて−某カミサマのお戯れで具現化された−ちびサーガ(2)の世話を焼いている様は、完全に両親
そのもので、こちらは悔しがられるより大いに萌えられた。
しかしながら、ダイナやガイア目線では、
(確かにダイゴの影響で舌は肥えてるけど、アレで実は拒食症気味とか、誰も信じないよなぁ)
といった感じで、実際おにぎり1つと唐揚げを数個に、サラダをほんの少しと、サーガの食べ残した
玉子焼きを半分位食べた以外は、ジャムのお湯割りやお茶を数杯飲んだ程度しか口にしていなかったが、
身内以外にはほとんど気付かれていない外面の良さはいっそ天晴れだった。
☆★☆
そんなこんなで、あちこち和気あいあいと盛り上がり、酒飲み組がだいぶ出来上がってきた辺りで、毎度の
「誰か何かやれ」コールが起こり、トップバッターを飾ったのは……
「ゼアスくん、ゼアスくん」
「何、ナス?」
「ナスじゃないよ、ナ・イ・スだよ!」
「で、何。ナメコ」
「んふんふ? って、違うよ! さっきより遠ざかってるよ」
「ゼラチンやゼッケンよりはましでしょ。僕、今更名前忘れられたこと、まだ根に持ってるんだからね」
「だーかーらー、あれは場を和ませるための冗談だったんだってば」
「ふぅん。それで、要件は何なの、ナイス?」
「いやね。隠し芸といったら、私の出番だけど、私のモノマネオンステージと、ゼアスナイス漫才の、
どっちが良いかなーって」
「えぇー、僕巻き込まれて滑りたくないから、ナイス1人でやれば?」
というやり取りが最早漫才のナイスとゼアスで、その後ナイスが1人でやった昭和歌謡モノマネオンステージも、
元の歌や歌手がわかるおっさん達だけでなく、
「元ネタ知らねぇけどうめぇ」
と、若手にも割とウケていた。
続く2番手は、ほろ酔い気味のガイアに面白半分に押し出されたアグルによる水芸だったが、先日覚えた
南京玉すだれを握り締めたレイが混ざってきた上、ゼアス獅子舞も便乗してきて、結構好評だった。
そしてその次は、酒がだいぶ入って目の据わり気味なヒカリによる、本物の日本刀を使ってのガマの
油売りの口上で、「いつ何処で憶えたの!?」とのツッコミが入ったり、先程の和芸と連続して「時代が
何か違う」感が満載だったが、ウケたことは大いにウケた。
更にその後も、
「ガマでしたらワタシ呼び出せますよ」
でドロロンと召喚しちゃったパワードに、
「はいはーい! 俺分身の術行きまーす!!」
と続いたマックスに
「だったら俺は変わり身の術だぜ!」
と対抗したゼロには
「いやそれ、ただのタイプチェンジ」
とのツッコミが入り、
『そうだ。変わり身の術とは、私のようなのを言うのだ』
「オメーのは『変形』だろ」
な、ジャンボット→ジャンバードの変形は、見んのは久しぶりってか、戻れたんだ。扱いで、
「月並みですが、鳩でも出しましょうか」
と呟きながらゼノンが猫耳帽をズラすと、ヒッチコック並の大量の鳥が出てきたが、広げている食べ物が
一切襲われなかったのが逆に怖かったり、
「ゼロ、ダイナ、コスモスで、サーガなります!」
「って、隠し芸程度の扱いか! 奇跡の存在じゃないのかよ」
等々の、どんちゃん騒ぎの中。ふと気が付くと、お酒の匂いだけで酔い潰れたメビウスが、端の方で
スヤスヤと眠っていた。−ティガの膝枕で。
しかも、ティガは邪険に扱うどころか、何やら愛おし気に髪を撫でているので、
「ずるーい。僕も!」
とガイアがねだったが、
「は? 何で僕が君に膝枕してあげなきゃいけないの」
と冷ややかに返ってきた。
「えぇー、じゃあ何でメビウスはアリなの」
「だって、ここで寝てしまったし、メビウスだから良いんだよ」
不公平だとむくれるガイアへのティガの答えは、どう考えてもどこも理由になっていなかったが、
「これはこれで目の保養だから、まぁ良いか」
とサクッと引き下がり、動画を撮りつつ姫様御一行と
「百合百合しいですよねぇ」
「Yes! 間違いなく百合ね」
「お姉様と妹ちゃん的な、女学校風の百合の香りがしますね」
