1.

	図体はでかくなりそれなりの立場になれど、まだまだガキだったり甘えたな弟達(時々長兄や三兄も)が、
	大好きな次兄に
	「チョコちょーだいv」
	とねだるのは最早毎年恒例で、ねだられた次男自身もそれを嬉しく思っているようで、毎年手作りの
	チョコをくれる。
	しかし、似顔絵クッキーに挑戦してみた年やイニシャル型だった年、洋酒をふんだんに使ったものを
	作ってみた年などを除けば─敬愛する母へのもの以外は─、兄弟へも他の知人友人へも、中身にも
	ラッピングにも何の差もつけていなかった筈が、今年のチョコは、何故か三男セブンに手渡された
	ものだけ、包装が違っていた。
	しかも、
	「何でブン兄だけ違うんだよ」
	「あー、中身も全然違う!」
	と、勝手に包みを開けてつまみ食いしようとしたエースとタロウに、ニコリと微笑み

	「それはセブン用だから、食べちゃダメ」
	「え。ホント何があったの、マン兄さん!?」

	あまりに普段と違いすぎて、萌えるよりも逆に引くんですけど……。なタロウにエースも同感で、
	そういやブン兄含む他の兄弟達の反応は?  と兄達に目を向けると、長兄ゾフィーと四男ジャックは、
	よく似た顔を突き合わせ

	「何やらかしたんだろうね、セブン」
	「さて。まぁ、私達に被害が及ばなければ、どうだって良いですが」

	等々、ため息混じりに話しており、セブン当人は冷や汗混じりに─パッと見はただのトリュフにしか
	見えない─チョコを見つめていた。

	そんな、妙な空気が漂う中に、ひょこりと顔を出してしまったのはセブンの息子ゼロだったが、
	ビミョーな空気には気付かずに、セブンの手にしているチョコについて「何だそれ」と訊ねた。
	すると、セブンはゼロを手招きし、「口を開けろ」と言うと、素直に従った息子の口の中に、
	問題のチョコを1つ放り込んだ。


	「……苦っ! マジで何だよコレ!?」

	ウルトラ兄弟がハラハラと見守る中、チョコを咀嚼したゼロの素直な感想はそんな感じで、
	それに対しマンは「チョコだよ」と簡潔に答えた。

	「ただのチョコな訳あるかよ! クソ苦ぇし、何か……豆? みたいなもん混じってんのが、合わなくてマズイ」
	「ああ。それは節分の豆の余り。炒り直してもいないから、触感も悪かっただろ?」

	淡々と答えるマンに、タロウとエースは「いつもの兄さんじゃないっ」と泣きそうな勢いで、ゾフィーと
	ジャックは、「ホント何やってここまで怒らせたんだか」と、冷たーい目でセブンを見ていた。


	「……これでも、99%じゃなくて80%台や70%台のを混ぜて使ったし、他にも生クリームとか色々
	 入っているから、マシな方だと思うんだけどね」

	そうポツリと呟いた後に、

	「他のは、ちゃんと味見もして美味しく出来ているから、安心していいよ」

	と微笑んだマンの笑顔は、いつも通り過ぎて逆に薄ら寒ぃ。と、ゼロすら思ったが、怒らせた原因に
	ついては、セブンは頑として口を割らなかった。


	そんな一部始終をタロウから聞いたユリアン達は、萌えるべきか怖がるべきか大いに悩んだが、

	「昔、あんまりにも怒らせ過ぎて、キレるのを通り越してにこやかになったヒカリが物凄く怖かったのを
	 思い出した。ってゾフィー兄さんが言ってた」

	との補足の方に食い付いておくことにしたのだった。



	オマケ
	「……にこやかなヒカリさん、ですか。それは確かに凄く怖いですね」
	「怖ぇどころじゃねぇだろ。何しでかすとそこまでキレんだよ」
	「母さんもマン兄さんも、笑顔でキレることはたまにはあるけど、ヒカリさんが笑顔なだけで恐怖映像ですよね」
	「だよな。マン兄も、あそこまで笑顔張り付かせてんのは滅多にないけど、ヒカリの満面の笑みって……」
	「……うん。まぁ、色々と、若気の至りってやつでね……」



2. 科技局の職員にとって、所長の所にお揃いのマグカップを持ってとてとてやってくるツインテっ子は、 特に珍しい光景では無い。 そして、その中身が明らかな悪ふざけの産物でなさそうなら、持って来た当人が淹れたインスタント コーヒーだろうが、某コーヒー狂の長兄の「今日のオススメ」だろうが、所長は気にせずに飲む。 加えて今日は2/14である。 てことは、あのカップの中身は、ベタにココアとかホットチョコだったりするのかなぁ。いや、でも あの子は、そういう回りくどいことするタイプじゃないか。 そんな職員達とメビウスの視線を密かに集めながら、ヒカリが口にしたカップの中身は、カフェオレにしては 色が濃いというか茶色がかっていたので、ココアとの読みは当たっていなくもないっぽかったが…… 「美味しい? ヒカリ」 「不味くはないが、これは何だ。コーヒー、だよな?」 「えっと、ホットミルクにインスタントコーヒーとチョコレートパウダーを溶いた、カフェモカだよ」 「誰から教わった」 インスタントコーヒーを使っているということは、ゾフィーが教えたんではないだろうが、メビウスの 独学とは考えにくいと思ったヒカリが尋ねると、「ダイナさんにだよ」という、予想外の答えが返ってきた。 「ダイナさんが、お店のポップで見て、チョコレートパウダーを缶で買ったから。って分けてくれて  教えてくれたんだ」 「……そうか」 バレンタインデーの特設コーナーでは無いにしても、この時期にチョコレート関連の物を買うのは、だいぶ 勇気や度胸が要るだろうが、多分アイツのことだから気付いてないんだろうな。 2口目を飲みつつヒカリはそう思ったが、割とばっちりバレンタイン商品で、ティガ(とガイアとアグル)に 供した余りをメビウスが分けてもらったので、ガイア経由で思い切りユリアン達にも伝わってネタにされて いた。しかし、書類を届けに来たマンや、遊びに来たゼロ達にもフツーに供していたので、本人的には 「折角だし、たまにゃ面白いかと思った」 程度のことだったとか。 ↑の派生 「ゼノさん、コーヒー飲む?」 「そうですね。あなたの名前と同じ、練乳入りのでなければ」 「んじゃ、はい」 「……マックス。私には、これはコーヒーには見えませんが?」 「あー。確かに色はそうかも。けど、ココアとかじゃなくて、一応ちゃんとコーヒーっていうか、  カフェモカだから」 「……何故、わざわざこんなものを?」 「ダイナんとこで飲んで、割と美味かったし、チョコパウダー余ってるって言ってたからさぁ」 「そうですか。……ところで、今日が何日か解っていますか、あなたは」 「んーと、2/14」 (日付は把握していてコレということは、結び付いていないわけですか。つまりそれは、誰からも思い出す きっかけを貰っていないということでしょうから、まぁ見逃しますか) 思い付くまま書いて日記もどきに挙げてたVDネタです。 どうもうちのマン兄さんは、VDネタでは病む傾向にあるようで(苦笑) 2013.2.11