某カミサマの気紛れで具現化された幼児-サーガ-を、成り行きで仕方なく預かっていたある日。
業務を終えたティガが、保育室にお迎えに行くと、同じく保育室に預けられているレイを迎えに来たっぽいマンが、
出入り口付近でフリーズしていた。

「マンさん!?   何があったんですか?」

そう尋ねながら、室内に目をやった所で、サーガやレイやジャンナインと共に遊ぶ存在が目に入り、ティガは原因を
察したが、

「……何で、ハイパーちゃんが居るの?」

シュッとした、すたいりっしゅなフォルムは、初代とはだいぶ掛け離れているが、お決まりの重低音とピロロ音を響かせながら
サーガ達と遊んでいたのは、マンの天敵にしてトラウマなゼットンの進化形に当たるハイパーゼットンだった。

「ケイトが、サーガと遊びたがっていたからと連れて来た」
『レイのお姉さんは「レイモンのゴモラは良くて、私のハイパーは預かれない理由があるなら言ってみろ!」と
 言っていて、ギンガも「確かに、おんなじ怪獣だもんな。差別は良くないぜ」って』

促成培養故に、実年齢サイズのサーガ(2)と精神年齢は同じなので、確かに保育室に預けられてもおかしくは無いし、
ケイトの主張も大筋では間違っておらず、ギンガというかヒカルの後押しも彼の属性からすると正しい。だがしかし、

「ヒカルくんはともかく、君はマンさんにとってゼットンが鬼門だって知っているよね、ナイス。なのに何で
 預かったりしたの」
「いやぁ、そうなんだけど、断ったらチームブラックに総攻撃されそうでぇ」

てへ。じゃないよナイス!   あと、そもそも何でケイトさん達が光の国に来てるの?  そうツッコミかけてから、
ティガはふと気が付いた。

「……お彼岸とハロウィンか」

基本的には、ケイトやチームブラックことゼットン集団は、怪獣墓場の住人であり、つまりは死者なのだが、お盆だの
お彼岸だの西洋盆なハロウィンなどには実体化して、セブンやゼロを襲撃しに来るのが慣例化している。ということは、
つまり、セブン親子にレイのお迎えとフリーズしたマンの回収に来るよう連絡した所で、それどころでは無い状況に
陥っている確率が高い。



「仕方ない。ひとまず僕らの所に連れて帰るか。……レイかナイン。悪いけど、ちょっとハイパーちゃんの通訳してくれる?」

一つ溜め息を吐いてから、怪獣遣いと翻訳機能付きのロボを手招きすると、ティガはサーガと戯れているハイパーゼットンに
声を掛けた。

「ハイパーちゃん。ハイパーちゃんは、お迎えが来るまでここに居るようケイトさん、ご主人様に言われたの?」
『うん!  ごしゅじんさまとおかーさんたちがおむかえくるまで、サーガとあそんでるのー』
「そう。いつ頃お迎えに来るかは言っていた?」
『んーん。いってなーい』
「そうなんだ。それじゃ、サーガはもう帰るから、一緒に帰って、僕達の部屋でご主人様達を待とうか。……良いよね、
 ナイス?」
「もちろんだとも!  というか、そうしてもらえると、私としても助かるなぁ。私と保育士さんだけで、ハイパーちゃん
 みれる自信無いし」

という訳で、帰りの遅い保護者の代わりに知り合いのお母さんが自分ちの子と一緒に連れて帰る。的な流れになったが、
実際はハイパーゼットンは「ピロロ」及び「ゼットーン」としか言っていないのを、ジャンナインが同時通訳しての
会話だったので、幼女口調のジャンナインは、結構シュールなものがあったが、特に気にする者は居なかった。

「さて、と。そうしたら、おんぶ紐貸してもらえる?」

そう言って、ティガはナイスからおんぶ紐を借りると、

"マンさんがハイパーゼットンに遭遇してフリーズしているので、まとめて連れて帰ります
                                      ティガ"

