『どーも、姐さん。21です。今ネオス達と飲んでるんですけど、隣の個室で合コンやってるっぽいグループに、
ダイナ居るの見ましたがどうします?』
とある平日の夕方過ぎ。自室で1人で過ごしていたガイアの携帯に、彼を半ば冗談で「姐さん」と呼んでいる
弟分のセブン21から、そんな電話が掛かってきた。
「じゃあ、適当に誤魔化してティガ連れてくから、何かあったらその都度メールで報告して」
『了解です』
「場所は?」
『駅前の――』
21からの電話を切り隣室に顔を出すと、ティガはレポートか何かに取り組んでいる最中のようだった。
「ティガ居るー?」
「何か用? ガイア」
「今日アグル遅いって連絡あって、夕飯僕1人だから、一緒に食べに行かない? ダイナも今日は
出掛けてるんでしょ?」
とりあえずここまでは本当の話で、「夕飯どうしようかな」と考えていた矢先に電話が掛かってきたので、
ちょうどいいと思った。というのも、21の話に乗った理由だったりする。
「まぁ、別にそれ位なら」
「ちょうど、駅前の居酒屋の割引券あるから、そこで良いよね?」
「今やっているコレ、明日提出なんだけど」
「だったらお酒飲まなきゃいいだけじゃない。あのお店、料理も結構美味しいよ」
「……。何かまた企んでるけど、行かないと話す気は無いんだね?」
「そういうことv」
怪訝そうな顔をし、溜め息をつきながらも早々に諦めたティガは、居酒屋で案内を
「先に来ている連れがいますので」
と、携帯で誰かに電話を掛けながら断ったガイアに、より一層嫌な予感がした。
そして数十秒後に「お待ちしてましたよ」と、出迎えに来た21と顔を合わせるなり、踵を返して帰りたくなった。
何しろティガが認識しているガイアと21の関係は、「周囲をいじってからかう為に結託している迷惑な連中」
なのだから無理もない。
「……。で、君達の目的は何な訳?」
逃げようにもガイアに腕を掴まれていた上、21にも
「妙なことして騒ぐと、目立ちますよ」
と言われてしまったので、渋々大人しく彼ら―21の他に、ネオスとマックスが居た―と同席し、ひとまず飲み物
だけ頼んでからティガが問い掛けると、簡潔な説明があったが
「ガイア達じゃないんだから、ダイナが合コンしてようが、彼女が出来ようが、僕には関係ないんだけど」
「でも、合コンとかで知り合ったダイナの彼女気取りの子と揉めたこと、結構あったよね」
天然で鈍感でネアカなダイナは、本人の側は完全に友達としか思っていないのに、女子の側が勘違いで
彼女ぶって来ることが珍しくなく、ティガと鉢合わせたり、しょっちゅう邪推されからかわれる原因でも
あるダイナの―他意は無いが誤解を招く―言動から、「どういうことよ!」と、ティガが詰め寄られて
言い争いなどになったことは、1度や2度では済まなかったりする。
「そうだけど……」
「だったら、あらかじめ軽く牽制しても良くない?」
人数合わせかつ、場の盛り上げ要員として駆り出されるダイナは、他の参加者の狙っている相手に気に入られ
そうになった場合、すかさず周りがティガの話を振り、それに率直に答えるだけで彼女持ちと認識される。
それがいつものことなんだから、ティガが自分で邪魔しても問題は無い。と言い切るガイアに、ティガは
色々と面倒くさくなってきたので、仕方なく思惑に乗ることにした。
「メイク道具一式ならありますよ」
「いい。ダイナに不審がられたら、意味ないから。……ああ、でも、何かなるべくシンプルな、髪を留める
ものがあったら貸して」
何故か変装セットを持ち歩いている、怪しい演劇青年21からの、解り易い女装の提案は断ったが、ティガは少し
考えてから、一応その中の髪飾りだけ一通り見せてもらい……
「ダイナ? ここで飲んでたんだ」
ダイナが手洗いに行くのを見計らって自分も席を立ち、席に戻る手前で、さりげなく声を掛けた。
「おー、ティガ。って、ティガは何で居るんだ? レポート終わったのか?」
「ガイアに、『気分転換も必要だよ』って連れて来られたんだ。だからご飯だけで、飲んではいない」
「そっか。ところで、その髪はどうしたんだ?」
「え? 何のこと……って、あっ! レポートの最中、邪魔だから留めていたのを外し忘れてた」
ダイナに指摘されたのは、先程21から借りた小型のバレッタで留めていた前髪で、普段もレポートの締め切り前
などに、そういったもので髪を留めていることが無くは無いので、さほど不自然では無いと思われたようだった。
「ティガ、案外そういうとこ抜けてるよなぁ」
「余計なお世話だよ。……じゃあ、そろそろ自分の席に戻るけど、ダイナも羽目は外しすぎないようにね。
遅くなりそうなら、いつも通り連絡してから、誰かの所に泊めてもらって。明日早いから、今日は9時
まででないと迎えに来ない。っていうのは、出がけにも言ったよね?」
不審に思われなかったことに、内心安堵の息をもらしながら、普段通りにの調子で言い聞かせると、ある意味
思いがけない返事が返ってきた。
「解ってるって。ていうか、いっそティガ達が帰る時に、一緒に帰った方が、楽だよな」
「そうだね」
「んじゃ、帰る時声掛けて。そしたら俺も帰ることにするから」
自分―というかガイア―達にとって、好都合過ぎる展開に、ティガは顔や態度には出さないようにしつつ呆気に
とられたが、ダイナは気付かずに自席に着いた。
「……お見事、お嬢」
「ほぼ本当のことしか言っていないのに、アレだと完全に同棲している彼女だと思われたよね」
「てか、ダイナが何の違和感も感じて無かったっぽいってことは、あんなのが日常会話なんだな」
「そうだよ。アノ2人の会話って、割といつもああいう感じ」
ティガとダイナは席の手前で話していた為、双方の個室のメンツは完璧にこのやり取りを見聞きしていた。
そんな訳で、21は脱帽のジェスチャーをしながら感心し、苦笑するネオスと妙に納得しているマックスの
言葉を、ガイアが肯定した。――全員声をひそめ、ティガ達には聞こえないように(笑)
「ダイナくーん、今の人誰ぇ?」
「一緒に暮らしてるティガ」
「美人だったな」
「おう。俺が知ってる中では、一番の美人」
個室だが隣の席なので、聞き耳さえ立てれば、普通の音量での会話はほぼ聞こえる。しかも、酔っていて若干
声が大きくなっていたので、なおさら聞こえ易い。
そんな状況で聞こえた隣席のやり取りに、ティガとネオス以外は腹を抱えて笑い出したが、ティガは苦虫を
噛み潰したような顔で、この場から立ち去りたそうにしており、ネオスも若干気まずそうだった。
そして、もちろんその後しばらく、ガイアと21にとって、この日の出来事はティガをいじる格好のネタに
なりましたとさ。
やりたい放題、好きなこと書いてみましたが何か?
私は、綺麗なお兄さんと、格好良いお姉さんと、性別不詳と幼児(特に赤子)が大好きです。
なので今後も、この路線で突き進みます。
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21=鉢屋三郎ですから
そんな、言い訳にならない言い訳だけはしときますけど
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