「次の新刊は、女学校パロも良いかもしれないわね」
なんて盛り上がっていたが、特に誰からも止められ無かったのは、ヒカリは絡み酒の教官と酔うと延々昔語りを
始める隊長のWめんどくさい酔っ払いに両側からホールドされており、ダイナはハイテンションなちびサーガの
面倒を見つつ、ギンガやゼロ達などとダベっていたからだった。
そんなこんなの、カオスなお花見という名の飲み会の翌朝。最後の方は記憶の飛んでいたセブンに、
「指示通り撮っていたものです」
とレオから差し出されたメモリーカードには、息子達の隠し芸やら何やらもたっぷり映っていたが、自分達の
醜態もキッチリ映っており、途中から定点になったのは、ゼロ達が寝落ちたので、カメラを全体を映すように
固定し、アストラとまったり盃を傾けながら撮っていたからとのことだった。
そして、その映像の端の方に、コソッと映っていたのは……
「楽しんでるー、ギンガ」
「えーっと、アンタは……」
「ノアだよ。君とは初めまして、かな。ヒカルくん」
「そっか。よろしくな、ノア!」
大人共は宴会に突入し、子供組は粗方寝落ちした中。ギンガことヒカルが、そんな光景も楽しそうに眺めて
いると、酒瓶片手にフラフラ寄ってきたのは、荘厳さの欠片もない、ベールで顔を隠したカミサマで、
「うん。よろしく。ところで、飲む?」
「いや俺、未成年なんだけど」
「君、はね。でも、ギンガは結構いい年でしょ? ちょっと位表出といでよ」
手にした酒瓶を掲げて誘うノアに、ヒカルはそれを固辞したが、ノアは気にせず、「ギンガ」に呼びかけた。
「……この世界でも、素は軽いな、ノア」
「まぁね。一応、イメージ壊しちゃ悪いから、こういう態度取る相手は選んでるつもりだけど」
「しかもその口振り、私の知っているノアか」
お前なら解るだろうが、ヒカルと身体を共有しているようなものだから、一杯だけなら付き合おう。そう
応えたギンガに、盃を手渡したノアは、
「カミサマだからね。正直、あちこち渡り歩き過ぎて、どの世界がどう繋がってたかも、時間の前後関係も、
ちょっと怪しいんだよねぇ」
と、こともなげに笑った。
「時を渡れるなら、何故私をこの時代に送ったんだ?」
「カミサマも万能では無いっていうか、理(ことわり)とか手出しして良い領域とか色々あって面倒だし、
ネクサスのままSD化されちゃったから、君達を飛ばすのが限界だったんだよ」
自分の分をクッと飲み干し、二杯目を手酌で注ぎながら答えたノアに、ギンガは「そうか」とだけ答えると、
自分の盃に口を付けた。
「コレね、復興支援のコラボ商品の日本酒なんだ。……人間てさ、強いよね。どれだけ困難な目に遭っても、
もう立ち直れないんじゃないかって思っても、結局また立ち上がって、前に進んでくんだよ?」
「ああ、そうだな」
「だから、迂闊に手を出しちゃダメだな。って思って、見守るようにしてはいるんだけど、ついつい手を
貸しちゃうんだよねぇ」
「それだけ、人間が好きなんだろ。お前も、私達ウルトラ戦士の皆も」
「そうだね。……今日は、久々に会えて楽しかったよ。ザギが迷惑を掛けたことも、謝っておきたかったし。
お互い大変だよね。妙な黒いのに付け狙われて」
「お前個人が執着されているのは、お前だけだと思うけどな」
そんな、しんみりとした真面目な話になり掛けたが、結局はそうでもなかった会話は、セブンの手によって
編集されカットされたので、ほとんど余人の目に触れることは無かったが、それでもなんだかな。といった
感じだったという。
須賀川のステージ前後に、会場近くの川辺を歩きながら
「ここで打ち上げにお花見すれば良いよね」
と柳佳姉さんと話したネタです。
ちょこっとティガさんを(間違った意味で)贔屓し過ぎたかなぁ、と思わなくもないですが、
書いててとても楽しかったです
2014.4.17
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