平成組の住むアパートの1階で獣医をしているコスモスと、警察官のジャスティスは夫婦―らしい―ですが、
2人共性別不詳なので、どちらが妻でどちらが夫かは不明で、どちらかと言うと、小柄でほわほわしたコスモス
よりも、長身スレンダーで厳しい印象のジャスティスの方が男性で夫の可能性が高いと思われがちなようですが、
コスモスの一人称が「僕」なこともあり、真相は謎のままです。
それでもまぁ、何からぶらぶなのは誰の目から見ても明らかな感じで、ジャスティスはコスモスに対してのみ
過保護ですし、博愛主義のコスモスもジャスティスは別格で一番のようです。
そしてこのご夫婦は、一見するとしっかり者で過保護なジャスティスがほとんどの家事のを担当しているように
思われていますが、実はジャスティスは料理が全くと言っていい位出来ないので、食事だけはコスモスの担当
だったりします。
そんなある日。ジャスティスが勤務を終え帰宅すると、コスモスは急患―事故に遭った犬―の手術の最中で、
「まだー、だいぶ時間が掛かりそうだから、悪いけどぉご飯は、何か買って来て食べてねぇ」
とのことでした。そこでジャスティスは、その言葉通り2人分の食事を買ってこようかと思いましたが、その
直後に、ふと「たまには自分が作ってみても…」という考えが頭をよぎりました。
そんな訳で、家にあった料理の本を見ながら、コスモスの好きな献立に挑戦しようとしたものの、材料も調理法も
よく解らない単語ばかりで、しかも大抵は4人分のレシピとして書かれているので、2人分にするにはどう応用
したらいいのかが解りませんでした。
それでも、家にある食材を確認し、スーパーでお惣菜の素的なものを見ながらもう少し考え、無理そうなら
出来あいのものを買ってくることにしました。
☆
「こんばんは、ジャスティスさん。難しい顔をされてますが、どうかなさったんですか?」
スーパーの惣菜材料売り場で遭遇したのは、同じアパートに住む大学生のティガでした。
「ああ、ティガか。……その、今日は、コスモスが忙しいので私が食事を作ろうかと思ったのだが、普段あまり
料理をしないもので、何をどう作れば良いものか解らなくて悩んでいたんだ」
お惣菜の素も基本が3〜4人前ばかりで、しかも簡単そうではあるものの「適度に」「○○位」の表記が、
加減が解らない身としては逆に不安だったようで、ティガに会えたのは行幸でした。
何しろ彼は自炊歴最低3年以上で、同居人のダイナとの2人分の食事作りにも慣れています。
「そうですか。でしたら、軽く味付けをした肉を焼いて、切った生野菜に市販のドレッシングを掛けたサラダに、
カップスープか何かを添えるなどというのは割合簡単ですし、カレーやシチューなどは、多めに作って冷凍
しておいても良いと思います。あとは、お刺身とお味噌汁にシンプルな煮物というのも、そんなに難しくは
無いのではないでしょうか」
ティガが挙げた例は、実は少しずつ難易度が上がっていますが、ジャスティスが採用したのは、3番目の
和食メニューでした。
そして結局。
・刺身の盛り合わせ
・しょっぱい味噌汁(味噌が多過ぎた)
・若干焦げた芋の煮っ転がし(煮詰めすぎ)
・硬い白米(水加減を失敗)
という、ジャスティス的にはとても失敗した献立になってしまいましたが、コスモスは
「大丈夫だよ〜。ちょっぴり失敗しちゃってるけど、ちゃぁんと美味しく出来てるよぉ。ありがとう。ジャスティスv」
と、とても嬉しそうに食べてくれたので、ジャスティスは今後ももう少し練習してたまには作ろう。と、
こっそり決意したようでした。
『旅籠 猫屋』の2周年記念の貢物
反省点は、コスモスが殆ど出て無いことかなぁ。
ちなみにティガが挙げたのは、基本的に私に作れる手抜きメニューです
2010.6.20
戻