昼下がりの喫茶GUYSにて。お茶会中の若いお母さん達に、マスターであるサコミズが
「昨日は母の日でしたが、みなさんのお宅はどんな様子だったんですか」
と尋ねると、まず初めに話し始めたのは、
「娘が、カーネーションの花束と似顔絵をくれたんですけど、やけに立派な花束だったから、お金はどうしたのか
訊いたら、『パパがおかねくれて、いっしょにおはなやさんにいったの』って」
しかも、娘の言葉を肯定するでも否定するでもなく、そっぽを向いてぶっきらぼうにしてるのに、耳が赤いのが
ホントかわいくって。と、夫への惚気まで披露したのは、藤宮博也の妻玲子で、彼らの娘は現在保育園の年長さんで、
藤宮もなんだかんだいって結構良いお父さんをしているとのことだった。
そんな玲子を羨むように、
「良いわねぇ、玲子さん。うちなんて、子供達が作ってくれた……っていっても、ツバサはサラダのレタス
ちぎったりプチトマトのヘタをとったり、ゆで卵のカラを剥いただけだし、ダイゴも手伝ってたんだけど、
ヒカリが頑張って作ったカレーに、『野菜の大きさが不揃いで、火が通り切ってなくて固い』だの『ルーが
溶け残ってる』だの、ケチつけてるつもりではないんだと思うけど、率直に指摘するものだから、つい
『ダイゴうるさい!』ってキレちゃったわ。ホント、うちの父親達って何でそんななんだろう。父さんも、
母の日に母さんに何もしないから聞いたら、『だってフジくんは僕の母親では無いだろう?』って!」
と、夫と実父の愚痴をくちにしたのは、マドカ ダイゴの妻でハヤタの娘のレナで、娘のヒカリは小学校1年生で
息子のツバサは3歳である。
「ダイゴくんとハヤタさんらしいわねぇ。アスカは、無い知恵を絞ったのか、ヒビキ監督辺りに聞いたのか、
『俺が今日は1日子守と家事するから、リョウは出掛けんでもくつろいでんでも、好きにしてて良いぜ』って」
「ああ、シンプルだけど助かるわよね。うちも、ナオが生まれてからは大抵そうなんだけど、掃除はともかく料理は、
予定してた献立を丸無視で食材を使われるのだけが、ちょっとね。3人居るから、手際は良いし洗い物までキッチリ
やってくれるけど」
まだ子供の小さいアスカ シンの妻リョウに賛同したのは、19歳のランと小学校6年生のナオの2人の息子のいる、
和倉凪だった。
「その程度なら良いじゃ無いですか、凪さん。我夢なんか、わざわざ珍しい食材を買ってきて未知の料理を作るから、
味の当たり外れが激しいですし、余った食材の使い道が大変なんですから」
そんな、高山我夢の妻敦子のぼやきに、
「ムサシから聞きましたけど、我夢さん、タイ料理に凝ってるらしいですね。うちは、家族で出掛けて、外食でした」
「うちも、動物園に3人で行って、私が絵を描いている間、孤門くんがタケルと遊んでくれていて、帰りに外で食べて
帰りましたね」
そんなほのぼのした証言をしたのは、春野ムサシの妻アヤノ(幼児と乳児の2児アリ)と、孤門一輝の妻リコ(息子の
タケルは小学校3年生)だった。
「まぁねぇ、ダイゴも、父さんと違って食さえ絡まなければ割と良いお父さんと言えなくもないけど」
「ハヤタくんも、そこまでどうしようもない父親じゃなかったと思うけどね」
別に本気で父ハヤタをけなしている訳ではないレナに、それでも一応。とばかりにフォローを入れたサコミズは、
見た目は若いがどうもハヤタなどと同世代らしい。
「ところで、ミライくんはお母さんに何か贈ったりしたの?」
「えっと、僕のうちはそれこそ父さんが誰よりも張り切るんで、僕とお姉ちゃんはお父さんの手伝いで、部屋を
飾ったりお花を受け取りに行ったりしました」
