※腐気味注意※



とある非番の日。同じく非番だというダイナに稽古をつけてもらおうと、ゼロが仲間達と共に寮の
彼の部屋を訪れたると、ダイナ自身はいつも通りに朝から元気いっぱいにストレッチをしていたが、
ゼロ達が目を奪われたのは、部屋の奥に備え付けられているベッドだった。

ゼロが知っている、訓練校や警備隊の若手の寮は4人部屋が一般的で、二段ベッドが部屋の両脇に
2台設えられていたので、ダイナ達が与えられている2人部屋には二段ベッドが1つか別々の寝台
だろうと思っていたが、ダイナの部屋で目に入ったのは、1人用にしては妙に大きなベッドが1つと、
そのベッドで未だ眠っている人物だった。
しかも、その人物は、うつ伏せな上に顔の上で腕をクロスするような姿勢で眠っている所為で顔は
見えないが、掛布から覗く細い肢体も、華奢な肩から伸びる白い腕も、お年頃な青少年には目の毒な
艶かしさを醸していた。

けれど、言葉を失っているゼロの代わりに「あれは誰だ」「女を寮に連れ込んでいるのか」とダイナを
問い詰めようとしたグレンファイヤーやジャンボット達の声に目を覚ましたのか、もぞもぞと身動ぎして
体を起こし「……煩い」と寝惚け眼で呟いたのは――


「え。ティガ!?」
「そりゃ、ここは俺とティガの部屋だし」
「確かに、それはそうですが……」

普段の隊服をキッチリ着込んでいる姿でも、マンとどっちが細いか……。状態とはいえ、寝間着代わりの
タンクトップと短パン姿だと、まさかここまで華奢な体格だったとは。と呆気にとられるしかないが
―双児の妹か何か居ない限り─、9割方間違いなくダイナ達平成組をまとめている分隊長のティガだった。

更に、ゼロ達を呆気にとらせたのは

「よっ、おはようさん。起きたなら、朝飯はどうする? 自分で食堂行くか、持ってくるか」
「……。面倒くさい」
「そっか。けど、放っといたらまた朝どころか昼もなーんも食べないだろ。もらってくるから、何が良い?」
「味濃いの嫌。お粥系も気分じゃない」
「らじゃ」

という、「どういう関係だお前ら」と突っ込むのを辛うじて飲み込んだような、ダイナが甲斐甲斐しすぎて
むず痒い気分になってくるやり取りだった。 
おまけに、
「俺食堂行ってくるから、ちょっと待っててな」
とゼロ達に言い残し部屋を出たダイナが、予想以上にさっさと戻って来る前に
「どういう関係なんだよお前ら」
「てか、何だこのベッド」
等のゼロ達の問いを丸無視し、再びベッドに沈み込みかけているティガは、やはり気だるく艶かしい
おねぇさんにしか見えなかった。

その後。ベーグルサンドにヨーグルトと野菜ジュースとカフェオレ。という、量は少なめで食べやすいけれど
栄養バランスはそこそこな朝食を、上半身は起こしたがベッドから出ないまま食べ終わるまで見届け、二度寝の
体勢に入るティガに、
「昼は、戻ってくるかガイア達に言っとくから」
と言い残し、空いたトレー片手にゼロ達を押し出すように部屋を出たダイナに、とりあえずベッドのことに
関して訊いてみると

「えっとな。ティガって、不眠症気味だし眠りも浅くて、忙しいと仮眠室どころか執務室の床なんかで
 仮眠取るんで済まそうとするから、せめて部屋で寝る時くらいは広くて良い布団でゆっくり寝かそう。
 って、ガイアが持ち込んだ。……俺の寝床? お前ら来たときにはもう畳んであったけど、壁に収納
 出来るタイプの折り畳み式のやつ」

とのことで、自室で打ち合わせなどをすることがたまにある幹部クラスの2人部屋は、据え付けの
ベッドより収納式の方が多いらしかった。


「……んじゃ、お前のティガに対する態度は?」
「あー、アレな。ティガ、不眠症気味な上に拒食傾向もあるっていうか、放っとくと食事摂んないのに、
 低血圧で低血糖でついでに低体温なもんで、無理にでも食べさせないと倒れてたりするから」

とのことだったが、それにしたって……。と、グレンファイヤーは言いかけたが、さりげなくミラーナイトと
ジャンボットによって口を封じられた。

「けど、んな体質じゃ、任務ん時どうすんだよ」
「寝起きに顔しかめながらブドウ糖のタブレットかじって血糖値上げたり、酷いときはガイアに
 頼んだアンプル打ってる」

正直なところ、意地っ張りの見栄っ張り過ぎて、そんな弱点は極限られた仲間内以外には隠しているため、
年々落差が酷くなり、安らかに眠っていても呼吸音や胸の上下が微か過ぎて、不安に駆られたダイナや
ガイアに叩き起こされ安否を確認され、挙句再び寝直すのが難しい。なんて悪循環にも陥っているらしく、
この日も夜中に喉が渇いて目を覚ましたダイナが揺り起こした所為で睡眠時間が足りていなかったので、
罪滅ぼしにあんな感じだったのだという。

「あ、ちなみに、アイツ物凄いプライド高くて、そういうこと見せんのホント嫌がるんで、俺がバラしたって言うなよ」

と釘を刺された。



結局。それ以降、若干寝惚け気味なティガと遭遇することはあれど、あそこまで無防備で素を曝しきった
姿を目にすることは無かったため、「アレは白昼夢か何かだったのか?」とガイアに相談してみたところ、
ニヤニヤ笑いで「さぁ、どうだろうね」と返されたのだった。 






酔った勢いで書いたけど、構想自体は常日頃(仕事中含む)考えていた。 という残念な代物。 しかし後悔はしていない。 2012.8.25