地球時間7月某日。M78星雲光の国の、宇宙警備隊隊長であり、ウルトラ兄弟の長兄でもあるゾフィーは、
いつにも増して忙殺されていた。
というのも、部下兼義弟その5のタロウが、父母と共に家族水入らずでハワイ旅行中で、
「家族水入らずなのに、他の後付け兄弟はともかく、実子同然に育った養子のエースは?」
な、部下兼義弟その4のエースは
「七夕って言ったら俺と夕子!  てことで、月行ってくるから」
と、まるっと2週間程有休を取っており、その分の仕事も回って来たが、どちらも許可を出したのは上司である
自分なので文句も言えず、普段は自分の監視をしつつなんだかんだ言いながらも手伝ってくれる次弟のマンも
「7/10の式典が終わるまでは、何かと忙しいので」
と、監視役を残りの弟達に任せており、三男セブンは
「エースとタロウの分は分担してやってんだから、お前が処理しなきゃならない分は、自力でさっさとやれよ」
と冷たく、四男ジャックも
「同僚にあたるエース達の分は、万一の為に情報共有していますから、ある程度はわかりますが、上役である
 ゾフィー兄さんの分は、機密や職務権限などがあって、本来なら代行は出来ないんですよ。それに、期日が
 近い書類は、兄さんが後回しにして溜め込んだのが原因でしょう」
と、普段マンが見るに見かねると代行してくれるのは厳密にはアウトで、量が多いのはサボった分のツケなのだと、
やぶへびな説教をかましてきた。
そして他の弟達や甥っ子も多少は手伝ってくれたが、獅子兄弟や若手は実戦向きで事務仕事は不得手で、
教師の80や科技局のヒカリや平成組は、自分達の仕事で手一杯な上に、分野違いや職務権限的な制約が
あるとのことで今回は断られてしまった。

そんな訳で、反論の余地も無く書類に追われる日々で、息抜きのコーヒーすら「そんな暇あったら仕事しろ」と、
インスタントで済まされそうになったので、そこだけはホントに士気に影響するから。と、ブレンドや焙煎までは
しないし、回数も減らすからドリップだけは……で妥協した。

それでも、次から次に処理すべき書類やら案件やらが発生し、
「……サコミズのところにコーヒー飲みに行きたいなぁ。今の私達って、彦星と織姫っぽくない?」
とのボヤキも、
「だったら、速やかに仕事を片付けて下さい。サボって抜け出すようでしたら、七夕伝説に因んで、一年に
 一度しか会えないようにしますよ」
と、逆に脅しの材料にされた。

しかし、それでも毎日のように増え続ける業務に、ゾフィーがプッツンしかけたところで、「そろそろ良いか」と
セブンから渡されたのは、手製っぽい3枚のチケットだった。

「え。何これ。えーと、『1日貸し出し券』?」

ノリとしては、父の日や母の日などの子供が作った肩たたき券のような感じではあったが、内2枚には
勇士司令部の責任者印、残りの1枚には文明監視局の責任者印が押されていた。

「勇士司令部がネオスと21、文明監視局がゼノンを、それぞれ1日だけ手伝いに寄越してくれる券だと」
「マン兄さんが用意して下さったものですが、使い所を間違えないようにして下さいね」

3人共他部署の所属なので、それこそ機密に関する書類や職務権限を超える内容は手伝わせられないが、
うまく使えば相当にはかどる筈です。とのマンからの伝言通り、エリート部隊である勇士司令部の2人は
書類仕事もかなり出来、特に21は「ああ、そうか。コイツ一応、ネオスの上司で中間管理職だっけ」と
いった感じで、ゼノンに至っては

「すごいです、ゼノンさん!  事務員さんみたいです!」
「事務員ですよ、私」

と、書類を提出に来たメビウスと漫才じみたやり取りをしていたり、

「ゼノン、それは?」
「ああ。うち(文明監視局)の報告書です。整理もファイリングもひとまず終わりましたので、隊長の書類が
 仕上がるまでは手持ち無沙汰ですから、その間に目を通しておこうかと思いまして」
「そうか。にしても、ひどい字だな、その報告書」
「いつもこんなものですよ。ちなみに、内容も大抵残念です」

などと言いつつ、書類待ちの合間に最強最速のおバカな部下の報告書にチェックを入れていたりと、
本領発揮しまくっていた。


そんなこんなで、どうにか全ての書類を期日内に処理したゾフィーは、
「これでちょっとは私への評価も変わるかな」
と期待したが、
「普段から、溜め込まないように逐一処理していれば、ここまで大変じゃなかったんですよ」
「やれば出来んだから、サボらずやれよ」
といつも通りで、勇士司令部の2人とゼノンの株が大いに上がりまくっただけだった。





七夕とかウルトラマンの日とかの季節ネタ書こうとしたのに、何でこうなった ちなみに、メビたんとゼノさんのやり取りは実録で、ゼノさんのセリフの一部も私のボヤキ混じってますけど、 私はポンコツ事務員です(笑) 2014.7.6