水を向けられた、喫茶GUYSのバイト青年のミライは、苗字を「夢星」といい、愛妻家で子煩悩で芸人気質の保育士
夢星銀河の息子な、純粋培養の天然くん(アラサー)だったりする(笑)
6兄弟−1詰め合わせ
「東マリ様宛に、お届け物です!」
そういって、運送屋のレイが運んできたのは、大小いくつもの箱と、大きなカーネーションの花束だった。
「すっげ。誰から、何のプレゼントすか、コレ」
そんな、山のようなプレゼントと花束に目を丸くする下宿人達に、受け取り手であるマリ母さんはニコリと微笑み
「光太郎からの、母の日の贈り物ですよ。今年は帰っては来ないようですが、毎年、母の日やクリスマスや私の
誕生日などには、世界中のお土産を贈ってくれるんです」
と答えた。
それを聞いて、下宿人一同
(ブレねえな、タロウ教官)
と大いに納得したが、
「……父の日や私の誕生日には、メッセージカードや絵葉書の一つも贈ってくれば良い方で、帰ってきたことは
ほぼ無いがな」
と拗ねて見せたのは、家主のケン氏で、それもまた実にさもありなん。といった感じだったという。
筋金入り@光太郎
☆
「ねぇ、父さん。最近、母の日向けに花束みたいなお寿司のCMあるじゃない。アレの応用で、カーネーションパンって
出来ないかな」
「悪くないな。そうしたら、いくつか試作してみるか、七海」
「うん! お寿司は、お刺身を巻いてたけど、パンに生ものはあまり向かないから、焼いても色鮮やかなのは、
サーモンくらいかな?」
「そうだなぁ。いっそ、パン生地の方に色を付けて、巻いて焼くか」
「それも良いけど、薄切りのリンゴのコンポートとかどうかな?」
「それもアリだな。それじゃ、まずは全部作ってみるか」
パン屋ですから@北斗家
☆
「父さん、コレどうかな?」
「どれだ? 触り心地は悪くないが、アキに合う色が無いな」
「うーん。それじゃこっちは?」
「柄がちょっとな」
「ああ、確かに。……あっ! コレは? 色も母さんに似合いそうだし、触り心地もさっきのより良い」
「そうだな。では、このストールにするか」
「母さん気に入ってくれるかなぁ。あー、それにしても、ホント触り心地良いなぁ、このガーゼ地のストール」
父娘デートでプレゼント選び@郷家
☆
「アンヌ、これらは?」
「ああ。このパンは北斗さんと七海ちゃんの試作品で、ハンカチはメグちゃん。カップはレナちゃんとダイゴくんで、
ブローチはアスカくんと言うよりは、リョウさんでしょうね。それから、サボテンは我夢くん。どれも、母の日の
プレゼントだそうよ。うちには実の子供は居ないけど、『第二のお母さんだから』ですって」
「そうか」
「あと、このカーネーションの鉢植えは、アスカくん達の知り合いの子からだそうよ」
「アスカの知り合いが、何でアンヌに」
「さあ? 解らないけど、『受け取ってやって欲しい』って、ダイゴくん達にも言われたのよね。タイガくんという
子らしいわ」
血は繋がっていなくても@モロボシ夫妻
☆
「コーヒー淹れたら飲むかい?」
「ありがとう、いただくわ。でも珍しいわね。あなたが私の分まで淹れてくれるなんて」
「まぁ、たまにはねぇ。この間ヒカリに、『おじいちゃんは、母の日におばあちゃんになんにもあげないって、ママが
言ってた』と言われてしまったし」
「あら。それじゃ、母の日のプレゼントがコーヒー一杯なの? 安いわねぇ」
「他にも何か贈った方が良かったかな?」
「いいえ。今更いらないわよ」
「だったら良いじゃないか」
「それもそうね」
変わらぬスタンス@ハヤタ家
姉さんに話したネタを交えつつ、思い付くまま書いてみました
2014.5.7
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