1.レナさん(16)の疑問

「ねぇ、母さん。前から気になってたんだけど、母さんは何で父さんと結婚したわけ?」
「あら。いきなり何を聞き出すのよあなた」
「だって、ダンおじさんとアンヌさんも、北斗おじさんと夕子おばさんも、郷さんとアキさんも恋愛結婚で、
 未だにラブラブなのに、うちはそういう感じがさっぱりないし、そもそも未だに『ハヤタさん』呼びじゃない」
「よそはよそ、うちはうちです。良いじゃないのよ、険悪な訳じゃないんだから」
「そうだけど……」
「まあねぇ、正直お互い妥協したというか、周りに押しきられたようなものだけどね」
「周りって?」
「ムラマツキャップやイデさん達よ。『ハヤタも意外と良い年なんだから』とか、『フジくんだって、今は未だ若い
 つもりかもしれないが……』とか、ホシノくんまで『このままじゃ、嫁き遅れてもおかしくないんじゃないの?』
 とか言ってきたのよ。酷くない? ハヤタさんが30過ぎの時、私はまだ20代も前半だったのよ」
「でも、結局父さんと結婚したのね」
「それはまあねぇ。お互い他に相手が見つからなかったし、別に嫌いって訳では無かったから。要は、相手のことを
 嫌って程よく知ってる人と、お見合い結婚したようなものかしらね」
「ふぅん。よくは解らないけど、何だか母さん達ならアリな気がしてきた」
「どういう意味よ、それ」
「何だかんだ言って、お似合い。ってことよ」
「やめてよ。冗談じゃないわ」
「……。そこは素直に、『あら、ありがと』で良いと思うんだけど」





2.きっかけなんてそんなもん

「なぁ、ミライ」
「はい! 何ですかリュウさん」
「それだよ」
「は? どれだよ」
「呼び名だ、呼び名。いつから俺らのこと『さん』付けで呼ぶようになったんだったか。って思ったんだよ」
「そういえば、テッペイくんはアノお母さんの影響か、ずっと『さん』付けだったけど、ミライくんは小さい頃は
 違ったわよねぇ」
「コノミさんは、中学生位でしたっけ?」
「えっと、もう少し前だったと思います。私じゃなくて、リュウさん達が中学校に上がった頃に、『お兄ちゃん』や
『お兄さん』は変かなぁって思って…」
「そういえば、小さい頃は実の弟達は呼び捨てにしてくるのに、コノミちゃんやミライくんがお姉ちゃんて呼んで
 くれてたわね」
「思い出した。まだ全員小学生の頃に、ミライが俺らは『ジョージお兄ちゃん』『マリナお姉ちゃん』なのに、
 自分だけ『リュウちゃん』だからって、リュウがキレたことあったよな。多分、あの時からだ」
「ああ、あったわね。で、何故かだからといってお兄ちゃん呼びにならずに、さん付けになったんだわ、確か」
「…実に、ミライくんらしいですね」
「そっかぁ、それで私も、お兄ちゃんは変かなぁ、って思ったんだったかも」
「んじゃ、何でそもそも俺だけ呼び方違ったんだよ」
「えっと、覚えてないです…」





3.そういう関係 1

「あの、ボス。お願いあるんですけど」
「何だ?」
「レイやオキが休みの日に、俺が配達に出るのは別に構わないんですけど、配達地域変えてもらえませんかね」
「あら何で?   あの2人の配達地域に、何か問題がある人が居るとは聞いていないけど」
「いや、その、どちらかと言えば、俺の方の問題と言いますか、俺の顔を見ただけで嫌な顔をするお客さんが
 居るもので……」
「どういうことだ?  何かしでかしたのかクマノ!?」
「俺は、何もしていません。問題起こしたのは、俺と同じ顔をしたクソ兄貴の方なんですけど、何しろぱっと見は
 同じ顔なので、先方も分かってはいるけど良い気がしないようなので」
「同じ顔ってことは……」
「一応双児なんですけど、親の離婚で別々に引き取られたから苗字が違って、兄貴の方は『溝呂木 眞也』といいます」
「そうか。事情は解った。しかし、担当地域を変えるのは、顔馴染みの顧客も多いから、少し難しいかもしれないな」
「だったら、その問題があるお宅だけ私達で行けば良いいんじゃないですか。そんなに件数は多くないんでしょう?」
「ああ、はい。和倉さんちと、孤門さんちと、あと日中は大抵不在ですけど一応平木さんちも」




4.そういう関係 2

「シンジョウ。こないだ、お前がなんやベッピンさんと歩いとんの見かけたけど、ようやく彼女出来たんか?」
「お兄ちゃんが?  それいつの話ですかホリイさん」
「先週の日曜やけど。駅前のショッピングモールで見掛けたんや」
「ああ、じゃあそれ多分うちのお兄ちゃんじゃなくて、従兄のヒロキ兄さんで、一緒に居たのはその妹のジュンちゃん
 だと思います。この間の日曜は、お兄ちゃんには私の買い物の荷物持ちしてもらってたんで」
「俺とヒロキは、マユミとアサミ並に似てるからなぁ」




本編とはさっぱり関係無いけれど書きたかった人達を書いてみた次第でございます