とセブン宛にウルトラサインを送ってから、しばし考える素振りを見せると、唯一リアル幼児なサーガをおんぶ紐で
背負い、ハイパーゼットンはレイと手を繋がせ、マンを肩に担ぎ上げた。その姿は、「肝っ玉母ちゃん」といった感じで、
いっそ逆に男前ですらあった。
そして、後で聞いた所に依ると、「サーガを前抱っこでマンを負ぶう」「サーガを負ぶってマンを小脇に抱える」
「サーガを負ぶってマンを横抱き(俗に言う所の姫抱っこ)」「サーガを負ぶってマンを肩に担ぐ」の中から、
一番マシだと思われる形を選んだそうだが、前抱っこして背負うのが一番マシだったんじゃ……。との声もあった。
しかし、

「負ぶうとなると、両手で支えた方が良いですが、肩に担ぐのなら片腕は空きますから」

とのことで、いざという時の為に片手は空けておきたい。って、片手で何が出来るの?  とナイス辺りは思わなくも
無かったが、

「そうだね。片方空いていたら、転びそうになったり転んだ時なんかに手を貸せるし、八つ裂き光輪も撃てるね」
「ですよね。首根っこを掴んだり、スラップショットやハンドスラッシュ位なら撃てますから」

と、後でマンと意見が一致したそうで、そもそも1人で全員連れ帰らずに誰か呼べば良かったんじゃないか。
とも言われたが、そちらも一言「慣れてますから」と返しただけだったが、先の発言と合わせて、何か
わからなくもない……かも?  といった感じだったとか。


そんなこんなの帰路の途中で、マンが我に返り状況に困惑したが、簡潔に説明されて納得したので、礼と謝罪を
してからレイを連れて帰ろうとした。しかし、サーガとハイパーゼットンのW幼児に
『レイ帰っちゃうの?  一緒に遊んでかないの?』
という顔をされ、レイ自身ももう少し遊びたそうな顔をしていたので、

「……すまないけれど、セブン達が迎えに行くまで、預かってもらっても良いかな?」
「ええ。構いませんよ。レイやゴモラがサーガ達と遊んでくれると、こちらとしても楽ですから」

ティガは寮暮らしなので、自分までお邪魔したら狭いだろうし、ゼットンと同じ空間に居るのは無理だから。
と、マンが頭を下げると、ティガは気安く引き受けてくれたが、理由付けが何かお母さんだなぁ。と、マンは
思わなくも無かった。


そして、マンと別れてサーガ、ハイパーゼットン、レイ(+ゴモラ)を連れてティガが部屋に戻ると、先に戻っていた
ダイナが寛いでいた。

「ただいま」
「おう、おかえりー。って、アレ?  レイに、ハイパーまで居んのか」
『ピロロロロロロー(あー、ダイナだぁ)』
「うん。ケイトさん達が、セブンさん達を襲撃に来るついでに、ハイパーちゃんはサーガと遊びに来たらしくて」
「そっか。久しぶりだな、ハイパー」
『ゼットーン(うん!  ひさしぶりなのー)』

マンと違い、ダイナは何故か一切ハイパーゼットンがトラウマ化していないようで、はしゃぐハイパーゼットンと、
何かフィーリングで会話の成立しちゃっているダイナに、

「セブンさんかゼロが迎えに来るまで、3人のこと任せても良い?  僕、持ち帰りの書類が少しあるから」
「ラジャー!  任せとけって」

なんてやり取りで、ティガはチビっ子達の子守りを一任した。その一連の流れを
『共働きの両親て感じだったヴォ』
と評したのはゴモラで、
『ダイナがねー、サーガのおとーさんで、ティガがおかーさんなのー』
と報告したのはハイパーゼットンだったそうだが、さもありなん。って、納得しちゃって良いのかなぁ。と、
後日レイ経由で聞いたセブンやマンは思わなくも無かったという。



うちのネタを読んでから、ハイパーちゃんが幼児にしか見えなくなった。 とのあり難いお言葉をいただいて調子に乗ってみた代物です